SMAP映像「放送OK」で始まったジャニー喜多川氏の“神格化”
数々の男性アイドルを見出し、ジャニーズ事務所を1000億円企業に押し上げたジャニー喜多川氏が、7月9日にくも膜下出血のため、静かにこの世を去った。12日には、渋谷区内にある事務所所有のビルでマスコミをシャットアウトした「家族葬」が行われ、約150人の所属タレントたちに、笑顔で見送られた。
「祭壇や照明、音響などはタレントたちやスタッフが出来る限り自らの手で準備。司会はTOKIOの国分太一とV6井ノ原快彦が行うなど、まさに“手作りの会”でした。駆け付けられなかったのは、仕事だった元SMAPの中居正広や嵐・櫻井翔、関ジャニ∞の村上信五と、コンサートだったKis‐My‐Ft2くらい。ミラーボールやスクリーンも用意され、“稀代の演出家”だったジャニーさんらしく、葬儀とは思えない明るく笑いに満ちた会だったようですよ」(スポーツ紙記者)
ジャニー氏の訃報が発表されてすぐ、テレビ業界では異例の事態が起こっていた。16年に解散したSMAPの映像が、バンバンと流されたのだ。
「解散・独立以降、5人そろったSMAPの映像は、局が持っているものでもなかなか流すことはできなかった。というのも、肖像権を管理するジャニーズ側が、許可を出すことがほとんど無かったからです。ですが、ジャニー氏が亡くなってすぐ、事務所の広報担当者に、タレント映像の使用許可を取るため連絡すると、“今回はフリーだから、大丈夫”と。SMAPの映像使用許可についても恐る恐る聞いてみたら“OK!”という返事だったんで、本当にびっくりしました」(ワイドショー関係者)
いち早く訃報を伝えた『NEWS ZERO』(日本テレビ系)も、「世界に一つだけの花」を歌うSMAPの映像を流している。また、翌日のワイドショーなどでも、少年隊や嵐などに交じり、これでもかというくらいSMAPの映像が、多くの時間を割いて流されていた。
「ジャニーズタレントの“お悔やみコメント”が、事務所から次から次へとFAXで送られてきました。事務所としては、ジャニー氏とタレントたちの絆や功績について、大々的に報じて欲しかったのでしょう。その中で、SMAPという存在は、どうしても外すわけにはいかなかったのでしょうね」(テレビ局関係者)
芸能ニュースに携わるものとして、ジャニー氏の存在の大きさは十分に理解している。だが、メディアにほとんど出演したことのない芸能事務所社長の訃報に、これだけマスコミが放送時間や紙面を割いたことは、やはり事務所の作戦勝ちだったのではないだろうか。
今後のジャニーズ事務所の在り方について、芸能レポーターの石川敏男氏はこう話す。
「カリスマだったジャニーさんが亡くなり、遺された人たちは文字通り“輪になって”事務所を支えていかなくてはならないでしょう。ジャニーさんが最後にデビューさせたKing&Princeが大人気ですが、私はそれに続くアイドルをデビューさせることができるかどうかに掛かっていると思う。もし、タレントもスタッフも一丸となって、新しいスターをデビューさせられることができれば、ジャニーズ事務所はこれからも安泰だと思いますよ」
あまりにも大きな“精神的支柱”を失ったジャニーズ事務所。一丸となるためにも、やはりジャニー氏の“威光”に頼るところは大きいだろう。
8月にはファンも参加することが出来る盛大な「お別れ会」が開催されるという噂も出ている。また、NHK『紅白歌合戦』など、年末に行われる歌番組などで、偉業を振り返る特集も次々と組まれるだろう。
さらに、“家族葬”が行われた、滝沢秀明が社長を務める「ジャニーズアイランド」のビルも、ファンの間で聖地化される。ジャニー氏の「神格化」は、これからますます進んでいくはずだ――。
文:荒木田 範文(FRIDAYデジタル芸能デスク)
埼玉県さいたま市出身。夕刊紙、女性週刊誌の記者、編集者を経て現職。テレビやラジオなどにも出演中
PHOTO:結束武郎