殺人豪雨 今年は都市部が要注意 自宅と我が身を守る10ヵ条

豪雨の発生回数は70~80年代の1.6倍。水害から身を守るために側溝の掃除や運動靴使用などは必須条件

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「九州豪雨」による土砂崩れで、鹿児島県志布志(しぶし)市の「そお街道」は通行止めになった

「1976年から2018年までの統計をもとに、気象庁が発表したところによると、1時間に80㎜以上の猛烈な雨の年間発生回数が、最近の10年間は初期の10年間に比べて約1.6倍に増加しています。つまり、『日本列島は長期的に極端な大雨が増大する傾向にある』ということなんです」(気象予報士・原田雅成氏)

死者・行方不明者282人を出した「西日本豪雨」から1年。今年も日本は大雨に襲われている。

6月下旬から九州南部は大雨となり、7月3日には、鹿児島県の約66万世帯138万人に避難指示や避難勧告が出た。

「これは同じエリアに梅雨前線が停滞し続けたことが原因です。通常、梅雨前線は南北に移動し続けながら雨を降らせるので、停滞する状態は例年ではあまりない特殊な例です」(前出・原田氏) 

「九州豪雨」はまだ始まりにすぎない。気象庁によれば、7月は前線や湿った空気の影響を受けやすく、西日本、東日本はともに曇りや雨の日が多くなる。また7月から9月までの降水量は平年より多くなる可能性があるという。

都市部で豪雨が増加

しかも、その雨は「集中豪雨」になる場合が多そうだ。日本気象学会理事長を務める、東北大学大学院理学研究科・岩崎俊樹名誉教授が指摘する。

「近年、降水の集中性が高まっていることは、観測によってある程度確かめられています。一つには地球温暖化が進行していることが要因です。また、都市部では、雨の激しい降り方にヒートアイランドが影響しているという報告もあります。温暖化とヒートアイランドの双方の影響で、夏は都市部での降水が激しさを増すことも考えられるでしょう。この7月に関して言えば、梅雨前線が活発に活動しているため大雨に警戒が必要です」

通常は台風の通り道と呼ばれる沖縄、四国、九州が水害に遭うことが多いが、今年は東京、大阪、名古屋などでも被害が出る危険性がある。今年と平年の降水量を比較した下の図を見てほしい。都市部の降水量の多さがよく分かる。

圧倒的な降水量をもたらすのは、積乱雲が列をなす「線状降水帯」である。

「関東地方でも、’15年9月に鬼怒川の堤防が決壊した『関東・東北豪雨』の際に線状降水帯ができていました。これは西日本と発生メカニズムが異なります。まず秋雨前線に台風が近づき、雨量が増える。その後、別の台風が接近し、2つの台風の風がぶつかることで線状降水帯が発生したんです」(原田氏)

そして、今年は台風の当たり年になる。世界最大の民間気象情報会社・ウェザーニューズによれば、日本周辺での今年の台風発生予測数は27個前後。30年間の平均値25.6個を上回る。さらに9月の台風は偏西風などの影響で本州付近に上陸しやすく、エルニーニョ現象によって、なかなか消滅せずに同じエリアに居座る「長寿台風」にもなりやすいという。

まず側溝の点検を

今年は様々な要因によって、台風や線状降水帯が日本列島、なかでも都市部を襲うのだ。

「線状降水帯が首都圏や大阪、名古屋で発生することはありえます。東京でも今後、1時間に100㎜という大雨が『ゲリラ豪雨』よりも広範囲かつ長時間降り続く可能性を否定できません」(前出・原田氏)

この『新型豪雨』が都市部を襲えば、水害で大パニックは必至だ。日頃の備えは何をすべきなのか。災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏が語る。

「自宅周辺の側溝を掃除しておくことは重要です。落ち葉やゴミがたまらないようにしておく。大雨でそれらが詰まってしまうと、一気に水量が増えて、自宅内に水が押し寄せることがあるからです。自宅の排水設備を再点検してください」 

また、自治体が設置する「土のうステーション」の場所も確認しておいたほうがいい。これは住民が必要に応じて、自由に持ち出せる土のうの置き場所だ。

「都心部の住宅街でも、川の近くや低地には設置されています。豪雨が降り出す前に、玄関や半地下の駐車場の前などに土のうを積み上げれば、浸水で家財や家屋が傷むのを防ぐことができます。

また、土のうがなくても、大きなビニール袋に水を詰めて『水のう』を作ることもできます。豪雨のときは下水道の水位が急上昇して逆流し、風呂やトイレ、洗濯機の排水溝から汚水が出てくることもありうる。そうした逆流を防ぐために、自宅内の排水溝を水のうで塞いでおくといいでしょう」(和田氏)

駐車場が低地や地下にある場合は、豪雨の前に高台の駐車場に移しておく。また車内に閉じ込められた場合を想定して、車中にハンマーを常備しておくといい。

災害リスクマネージメントの専門家である立命館大学教授の高橋学氏が言う。

「自宅近くに避難できる3階建て以上の建物がないか、いまのうちに確認しておいてください。豪雨が降り出したら、それからでは遠くの避難所にはもう移動できないからです。膝まで水が来ている場合は絶対に歩けません。国の一級河川は堤防の高さは約6mで、2階の屋根の高さ。堤防が決壊しても3階以上の建物に逃げれば、ひとまず安心です」

長靴で避難はNG

どうしても長い距離を歩いて避難する必要がある場合はどうしたらいいのか。前出の和田氏はこうアドバイスする。

「長靴は水が入ってしまうと脱げやすく、また歩きにくい。濡れても構わないので底が厚くて脱げにくい運動靴を普段から用意しておき、それを履いて避難してください。また避難時は、傘を持っていくと便利。路面の安全を確認する杖として利用できるからです。洪水時には、自転車が水底に流れていたり、マンホールのフタが外れて穴があいていることがあります。あとはヘルメットは庇(ひさし)がついているタイプのものがあれば、雨粒から視界を確保するのにとても役立ちます」

防水の防災バッグなど普段からの備えがイザというときに役に立つ。

「大雨の時は、防災無線もかき消されて聞こえません。テレビやラジオも広域の情報しか流れませんので意味はありません。大雨が自宅にどんな危険をもたらすかは自分にしかわからない。自治体が発表するハザードマップのチェックなど普段の情報収集とご近所との情報共有がもっとも大切になります」(和田氏)

今年の雨を甘くみてはいけない。

日本中のどこであろう豪雨は襲ってくる

7月3日午前、JR南鹿児島駅近くで土砂崩れ。指宿枕崎線は朝から運転を見合わせていた
’15年9月10日、鬼怒川の堤防が決壊し、茨城県常総市ではヘリコプターによる救助活動が行われた

水害から自宅と我が身を守る10ヵ条

・自宅周辺の側溝を掃除する

・「土のうステーション」の確認

・ビニール袋で作る「水のう」を活用

・豪雨の前に自家用車を高台に移動

・自宅周辺の3階建てを探しておく

・避難用に長靴ではなく運動靴を準備

・避難の際は傘を杖として使う

・ヘルメットは庇があるものを用意

・防災バッグは防水のものにする

・洪水ハザードマップをチェックする

 

『FRIDAY』2019年7月26日号より

  • 写真時事通信(3枚目)

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