変態すれすれ!漫画『あせとせっけん』が描く純粋で危ない社内恋愛
化粧品・バス用品メーカーに勤めるOL・八重島麻子は、重度の多汗症に悩まされ、常にデオドラントケアが欠かせない。ある日、商品開発部のエース・名取香太郎に突然においを嗅がれ、「君の体臭は素晴らしい! 新商品のせっけん開発のため、これから毎日、君のにおいを嗅ぎに来ます」と言い放たれるーー。
冒頭から変態臭がぷんぷん漂うフェチワールド全開の漫画『あせとせっけん』は、漫画配信アプリ「Dモーニング」にて連載中の、ちょいエロシーンが刺激的ながら、生粋の純愛漫画だ。
4巻まで発売されている単行本はどれも重版がかかり、ツイッターでは、「ふたりがイチャイチャしているのをずっと見ていたい!」「また明日から仕事がんばろうって思える」「ただただ幸せな気持ちになる」と、読者たちの萌えコメントで盛り上がりを見せている。
そこで、話題の新感覚ラブコミックを手がける作家・山田金鉄氏に話を聞いた。
ーー「あせとせっけん」が生まれた経緯を教えてください。
ある漫画雑誌の読み切りとして「ちょっとエッチな女性向け漫画を描いてみませんか?」とオファーをいただいたのがきっかけでした。
真っ先に「“女の子の赤面顔”が描きたい」というのはありました。その雑誌の読者層がアラサー女性だったので、純愛もののオフィスラブにしたい。それでいて女の子がたやすく赤面してくれるものとは? と考えた結果、生まれたのが「多汗症の女の子」でした。となると、相手役の男の子はやっぱりにおいフェチ? と。 読み切りということもあり、手っ取り早く恋愛成就させなくてはいけなかったという事情が、結果的に功を奏した感じです。
ーー男性、女性どちらに向けた作品なのでしょう?
とくにそこは意識していません。“こういうのが好きな人向け”でしょうか。現在読んでくださっているのは7~8割が女性ですが、特に女性向けにPRしたわけではなく、ツイッターのRTなどで広まった印象です。漫画が好きでアンテナを張っていた人たちがこの作品を見つけてくれて、押し上げてくれた実感があります。「Dモーニング」自体は特に女性向けというわけではないので……ありがたいです。
ーー自己評価の低い麻子とうってかわり、名取は仕事のバリバリデキるイケメン。そのほかに、乙女系上司・大蔵部長や意地悪じゃないライバルの一瀬こりすなどが登場しますが、キャラを考えるときの自分的ルールはありますか?
キャラ作りの順番は、まずは自分が描きたいと思える、好きなタイプから。あと、ネガティブな要素は得意じゃないので、基本ポジティブに持っていきたいというのがありますね。
ライバルとして登場する一瀬こりすを、麻子に嫌がらせをするようなタイプにしなかったのも、ライバルを邪魔者扱いしたくなかったから。「たまたま今回はヒロインじゃなかっただけ」であって、彼女も一人の恋する女の子として描きたかったんです。麻子の上司・大蔵部長を乙女系男子にしたのは、「恋愛の相談に乗ってもらえて、男と女どっちの心も分かる人がいて欲しいな~」と思って。実は大蔵部長、読者さんからものすごい人気があって、「バレンタインチョコをもらうなら誰がいい?」というアンケートを実施したときも、ぶっちりぎり1位でした(笑)。
ーーエロいシーンもいっぱいある漫画なのに清潔感があって、エロと純愛のバランスがとにかく絶妙です!
ありがとうございます。気持ちの入っていないエロを描かないようにしているからかな。
つらくて悲しいエロは描いていても楽しくない。ふたりの思いがちゃんと通い合っていて、気持ちがたかぶってそうなっている、という過程を大切にしています。名取さんが麻子さんを嗅ぐシーンも、スキンシップの一環なので、描写をきれいめに描くように気をつけています。
ーー女の子が喜ぶ胸キュンポイントもきちんと押さえられていますよね。
とくに狙っているわけじゃないんですけどね。女性が主人公の漫画ですが、自分自身は少年誌を読んで育ってきたので、「こんな子が彼女だったら、こういうことをしてあげたいな」という気持ちで描いてます。クサいセリフを大マジメに言うとか、多少ハードルが高いことも、漫画なら可能ですから(笑)。
ーー終始微笑ましいふたりの純愛物語ですが、読者をドキドキさせ続けるためにしていることは?
ふたりの話ばかりだと、読み味が同じで飽きがくるし閉塞感も出てしまうので、ラブラブなシーンのあとは、背景を会社に移して日常を送っている感じを出したり、ふたり以外の人物の話に振って、世界を広げるようにしています。恋愛以外のシーンを描くことで、「へぇ、この人、結構いい上司なんだな」「運動音痴なんだ、意外!」とか、キャラの別の一面が見られるというか。そのほうが、キャラを愛してもらえると思うんです。
ーーネガティブな要素が苦手とおっしゃっていましたが、ほかに描くのに苦労したシーンはありますか?
4巻で同棲をする話が出てくるのですが、ふたりの関係が、もう一歩進むなら…と考えると、いつにも増して、お互いが真剣に向き合って会話するシーンが多くなってしまって。気持ちのすれ違いに悩んだり、ときには涙を流しながら話し合うシーンは、心を痛めながら描きました。周りにつつかれて流れで同棲を決めるではなく、ふたりできちんと考えて進んで欲しかったので、そこは避けては通れない重要な通過点。
「あ~早く赤面の麻子さんを描きたい!!!」なんて思いながら、それをご褒美にして乗り越えました(笑)。
ーーいちばんの見どころは?
自己評価の低い麻子さんが、名取さんとの恋愛でたくさんの“はじめて”を経験し、少しずつ心を開き、戸惑いながらも変わっていく姿でしょうか。
「こういう恋愛っていいよな~」「仕事帰りにこんなレストランでデートしたいな」「こんな石鹸使ってみたいな」そんな風に、身近に感じてもらえる日常感も楽しんでいただきたいです。
ーー確かに、ふたりで温泉宿に泊まるシーンでは、名取さんと一緒にお風呂に入るのも拒まなかったですよね。
そう、いつまでもオクテで地味な女の子じゃない。麻子さんの行動には、いつも「名取さんとなら」というのがあるんです。とはいえ、あれは自分の「混浴シーンを描きたい!」という欲望によるところも大きいのですが(笑)。
「いちばん描くのが楽しい!」と山田先生が語る赤面の麻子。そしてまっすぐな愛情で、彼女を赤面させ続ける名取。惹かれ合うふたりの様子からは、体温がそのまま伝わってくるようだ。つらく切ない恋愛ものもときには良いけれど、テンション高めに過ごしたい夏は、刺激的かつピュア度高めのラブコメをおすすめしたい。
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- 取材・文:大森奈奈