「はまれば強い」日本代表 沢木敬介が語るジャパンW杯勝利への道

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1975年秋田県生まれ。秋田経済法科大学附属高校(現・明桜高)、日本大学を経てサントリーに入社。日本代表キャップ7。日本代表コーチングコーディネーターを経て、16年〜19年までサントリーサンゴリアスの監督を務めた

ラグビーワールドカップ日本大会を9月に控える日本代表は7月27日から、フィジー代表、トンガ代表、アメリカ代表とのパシフィック・ネーションズカップ(PNC)に参戦する。

ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが率いる現日本代表は、エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチ時代からのモデルチェンジに着手してきた。顕著なのは、攻撃時、複数人による塊を次々に作ってボールを保持してきたスタイルを、選手が左右にまんべんなく散り、大胆にパスやキックを配する形に変えたことだろう。メンバーを入れ替えながらチームを熟成させ、今年2月から徐々に候補選手を絞り込んできた。6月から7月中旬までは宮崎合宿を実施。PNCへは31名の精鋭が挑む。

そんな中、元日本代表スタッフでサントリー前監督の沢木敬介氏が、今大会、そしてワールドカップへの展望を語った。

沢木氏は2015年までジョーンズ体制下でコーチングコーディネーターを務めた。歴史的勝利を挙げたW杯イングランド大会の南アフリカ代表戦では、みずから発案したサインプレーをトライに直結させる。帰国後の2016年からは3季続けて古巣のサントリーで監督を務め、就任時から2シーズン連続で国内トップリーグと日本選手権を制している。

ファンにはクールな顔つきと選手への大声での叱咤激励で知られる。競技への深い愛情と鋭い観察眼が彼の真骨頂と言えるだろう。

―――沢木さんは、いまの日本代表の戦い方について、「リスクはあるが、はまれば強い」と評されています。「はまる」ためにはどうすればいいのでしょう?

「当然、チームとして考えているとは思いますが、ゲームの流れをどう作るかが一番大事でしょう。『想定しうる試合のシチュエーションに柔軟に対応する』『自分たちの強みを生かすためにゲームをコントロールする』という視点が重要だと思います。この点を踏まえた上でゲームプランを遂行すれば、『はまる』んじゃないですか」

――「プラン」は、トニー・ブラウンアタックコーチが提示するかと思います。それが勝利に繋がる時とそうでない時の違いはなんでしょう?

「インディビジュアル(個人)の簡単なミスが起きると、(ゲームプランの遂行は)難しくなります。そもそもワールドカップ、テストマッチでは特に、ミスでゲームの流れが大きく変わることもあります。ただ、普段からゲームで起こり得るミスを考慮に入れて、トレーニングしていれば、試合でそのミスの傷が大きくなることはないんです」

――現体制下で「起こり得るミス」には、タックルされながら球を繋ぐオフロードパスが味方に繋がらないことが挙げられます。

「簡単にボールを失わないってところじゃないですか。そこは、ワールドカップで一番のポイントになります」

――試合で簡単にボールを失わないためにするトレーニング。沢木さんならどう設計されますか。

「もちろん(日本代表でも)やっているとは思いますが、ゲームプレッシャーを想定したトレーニングを継続していくことじゃないですかね」

――チームは6月、夜間練習を実施しました。ワールドカップ本番で多いナイトゲームへの対策としてです。

「試合の時間帯に慣れるのは大事。でもナイトゲームって、どっちかって言うと(当日の)日中にどう過ごすかの方が難しいんですよ。何時間前に何をして、どこで栄養を摂って…というところで」

――現在、タフな練習を重ねるなかで、怪我人が続出しています。

「この時期はある程度トレーニングの時間、強度が必要です。それらに対してどんなリカバリーをするかなどで、(怪我の)リスクは軽減できるとは思います。ヨーロッパのサッカーチームもリカバリーに相当な力を入れていますよ。彼らは2〜3日にいっぺんは試合をするから、いかに試合後にリカバリーするかを考えているんです。その辺は、今後ラグビーでも進化してくるところじゃないですか。ワールドカップでも中3日で試合をするチームもあるので」

7月4日に新ユニフォームが発表された。このユニフォームでの初戦は7月27日釜石鵜住居復興スタジアムでのフィジー戦

――PNCが近づいています。ここでは、ワールドカップで使うゲームプランを隠すべきなのでしょうか。

「ワールドカップに向け、事前のゲームで何を確認していくかという考え方は、その時のコーチ陣、その時のチームによって違います。ただ重要なのは、この時期はワールドカップでパフォーマンスを出すための戦い方をしなければいけないということ。ここで負けたとしてもワールドカップに繋がると言えるよう設計を立てるのが大事です」

――宮崎合宿の序盤、チームはワールドカップ仕様とされる攻撃戦術の練習をしていました。これを本番まで一切披露しない考えもあれば、事前のテストマッチで慣らし運転をする考えもあります。

「全部を隠す必要はないと思います。ゲームによって使い分けるという考えもあります。何を出して、何を隠すか、そういう駆け引きは当然あるんじゃないですかね」

――ファンは、日本代表のすべてがオープンにならないであろう試合でどこに注目すればよいですか?

「一番、(現状の力が)わかりやすいのは、ディフェンスの部分でしょう。個々のタックルから成長度合いを見られる。数値上タックルミスが少なくなっていれば、成長しているのがわかるとも思います。特に初戦で当たるフィジー代表はひとりひとりが強いし、速い。1対1でのバトルが試される相手です。あとはセットプレー。あまりセットプレーが強くないとされる今度の対戦国――フィジー代表はスクラムが得意ですけど――に対して、スクラム、ラインアウトで圧倒したいんじゃないですかね」

沢木氏は、大会中、多くの試合でゲスト解説をつとめる予定だ。

「マニアックな解説をしますよ。それが求められているので」。

ラグビーファンは期待して待とう。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

  • 撮影志賀由佳

Photo Gallary2

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