暴力団とお笑い芸人 吉本興業の「闇営業問題」3つの疑問

ジャーナリスト 森功 緊急寄稿

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5時間半の社長会見で実態に蓋をした暴力団と芸人の「蜜月関係」

’14年6月頃に開かれた詐欺グループ首謀者の誕生パーティ。仲介役の入江を含めた吉本芸人8名が参加した

闇営業を巡るこの1週間の動きには数々の疑問が湧く。まずは、吉本興業のパワハラ問題である。

「記者会見するいうんなら全員クビや」

吉本興業社長の岡本昭彦が闇営業に加わった宮迫たちの嘘を告げられたとき、そう口にしたという。それが、典型的なパワーハラスメントだ、と集中砲火を浴びたのは知っての通りである。

芸能プロダクションの社長が不祥事を引き起こしたタレントに解雇を言い渡す。厚労省は、パワハラを「職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為」と定義している。だが、そもそも、今度のケースが、業務の適正範囲を超えるパワハラにあたるのだろうか。

闇営業芸人のなかでも、雨上がり決死隊の宮迫博之は、反社のパーティで高額ギャラを受け取りながら、嘘をついて誤魔化そうとした。それがばれた挙げ句、逃亡中の金塊強奪犯と仲睦まじく飲んだくれている写真までが、フライデーに報じられそうになる。これではもはや抱えきれない、と吉本側がフライデー発売当日の7月19日、宮迫の引退会見をセッティングした。と、ここまでの流れに、不自然なところは見受けられない。

反社とビジネスをしていたという1点において、一般企業なら雇用契約を解消される。実際、このときまで芸能マスコミは「宮迫引退へ」と囃し立てていた。

ところが、そのあと形勢が大きく変わる。引退するものと思われていた宮迫が、フライデー発売の翌20日に急遽会見を開き、逆襲に出た。”正直者”で気の弱いロンドンブーツ1号2号の田村亮を傍らに従え、涙ながらに吉本の社長によるパワハラを訴えた。すると、そこに吉本の芸人仲間が同調した。テレビやSNSを通じ、芸人たちが「吉本けしからん」と熱い友情メッセージを送り、芸能マスコミも彼らの意見に拍手喝采した。

疑問の2点目は、なぜ芸人たちがお笑い帝国の吉本興業に反旗を翻したのか、という点だ。本気で宮迫を信じているのだろうか。さすがに「騒動の元をただせば宮迫のせい」というネット上の声は残ったものの、あれほど闇営業を糾弾していたテレビ各局もいっしょになって吉本興業社長の岡本をつるし上げ、宮迫同情論が巻き起こった。

そして最大の疑問は、なぜ吉本興業が宮迫切りをためらったか、である。大物芸人の仲裁や横やりがあったとはいえ、ことの元凶が宮迫にあるのは誰しもわかっているはずだ。が、吉本側はそれでいて契約解消処分を撤回し、宮迫に謝罪までしている。

なぜ吉本興業は、宮迫たちに強く出られなかったのか。記者会見を見ると、奥歯にものが挟まった物言いで、いかにも歯切れが悪い。おかげで、本筋である吉本芸人と反社とのビジネスや交友は、藪のなかである。

こうした疑問について、吉本興業に近い芸能プロデューサーや関東や関西の組関係者に聞いてみた。すると、少し謎が解けてきた。

かつては暴力団の組長や幹部、企業舎弟が芸能プロダクションを運営し、芸能界と不可分の歴史を刻んできたのは、改めて念を押すまでもないだろう。昨今、暴力団組織や構成員が減り、芸能界との関係が薄れてきたように感じるが、その実、半グレや詐欺集団が芸能イベントを催したり、アダルトビデオの制作で荒稼ぎするケースも少なくない。

「詐欺や強盗を繰り返す反社のケツ(後ろ盾)に広域暴力団がいて、金主になっています。今は企業舎弟や組員が芸能事業に直接かかわることは少ないので、表向きは警察の手が入らないけど、実際はつながっています」

そう説明するのは、都内のあるフロント企業の社長だ。振り込め詐欺や地面師事件などでは、犯行の準備段階で暴力団関係者が支度金を用意し、犯行後にそれを回収するパターンが多い。芸能活動でも、暴力団関係者が裏に隠れている構図は同じだが、半グレや詐欺集団がイベントに呼びたがるので、時折、それが表沙汰になるのである。ある山口組の関係者はこう明かした。

「吉本の場合、前は山口組の直参(二次団体)組長クラスが大物芸人を連れて歩いとったけど、東京進出してからは、だんだんスタイルが変わっていった。半グレが、(カラテカの)入江のようなもんを窓口にして芸人をイベントに呼ぶようになった。実は入江の裏にはもう一人仕切り役がいて、宮迫と親しい大物芸人もイベントに呼ばれとるみたいやで」

吉本興業は、そこに気付いていたのかもしれない。宮迫は先の記者会見で次のような話をした。

「とんでもない認識の甘さなんですけども、入江くん主催(のイベント)ですが、そこに吉本興業の社員もいて(中略)構造的には僕らが行ったパーティと同じことなので……」

とどのつまり同じ穴のムジナ。大騒ぎした記者会見は、仲間内の痴話喧嘩を見せられただけというほかない。結果、肝心の闇営業の実態に蓋をされてしまった。

’14年12月の詐欺グループの忘年会。宮迫、田村亮ら大物も参加していたことで、「闇営業」は大騒動に
’16年8月頃に開かれた稲川会大幹部の誕生パーティ。吉本の『スリムクラブ』と『2700』が参加した

『FRIDAY』2019年8月9日号より

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