京アニ放火事件 青葉真司容疑者が凶行に至った「妄想の着火点」 | FRIDAYデジタル

京アニ放火事件 青葉真司容疑者が凶行に至った「妄想の着火点」

日本のアニメ文化を焼き尽くし、35人の人命を奪った男が抱えた“鬱憤”という火種

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青葉真司容疑者の中学校の卒業アルバム写真。中学生のとき、青葉は自分のことを「ワシ」と呼んでいたという
青葉真司容疑者の中学校の卒業アルバム写真。中学生のとき、青葉は自分のことを「ワシ」と呼んでいたという

「呼び鈴が鳴り玄関に出ると、仰向(あおむ)けに男性が倒れていました。シャツとジーンズ姿で大柄な体型。髪は焦げていて、火傷で両腕の皮膚がめくれ上がっていた。足の裏は血だらけで、右すねには燃えカスが残っていました。『大丈夫ですか?』と聞いても返事がなく、うちのホースで水を足にかけました。駆けつけて来た警官が男性に『どうしてこんなことをした?』『どうやったんや?』と聞き始め、放火の犯人だと気づいたんです。犯人は『パクりやがって』『火をつけた』などと口にしていましたね。顔は土色でところどころ緑がかっており、今まで見たことない顔色でした」(京阪電鉄六地蔵駅近くの住民)

7月18日の午前10時30分過ぎ、京都市伏見区にあるアニメ制作会社「京都アニメーション」第1スタジオに青葉真司容疑者(41)が火を放った。ガソリンもまいたため炎と煙の勢いが強く、死者は35人にも及んだ。青葉容疑者は逃走し、現場から約100m離れた六地蔵駅付近で警察に取り押さえられた。

埼玉県さいたま市在住の青葉容疑者は、事件数日前から京都市に滞在し、近くの公園で寝泊まりしていた。

「事件前日の夜8時頃、公園のベンチで両膝を立てて寝ている太った男性を見かけたんです。足元には台車があり、荷物が載っていました」(近隣住民)

寝ていた男性が青葉容疑者だったのだろう。青葉容疑者は近くのガソリンスタンドで買ったガソリンを台車に載せて運び、凶行に及んだと考えられる。

埼玉県で少年時代を過ごした青葉容疑者について中学校の同級生はこう語った。

「優しく穏やかな人柄の印象。柔道に熱心で、隣町の柔道教室までバスで通っていました。両親は離婚しており、父と兄と妹の4人暮らし。洗濯機が家の外にあるような木造の古いアパートに住んでいて、裕福という感じではなかったです」

中学卒業後、青葉容疑者は夜に定時制高校に通いながら、昼は埼玉県の文書課で非常勤職員として働き、家計を助ける。

「父親はタクシー運転手をしていました。男手ひとつで苦労もあったのでしょうが、家族仲良く生活しているようでしたよ。父親が勤務終わりに近くの商店で惣菜を買って帰る姿もよく見かけていました」(当時青葉家が住んでいた家の近隣住民)

貧しくも互いに支えあって暮らしていた青葉家。兄も家を出て、青葉容疑者も一人立ちし、県内の大手新聞社の専売所で働き始めた。しかし、そんな青葉家を悲劇が襲う。

ある日、近所で父親が松葉杖をついて歩いているのを見かけました。タクシーで交通事故を起こして働けなくなったそうです。それで一気に生活が苦しくなったのか、父親と妹の怒声が毎晩のように聞こえました。それからまもなくして父親が首を吊って自殺し、残された妹も蒸発してしまいました」(前出・住民)

それから十数年間、青葉容疑者は仕事や住居を転々とする。’12年6月には、茨城県坂東市でコンビニ強盗をはたらき、逮捕される。

「青葉が逮捕された後、彼の部屋に入ると、ガラスは割られ、壁はボコボコに壊されていました」(アパートの管理人)

青葉容疑者はなぜ凶悪な放火事件を起こしたのか。精神科医の和田秀樹氏が語った。

「青葉容疑者は衝動のコントロールが上手くないタイプなのでしょう。一般論では、その原因は養育環境だと言われています。母親との離別や父親の自殺など精神的に荒(すさ)む要因はいくつもあった。さらに金に困ってコンビニ強盗で逮捕されたことが大きい。刑務所暮らしを経て、まともな社会生活にもう戻れなくなってしまった。自分は社会の落伍者になったと決めつけたと思われます。そこから世の中に対する不満を募らせていき、今回の事件に繋がった。『生きていても、もう良いことがない』と思い込んだ人間の犯罪を止めることは難しい」

逮捕時に青葉容疑者は「小説をパクられた」と口走っていた。この妄想が、溜まりに溜まった容疑者の鬱憤に着火し、悲惨な放火事件に繋がったのか――。

焼け焦げた「京アニ」第1スタジオ1階。らせん階段の近くに、放火に使用されたライターが落ちていた
焼け焦げた「京アニ」第1スタジオ1階。らせん階段の近くに、放火に使用されたライターが落ちていた
現場近くの防犯カメラに映る青葉真司容疑者。台車にはホームセンターで買ったガソリンの携行缶が載せられていた
現場近くの防犯カメラに映る青葉真司容疑者。台車にはホームセンターで買ったガソリンの携行缶が載せられていた
「京アニ」第1スタジオが燃える様子。最初は、建物右手から火の手が上がり、次第に左へと燃え移っていった
「京アニ」第1スタジオが燃える様子。最初は、建物右手から火の手が上がり、次第に左へと燃え移っていった

『FRIDAY』2019年8月9日号より

 

  • 写真ビデオファクトリー京都(スタジオ外観)撮影加藤 慶(スタジオ内観)

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