W杯目前に緊急提言! 清宮克幸が描くラグビー2021改革

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1967年大阪氏出身。現役時代のポジションは、フランカー、ナンバーエイト。早大、サントリー、ヤマハで監督として活躍。6月から日本ラグビー協会副会長

日本ラグビー協会(日本協会)の清宮克幸副会長は7月28日、2021年から新しい国内プロリーグを発足すると宣言。今秋開幕のワールドカップ日本大会の開催会場を「オリジン12」と名付け、各地にラグビー事業に専念する独立法人設置を募る。ホームスタジアムの保持や年少者向けアカデミーの設置、地域密着の方針などを参入条件に掲げる。

11月にはより具体的な説明がしたいとし、こうも話した。

「12チームでやりたいと思っても実現が難しい街も出てくるかもしれません。逆に『もっと俺たちにもやらせろ』というのが出てきて15、16になるかもしれない」

清宮副会長は早大、サントリー、ヤマハで監督を歴任し、6月より現職。現体制下初の理事会があった7月17日から、日本協会内に作ったイノベーションプロジェクトチームのリーダーとして活動する。プロバスケットボールのBリーグ立ち上げを引っ張った新任の境田正樹理事らを、その輪に加えていた。

イノベーションプロジェクトチームには広告代理店勤務経験者も招き、リーグ全体を支えるスポンサー企業もリサーチ。東京大学大学院の工学者である松尾豊氏もアドバイザーとして加わり、専門領域のAIやビッグデータをマーケティングや選手育成に活用したいとする。

これまで国内で運営されてきたトップリーグおよびその下部組織では、おもに神戸製鋼、サントリーなどの企業クラブが活動。ラグビー専任のプロ選手と社員選手の割合はチームによりさまざまだった。

プロ選手主体となりそうな今度の新リーグ創設に伴い、既存のトップリーグは予定される2021年1月からのシーズンを最後に完全アマチュア化。河野一郎前副会長を旗頭に2021年1月から動かす予定だった同リーグの新しい枠組み(1カンファレンスあたり8チーム×3)について、清宮副会長は「ご破算になると考えています」と断言した。

7月25日にはトップリーグの代表者会議に参加し、詳細を説明した。既存のクラブ関係者にも、新リーグ参加を促す。

「オリジン12には、本拠地があってスタジアムがあってチームがある(トップリーグの)チームはもちろん優先的に入る。そうでない地域――札幌、釜石、大分、熊本――はこれから新しくチームを立ち上げるなり、都心のチームがそちらへ移って新たなものを立ち上げるなり。色々な可能性がありますね」

左から清宮副会長、境田正樹理事、イノベーションプロジェクトチームの松尾豊東京大学教授、谷口真由美理事

この日に出された素案によれば、新リーグは「東京オリンピック・パラリンピック終了後に6~10チームでプレリーグを実施」「正規のシーズンは9月から翌年の1月もしくは2月」という形になりそうだ。シーズンを秋から冬までと定めたのは、国内ファンの感情に寄り添えるうえ、冬から夏まであるスーパーラグビー(国際リーグ)の一流選手を加入させやすいからだ。

「観客数の目標は決まっていませんが、開幕は新国立競技場がいっぱいになることを。……新国立競技場が使えるのかもわかりませんけど」

ちなみにいまのスーパーラグビーには日本のサンウルブズが参戦中だが、2020年限りでの除外が決まっている。その後のサンウルブズの処遇について、清宮副会長は「価値のあるものであれば使いたい。来年1年で『サンウルブズって日本人にとってどんな存在か』を『見える化』してもらえれば、説得力ある回答が見出せる」。実は新リーグのチームについて語った際に、「例えば、サンウルブズを新リーグに迎えることも……」と加えている。

一方、2021年以降にサンウルブズなどの国内クラブをスーパーラグビーへ参戦させる可能性については「ないんじゃないですかね」と応じた。

これは森重隆会長の「何とか(スーパーラグビーへ)戻れる方法がないか、考えます」という発言、サンウルブズを運営するジャパンエスアールの渡瀬裕司CEO兼日本協会理事が他のオーストラリアクラブとの合併を目指していた経緯とは、方向性の異なる話だ。

新リーグ運営と日本代表強化との関係性を問われた清宮副会長は「日本代表はこれまで(スーパーラグビー参戦で競技力を上げるという)特別な時間を過ごしていましたが、これからはある意味で世界基準になる。これまでのスペシャルな形ではなくなり、世界のスタンダードに準ずる」としたうえで、ジョークを交えて次のように展望を語った。

「逆のパターンはありうる。スーパーラグビーのチームを日本が受け入れるということです。彼らが日本のチームが入るのを受け入れていないとしても、逆は受け入れるわけです。シーズンの時期が違うので、優勝賞金で出す僕のポケットマネーの5億円を獲りに来るチームもあるかもしれない!」

ラグビーのチーム運営には、他競技と比べて興行数が少なく人件費がかかる側面がある。しかし清宮副会長は、顧客に富裕層が多いとされるなどの「ラグビー資源」をフル活用したいという。

「僕らがもし大きな荷物を背負うことができ、世界中のトップ選手が『日本でやりたい』と集まった時、放映権をうまく活用できたり、新たなビジネスを生み出せたりする」

日本ラグビー界で今年6月まで長く続いた景気の悪い話を、清宮副会長自らが台風の目となり吹き飛ばそうとしているようだ。各自治体との話し合いは「まだいくつかしかアプローチしていません」とし、「先に発表することは少し普通ではないが、これくらいのスピード感でやらないと11月までに答えが出ないのであえてこうした」。これから本格化しうるステークホルダーとの論戦についても、「もめどころは記事の書きどころです」と笑う。

「スピード感を持って、ガンガン、ガンガン行きますよ」

みずから激流を起こすのを楽しむつもりだ。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター 1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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