埼玉西武ライオンズ・森友哉「オレのバッティング革命」 | FRIDAYデジタル

埼玉西武ライオンズ・森友哉「オレのバッティング革命」

一度は捕手を諦めた逸材が、今季はスタメンマスク&打率3割越え

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小学生のころからこのアッパースイングでヒットを量産。「ホームランに魅力を感じたことはないですね」(森友哉)
小学生のころからこのアッパースイングでヒットを量産。「ホームランに魅力を感じたことはないですね」(森友哉)

ドッシリと重心低く構え、ボールをカチ上げるように振りぬくフルスイングが、森友哉(23)の魅力だ。マン振りだと飛距離は出るが、精度は落ちる。そんな常識は森には通用しない。西岡剛、中村剛也(たけや)、中田翔、浅村栄斗(ひでと)ら、名だたる好打者をプロに送り込んだ母校・大阪桐蔭の西谷浩一監督は「凡打しても芯を喰う。森のミート技術の高さは歴代の教え子の中でナンバーワン」と公言している。

「シーズン当初に設定した目標『打率3割』という部分に関しては、いまのところキープできていますが(.322、数字は7月31日現在)、残り試合も多いですし、これから暑くなりますから、まだまだわからないですね。正直、自分が活躍しているという実感はないです」

豪快なスイングとは対照的に謙虚な森だが、一時は3割5分台をマークするなど、序盤から打棒が爆発。オールスターの選手間投票でもトップに輝いた。

マン振りに見えて力が入っているのはインパクトの瞬間だけ。現在、日米で大流行しているフライボール革命を先取りしたアッパー気味のスイング軌道――プロは口々に森の打撃技術を絶賛するが、森によればこの”究極のスイング”を手に入れたのはなんと「リトルリーグのころ」なのだという。

「当時から何も変えてないです。意識して脱力しているわけでもない。カチ上げてるつもりもなくて、いい形で打とうと思ったら自然とそうなったというか……。スイングは親父と作り上げました。親父は野球は素人だったんですけど、本をいっぱい買ってきて練習法を研究して、ある日、ホームセンターでバドミントンのシャトルをいっぱい買ってきた。それからシャトル打ちの特訓が始まったんです。夕食後に毎日、1~2時間。とてつもない数、打ちましたね。ヘッドを走らせて、いい角度でバットを入れないとシャトルはきれいに飛ばないんです」

意識しているのは一つだけ。意外にも「ホームランを狙わないこと」だ。

「自分は小柄(170cm)ですから、詰まってもホームランになるケースはほぼない。まずはしっかり芯を喰って、ヒットを狙い、ヒットの延長がホームランになればいい。全打席ホームランを狙っている山川穂高さんとは逆なんです」

山川は同期入団。ともに練習好きということもあって親しくなった。ナイターの日でも、二人は午後1時前には球場入りして練習を始める。

「山川さんは理論派なんですよ。たとえば、先日は『バッティングはスローイング(送球)と同じ』と言っていました。どちらもテイクバックしてから、腕を振るという動作は同じ。『スローが柔らかい人はバッティングも柔らかい』と。なるほどなぁと思いますが、山川理論を取り入れることはないですね(笑)。自分はあれこれ考えず、感覚で打つタイプなので。バッターボックスでは配球は読まず、真っ直ぐを待っています。確率的に最も多く投げられる球種ですし、真っ直ぐは狙っていないと打てない。逆に変化球は真っ直ぐを待っていても対応できる。真っ直ぐより遅いから、スイングが間に合うんです。差し込まれない。もちろん、ボールの軌道はぜんぜん違うのですが……そこは頑張って打ちます!」

底知れぬ才能に気付いた西武の首脳陣は頭を悩ませた。森のポジションがキャッチャーだったからだ。捕手は守備8割、打撃が2割と言われる。コンバートして、超一流の打者に育てるべきではないか?

プロの壁を乗り越えて

プロ入りしてからの4年間はDHや外野での出場がメイン。森自身、キャッチャーをあきらめた時期もあった。

「プロ2年目でしたか、ついにキャッチャーでのスタメン出場がゼロになったんです。正捕手の炭谷銀仁朗(ぎんじろう)さん(現巨人)は常に冷静。焦っている姿も素振りも一切、見せない。一方で自分は甘い球や失投をことごとく打たれて、パニックになっていた。頭の中は真っ白。正直、『もうキャッチャーは無理や』と思っていました。銀仁朗さんにはかなわないと……」

一軍に残れるなら、どんな形でもいい。外野で必死に白球を追ううち、チャンスが訪れた。銀仁朗のFA移籍に備えての措置か、昨シーズン序盤から森がスタメン起用されるようになったのだ。

「ビクビクしながらリードしていたのですが――気づいたら冷静な自分がいました。『やるしかない』と必死にやっているうちに冷静になれていた。失点してもすぐ取り返してくれる。強力打線の援護も大きかったと思います。昨季、スタメンマスクを70ちょっと被(かぶ)らせてもらった中で、シーズン通してのリードと絶対負けられない試合の配球の違いなど、いろいろ学ばせてもらいました。リードする際の感覚や感性も成長したと思います。口で説明するのは難しいのですが……ピッチャーの能力、相手のチーム状態、各打者の調子を見て『このボールなら抑えられる』という配球が閃(ひらめ)き、実際に抑えられる。その回数がすごく増えましたね」

今季すでに88試合に出場している森にあえて問うた。

「大阪桐蔭時代、一緒に春夏連覇を成し遂げた剛腕・藤浪晋太郎(25)が制球難に苦しんでいる。いま、バッテリーを組むとしたら、どうリードする?」と。

ド真ん中にミットを構えますね(笑)。もともとコントロールできないピッチャーなんで。真ん中に投げれば勝手にコーナーに散ってくれますから。藤浪さんと出会ったのは小学生時代(藤浪が1学年上)。第一印象は『デカすぎやろ!』でした。すでに180cmくらいありましたから。家がムチャクチャ近所で、小・中と何度も対戦しましたが、当時からずっと、ズバ抜けた存在でした。力はあるんだから、思い切り、真ん中に投げればいい」

「一番いいボールを軸に投球を組み立てる」という彼らしいアドバイスだ。

正捕手の風格が出てきたように見えたが、「理想にはほど遠い」と森は言う。

最少失点で切り抜けられたはずの試合が何試合もあった。冷静に最適な配球ができていればもっとピッチャーを勝たせてあげられた。自分はまだまだですよ」

23歳の若き「最強キャッチャー」は、「まだまだ」伸びしろがあるのだ。

「バッティングを直された記憶がない」という森友哉。甲子園での通算打率は4割超。プロ5年間でも.288とハイアベレージを誇っている
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野球を始めた小学生時代からポジションは捕手。打率にばかり注目が集まるが、盗塁阻止率も.373と高い(’18年)
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『FRIDAY』2019年8月9日号より

  • 撮影ジジ

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