高校野球は教育かエンタメか? 強行日程からあらためて考える

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今年も「全国高等学校野球選手権大会」、いわゆる夏の甲子園が8月6日に始まる。東洋大姫路高校時代に3度甲子園に出場した元メジャーリーガーの長谷川滋利氏が、いま高校野球がかかえる日程問題を指摘する。

2018年の第100回記念大会では、大阪桐蔭高校が優勝した

今年も全国3730校が参加し、各都道府県の代表49校が出揃いました。

強豪校や注目選手が地方予選から姿を消したりといった報道がありましたが、その地方予選から既に過密日程が目につきました。

188校が出場し、最激戦区となった愛知県を制した誉高校は1回戦から戦ってきて、23日で8試合を消化しています。1回戦から2回戦こそ中5日ありましたが、その後は中2日、中3日でのゲームを余儀なくされ、準々決勝からは中2日(うち雨天順延が1日)、準決勝と決勝は連戦でした。

他県も似たような状況です。参加181校の神奈川県代表・東海大相模は13日で6試合、連戦が1度ありました。174校の大阪大会の優勝校・履正社も15日で7試合、そのうち連戦を2度、経験しています。

この日程は歪としか言えません。少なくともまだ成長の途上である10代の選手に強いていいものではないでしょう。現役のメジャーリーガーも何人か発言していたようですが、日程や制度の見直しは急務です。

逆に言えば甲子園出場のためには、それだけ無理をしないといけないということです。そこに根本的な問題が潜んでいるのではないでしょうか。

まず、「全国高校野球選手権大会」という伝統と歴史を持った大会は、何を目的としているのか。育成や教育がメインなのか。商業的なものなのか。エンターテイメントなのか。その優先順位が見る人によって違うし、運営側も曖昧になっている、あるいは意図的にしているのかもしれません。

さらに、時に選手の健康を害してでも真夏にやる理由、トーナメントでやる理由を誰が説明してくれるのかと言えばこれも不明です。

夏にやるのは学校が休みだからという単純な事情かもしれませんが、それであれば涼しい秋の週末に開催すればいい。

過密日程のトーナメント、もっと言えば日本一をどうしても決めないといけない理由もよく分かりません。主催の日本高等学校野球連盟と後援の朝日新聞(春の選抜は毎日新聞)が「商業的なエンターテイメントであるから」と明言すればいわばショーの一種として一定の理解はできるのですが、どうしても教育や育成が建前に感じてしまうのは僕だけでしょうか。

明確な優先順位とその基準がないのが最初の齟齬かもしれません。そしてそれは主催者や学校、メディアのせいだけではなく、楽しみにしているファンもそれぞれ、自分の意見と基準を持つべきだと思っています。

例えば、地方予選で連戦が続いてしまい、自分の母校が選手の健康状態を考慮して不戦敗という苦渋の決断をした。それをOBは「情けない。母校の名を全国に知らしめるチャンスなのに」と思うか、「残念だけれど何かあってからでは遅い。生徒のコンディションをまず優先した決断だ」と受け止めるか。

どっちがいい悪いではなく、ファンも高校野球に対する自分のスタンスと意見を持っておけば、もっともっと建設的な議論が交わされることになると僕は信じています。

ただ、そこで難しいのは、その決断とその議論も甲子園という大舞台で、各種報道がされないと俎上に乗らないことです。おそらく日本全国で様々な問題や難しい判断がされていると思うので、まずファンは自分の地域の現状を把握することも大切なのではないでしょうか。

「甲子園という大きな目標に向かって活動することで、努力の大切さを実感する」

「厳しい練習や、炎天下の連戦を経て根性が身につく」

なんてことを真剣に言う方もいまだにいます。努力の大切さは別に甲子園だけではなく、あらゆるスポーツや勉強、芸術の世界でも共通して実感できますし、「根性」なんていう言葉は今や死語でメンタルトレーニングでいくらでも良質のメンタルを手に入れることができます。

100回大会を終え、次の100年に向かって甲子園は変わりゆく時代の中、大きな曲がり角に差し掛かっているはずです。優先順位をまずは明確にする必要があると僕は強く感じています。

  • 長谷川滋利

    1968年8月1日兵庫県加古川市生まれ。東洋大姫路高校で春夏甲子園に出場。立命館大学を経て1991年ドラフト1位でオリックス・ブルーウェーブに入団。初年度から12勝を挙げ、新人賞を獲得した。1997年、金銭トレードでアナハイム・エンゼルス(現在のロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム)に移籍。2002年シアトル・マリナーズに移り、2006年現役引退

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