なぜ、こんな色に!? カラフル生物の「色の不思議」 | FRIDAYデジタル

なぜ、こんな色に!? カラフル生物の「色の不思議」

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自然界には、鮮やかでカラフルな色彩をもった生物がたくさんいる。彼らはなぜこのような色をもつようになったのか。生物の色はどのような役割をもっているのか。東京理科大学で「構造色」を研究している吉岡伸也氏に聞いた。 

パンサーカメレオン(マダガスカル)写真:Danita Delimont/アフロ
パンサーカメレオン(マダガスカル)写真:Danita Delimont/アフロ

フラミンゴがピンクなのは、ピンク色になるエサを食べているから

そもそも我々人間を含む生物の色はどのような仕組みで決定づけられているのだろうか。

「生物の色は“色素”によるものと、“構造色”という光の反射によるものがあります」(吉岡氏 以下同)

多くの動物は、植物から色素を得て、消化吸収したり、変化させたりしながら独自の色となっている。たとえばフラミンゴは、エサとなるエビやカニ、藻類から、カンタキサンチンという色素を得ているためにピンク色になる。だから、赤ちゃんフラミンゴは、白っぽい灰色だ。鯉も藻を食べることでオレンジ色になるという。

人間でもみかんを食べ過ぎたとき、手が一時的に黄色になるが、これもみかんに含まれるカロテノイドという色素によるものだ。

ハイガシラショウビン〈カワセミの一種〉(タンザニア)写真:Danita Delimont/アフロ
ハイガシラショウビン〈カワセミの一種〉(タンザニア)写真:Danita Delimont/アフロ
イチゴヤドクガエル(コスタリカ)写真:Danita Delimont/アフロ
イチゴヤドクガエル(コスタリカ)写真:Danita Delimont/アフロ
トウワタイナゴ(南アフリカ)写真:Alamy/アフロ
トウワタイナゴ(南アフリカ)写真:Alamy/アフロ

光を反射して独特の色になる生物もいる

では、青い実を食べれば青くなるのかと言ったら、そうはいかない。動物が食物から得られる色素には限界があり、いまだに理由は解明されていないが、青い色素を動物自身が作り出すことはむずかしいとされている。

でも、青い色をもつ鳥や昆虫は、確かに存在する。

「それらは特定の波長の光だけを反射する、“構造色”という発色の仕組みをもっているのです」 

これは、光を受ける表面が複雑な構造になっていて、受けた光を干渉や散乱させ “青”の波長の光のみを積極的に反射させ、青に着色されているように見せているというもの。 

「しかし、実際の構造は大変複雑で、光の波長より小さなサブミクロンサイズの構造や色素など、様々な要素を組み合わせて、それぞれ独特な光学効果(発色)を実現させています」 

タマムシなどは、キラキラ光って、見る角度によって色が変わって見えることがある。これは、角度によって反射される光の色が変わってくるため。シャボン玉やDVDの表面が虹色に光って見えるのも、構造色と同じ仕組みをもっているからなのだとか。

モルフォ蝶(コスタリカ)写真:SIME/アフロ
モルフォ蝶(コスタリカ)写真:SIME/アフロ

“モルフォ蝶”はなぜ光り輝く青を選んだのか

モルフォ蝶の美しさに惹かれて、構造色の研究を始めたという吉岡氏は、モルフォ蝶の生息地である南米まで行って、モルフォ蝶の飛ぶ姿を見たそうだ。羽根全体が蛍光板のように青く輝く羽根をもつのはオスだけ。メスは青い部分が少なく、まったく青くないものもいるという。

「ジャングルの中で飛ぶモルフォ蝶は、本当に美しい。緑と茶色だけの中で、あの光る青はとても目立ちます。なぜそのような色を持つようになったのか、いくつかの仮説が考えられています。きらきらと点滅するようにはばたくことで、捕食者の攻撃を逃れるため。あるいは、鮮やかな色でメスの気を引くため。しかし、私が見ていたときには、メスは全然寄ってこない。むしろ、同じ青色を持つオス同士が絡みあって飛んでいました。なぜ、あんな目立つ色を身につけているのか、まだはっきりとは解明されていません」

熱帯魚のネオンテトラの青い筋も構造色だ。しかし、ネオンテトラの生息地であるアマゾン川は濁っていて、魚が近づかない限り青は目立たない。モルフォ蝶と同様に、体に光る青をつけている理由について研究が続けられている。

「なんのために」ということは不明だが、モルフォ蝶の構造色の仕組みはほぼ解明されている。このモルフォ蝶の構造色から着想を得て開発された顔料で、レクサスが青色の特別仕様車を作った。青色に輝く車体は、まさにモルフォ蝶。

2018年にレクサスから限定発売された特別仕様車“Structural Blue”。 15年の開発期間を経て、「構造色」の原理を再現した自動車用の構造発色性顔料を生み出した。画像提供:レクサス
2018年にレクサスから限定発売された特別仕様車“Structural Blue”。 15年の開発期間を経て、「構造色」の原理を再現した自動車用の構造発色性顔料を生み出した。画像提供:レクサス

生物が持つ機能を応用した『バイオミメティクス』

近年、このように自然界の生物が持っているすぐれた機能や形状を模倣し、工学や医療の分野で応用する『バイオミメティクス』が注目を集めている。

摩擦抵抗を少なくすると、一躍話題になった競泳水着は、サメ肌を応用したもの。鳥の翼のような形をした500系新幹線のパンタグラフは、獲物を捕るとき羽音をたてずに静かに忍び寄るフクロウの翼をヒントに考えられたものだ。飛行機の翼や外壁は、音や衝撃を吸収するミツバチの巣のハニカム構造を参考にしている。実に広い分野で、研究・応用されているのだ。

「構造色を生み出す小さな構造ができるのは、モルフォ蝶なら、さなぎの段階です。蝶たちが構造色を作るプロセスがわかったら、人間たちも簡単に構造色を作れるようになるかもしれない。ただ生物の仕組みを真似するのではなく、生物のことをもっとじっくり研究して、その先に役立つ何かが見つかればいいなと思います」 

“なぜその色なのか”をはじめ、生物についてまだわからないことがたくさんある。その分、学ぶことは多い。「これからどう役に立つかわからないけれど、大切なのは“基礎研究”」と吉岡氏は言う。

吉岡伸也 1994年北海道大学理学部物理学科卒業後、1998年同大学にて博士課程修了。2015年より東京理科大学理工学部物理学科准教授に着任。生物が持つ構造色、工学的な工夫、バイオミメティクスを中心に自由な発想による研究を専門とする。自然界の生物を手本に、物理法則がどのように使われ機能しているのかを調べ再現・超越するための研究をおこなう。

  • 取材・文中川いづみ

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