日本ラグビー界のレジェンド五郎丸歩が語るこれからの日本代表 | FRIDAYデジタル

日本ラグビー界のレジェンド五郎丸歩が語るこれからの日本代表

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元日本代表FB五郎丸歩が日本代表にエールを送った。前回2015年W杯大会で大活躍し、大会ベスト15にも選ばれたレジェンドは、ある選手を日本ラグビー界の今後の人気を左右するキーマンに指名した。

――ラグビーを見る人に、この大会の日本代表のどこを見てほしいですか?

日本代表でありながら、ニュージーランド、トンガ、南アフリカなど様々な国の出身の選手で構成されている多様性はひとつの観点です。オリンピックやサッカーの日本代表は国籍が基準になりますが、それとは違う切り口で見てもらえるんじゃないかなと思います。ただ、いろんな国のルーツを持つ選手が日本代表に集まっていたとしても、その中で純血の日本人が活躍しないと(一般のファンには)受け入れられない。外国にルールを持つ選手が活躍して日本人が活躍しない日本代表は理解されない。世界的にみるとまだ発展途上のラグビー日本代表にとって、非常に重要視しないといけないポイントだと思います。

――では、先発する可能性が高いSO田村優選手への期待は大きいですか?

彼は指令塔として試合を動かすことはもちろん、ラグビーを初めて見る方にとって一番わかりやすいキックで結果を残してほしい。そういったファンの方にとってメッセージが伝わりやすいポジションのひとつだと思います。だからこそ、彼が結果を出さない限り、日本のラグビー人気はこれからあがっていかないと思います。

――最近、話をしましたか?

久しぶりに電話したんです。(テレビ電話で見た田村の)顔が死んでいましたよ(笑)。

試合を行う前までの時期は、(日本代表の練習は厳しく)キツイんです。

――4年前、W杯期間中の宿舎では田村選手と同部屋でした。五郎丸選手はキックの前のルーティンに特徴があり、話題にもなりましたが、田村選手ともそのあたりの話をしましたか?

ずっと一緒にいたので、(キックについての話は)何回かしたことはあります。でも人によって蹴り方も違うし、間合いも違う。たとえば(イングランド代表の名キッカーとして有名な)ジョニー・ウィルキンソンのすべての動きをすべて分析して、ボールの立て方、蹴る前の間合い、格好、すべてまねたところで、表面上、全く同じ動きができても体の構造が違うと全くうまくいかない。だから、自分の中でのメンタル面、技術面の「芯」を作らないといけないんです。「こうなれば入る」とか「こういう準備をすれば自分の気持ちが落ち着く」といったことを4年間かけて作らないといけない。彼はサンウルブズでも、今の日本代表でもキッカーをつとめている。いろんな経験をしてW杯を迎えられるのは素晴らしいことだと思います。

日本代表の背番号10、田村優は五郎丸歩に匹敵するそのキック力で、ラグビー人気にもう一度火をつけたい
日本代表の背番号10、田村優は五郎丸歩に匹敵するそのキック力で、ラグビー人気にもう一度火をつけたい

――田村選手は本番に強そうな表情をしていますね。

4年前からチームのことしっかり考えているな、と思いましたけど、リーダーになって発言も態度も変わってきた。軽いプレーもなく、チームのために体を張れるようになった。4年前の彼よりかなり成長していると思います。当時は先発メンバーではなかったんですが、腐らずにチャンスが来るまで準備をし続ける彼の姿も見ていました。だから(田村は)金星を奪った南アフリカ戦も途中出場しているし、スコットランド戦にも先発しています。

――五郎丸選手と同じ学年の堀江翔太選手もFWのリーダー格として期待されます。

彼は、僕らの世代にすごく夢を持たせてくれた選手です。ずっと体張り続けて、首や足の大きな手術をしながら、日本代表のためにすごい頑張っている。あの(ドレッドヘアの)髪型は高齢者の方から見たら批判されますけど、非常に特徴あることすることによって新たなファンが増やす、ということも考えているんだと思います。

――堀江選手の何が凄いのですか?

2013年に豪州のメルボルン・レベルスでスクラムの最前列で、FW(フォーワード)8人をまとめなければいけないHO(フッカー、2番)のポジションで試合に出たことです。2番、8番、9番、10番、15番はラグビーでいえばチームを支えているポジション、大黒柱みたいなところです。だから、堀江が外国人としてあのポジションでプレーすることって大変なんですよ。ラインアウトのサインをあわせるのも英語だし、スクラムの微妙な感覚のズレを修正するのも英語。僕自身も海外に行ったのでその難しさはすごくわかるんですが、ラグビーはサッカーなどと違い、基本的に外国人選手に対して通訳がつかないので、英語で直接話をして、自分の要望も伝えきらないといけない。僕も豪州のレッズではラグビーに専念できる環境にはいましたが、言葉の壁があって日常生活で何かをするのにも最初は時間がかかりました。

堀江翔太(右)は首や足の大きな手術を乗り越えて3度目のW杯に挑む
堀江翔太(右)は首や足の大きな手術を乗り越えて3度目のW杯に挑む

――五郎丸選手のつとめたFB(フルバック)やWTB(ウィング)で出場の可能性がある松島幸太朗選手はいかがですか?

体もそんなに大きくない(178cm、88㎏)中で、世界で戦っている。体の使い方がうまいし、ステップもキレます。幼少期のラグビー選手やラグビースクールの選手は真似ができると思いますよ。4年前のW杯で(190cm近い選手がそろう)南アフリカ戦でも、ハイボールを(空中戦で不利とされる身長差を感じさせず)キャッチしていましたから。ハンデをどう埋めるか、自分の強みをどう生かすかを、どこかで苦労して考えないと、生まれ持った才能だけでは代表にたどりつけないし、代表に上がってきたとしても長続きしないものです。

――海外で一緒にプレーした選手で印象に残った選手はいますか?

元豪州代表のバックスの中心選手だったマット・ギタウです。2016-2017年にフランスのトゥーロンで一緒にプレーしましたが、そのシーズン、彼はチーム事情でシーズン途中に選手兼BKコーチに就任しました。チームの全体ミーティングでも「コーチになってもらうので、選手はあきらめてもらう」と全員の前でアナウンスされたのに、それでも彼は選手として出ることをあきらめていなくて、コーチとしての仕事をまっとうしながら、朝早く来たり、選手の帰宅後に自分のトレーニングをしていた。「さすがだなあ」と思いましたよ。そのシーズン、フランスのリーグ戦「TOP14」の決勝まで進みましたが、ギタウは準決勝から出てきて、ピカ一のプレーした。翌2018年からサントリーに来ても輝いています。結局、プレーで一流の人はいっぱいいますが、人としてチームメートに受け入れてもらわなければ、実力を発揮できないんです。ラグビーは最後は人間力の部分の勝負になると思います。

 ――日本代表への期待を

今年は本当に、夏に近づいているのに太陽を見なかったですよね。でもそれは、縁起がいいんじゃないかなって感じています。実は4年前のこの時期の宮崎合宿もそうでした。一切、太陽を見ない中、練習は朝5時からはじまって苦しかった。田村の顔を見たとき、練習を積めているんだろうなと思いました。だから、また(世界を驚かせることを)やってくれるんじゃないかって思っています。

松島幸太朗(中央)は五郎丸歩がつとめていたFBでの出場もあり得る
松島幸太朗(中央)は五郎丸歩がつとめていたFBでの出場もあり得る
  • 撮影齋藤龍太郎
  • 映像・撮影・編集木村匡希

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