現金派の私が感動した キャッシュレスカフェの意外な素顔とは
こんにちは。デカ盛りグルメライターの猫田しげるです。
突然ですが私、ネットで記事を書いているくせに超アナログな人間です。電子書籍も読まないし動画も見ないしSNSもほとんどやってないです。
しかし最近お店に行って思うのが、「時代はキャッシュレスになっている!」ということ。個人店や商店街ですら「PayPay使えます」「メルペイ使えます」といった表示があり、だんだん「まだ現金使ってる私…」と肩身が狭くなってきます。
しかも経済産業省は、2025年までにキャッシュレス比率40%にするという目標を掲げ、2019年10月1日から2020年6月30日までキャッシュレス決済した人にポイント還元などを行う「キャッシュレス・消費者還元事業」を実施するそうです。
てことはこれから現金派の人は損する、ともすれば強制的にキャッシュレス派に鞍替えさせられるってことですよ! それは困りますねえ。

いうことで、私もキャッシュレスライフに乗り換えようと、こんなお店を利用してみました。それは秋葉原にある「Developers.IO CAFE」。
運営するのはAmazonのクラウドコンピューティングをはじめとしたシステム開発を手掛けるクラスメソッド株式会社。このお店の特徴は、「完全キャッシュレス」「レジレス」で、商品の注文も支払いも全て携帯電話で事前に行うというシステムです。つまり、お店でレジに並んで注文したり、現金で支払ったりする必要がないということです。
と聞いても全然ピンとこないので、実際に体験してみました。
初心者の私でもちゃんと注文できるのか
①先にアプリをダンロードする

お店を利用するためには自分の携帯にカフェアプリをダウンロードする必要があります。HPから簡単にでき、支払い方法は、クレジットカードや電子マネーなどを登録します。すると自分のQRコードが作成されます。
②アプリで商品を選ぶ

お店に行く前に注文します。メニューは基本的にドリンクのみで、タピオカドリンク、マンゴーソーダなどさりげなく女子ウケするものもあります。せっかくなので「グリーンアップルティーソーダ」というあまり見たことのない飲み物を選びました。
③受け取り方法を選ぶ
「受け取りカウンター」「テーブル席に届ける」を選択できるので、テイクアウトの場合は「受け取りカウンター」を選び、イートインの場合は「テーブル席に届ける」を選びます。

④来店して受け取る or イートイン

基本的に注文を受けてすぐ作り始めるので、お店に着く直前にオーダーするのがポイントです。行く前の日とか5時間前とかにフライングしてオーダーしてはいけません。カウンターの場合はそのままカウンターで受け取りますが、イートインの場合はテーブルに着席後、卓上にあるQRコードを読み取ります。
⑤スタッフが運んでくれる

するとスタッフが自分のテーブルに商品を運んでくれます。本当に店員さんと会話をすることなく商品を手に入れることができました。

スタバのレジでの「今日暑いですね」「この商品お好きなんですね」みたいなフレンドリーな声がけが苦手なコミュ障には有難いですね。
カップになんか書いてあります。おお、スタッフ手書きのメッセージではないですか。いきなり人の温もり感じました。
物販もキャッシュレス、レジレス!!
こちら、カフェだけではなく物販もあります。店内にお菓子を販売するコーナーがあり、もちろんキャッシュレス。実際に体験してみましょう。
①入り口のバーコードに自分のQRを読ませる
自分専用QRをここでも使用します。入り口の機械にピッと読ませて、自分が入店したことを認識させます。
物販スペースにはクッキーやスナック菓子などさまざまな商品が並んでいます。
手に取るとモニターにその商品が映し出されます。あまり意味はないですが、なんとなくすごいですね。
あら、デザートなんかもあるみたいですよ。詳しいことは省略しますがこのお店は他のカフェをそのまま居抜きで使っており、スタッフもそのまま働いているのだそう。なのでデザートは本格派です。
②商品を手にとってそのまま出る
商品を手にとってそのまま物販コーナー出口から出ます。まるで万引きしている気分ですが、ここでもう購入が確認され、支払いも済んでしまっているのです。


なんでこんなことが可能なのか

このウォークスルーの仕組みはかなり複雑です。まずお客さんをAさんとします。入店した時にQRをかざしたことで、Aさんが入店したことが認識されます。
「Aさんがゼリービーンズの棚の前にいる」+「ゼリービーンズの棚の重量が1個分減った」という情報がクラウドに届きます。
「Aさんが退出した」という情報が届き、Aさんのアプリから自動で代金が支払われます。ちなみにこのQRコードはワンタイムトークンで生成されており、時間が経つと無効になります。こうすることで、QRコードが他人に悪用されることを防いでいます。

天井に沢山のセンサーが付いていますね。TOFセンサーと呼ばれるのですが、このセンサーの赤外線照射によってAさんの位置情報が常に認識されます。

Aさんの位置情報はクラウドに送られます。このモニター画面を見ると、センサーが読み取ったAさんの動きが表示されています。Aさんがどの棚の前にいるかが認識されているのです。

個々の商品は重量が登録されており、棚の下に重量センサーが付いています。商品を1つ手に取って出ると、位置情報と連動して、「Aさんがこの商品を1つ持って退出しました」という情報が即座にクラウドに送られ、Aさんのアプリで決済が行われるという仕組みです。
「でも、AさんとBさんが同時に入店して、Aさんの前の棚の商品をBさんが取って出たらどうするんですか」と広報の圡肥さんに意地悪な質問をしてみましたところ、「実はそんなミスの恐れもあるので、現在は一人ずつのご利用に制限しています」とのこと。今後の精密化に期待しましょう。
正直、アプリをダウンロードしてQRを読み取らせて商品を購入するのは面倒だな、レジがあってもこっちは困らないんですけど…と思いましたが、要は作業の効率化による人手不足解消が狙いなのですよね。
また、現金を扱わないことによって「レジ閉めの作業」も削減でき、スタッフの閉店後の負担がかなり減るという効果があるのです。
単に作業を簡略化するだけではない!
しかし! ここで重要なのが「仕事を減らして人間の作業を簡略化する」のが狙いではないということ。圡肥さんによると、「作業が減った分、きちんと質の高い接客ができることが大事なんです。機械ができることは機械に任せて、人間ができるサービスに力を入れる。むやみに無人化するということではなく、お客様のストレスをなくしてより便利に、快適にご利用いただくのが狙いです」
なんと素晴らしい! 確かに、このカフェってこんなにキャッシュレスとかウォークスルーとか言ってますが、ちょいちょい「人のあたたかさ」を随所に感じます。カップに書かれたメッセージもそうですし、スタッフも笑顔で感じが良いです。
ブルボン商品が充実している理由が意外すぎた
しかし物販コーナーには「ルマンド」「ルーベラ」「ホワイトロリータ」などブルボンのシリーズが謎に充実していますが、これ何でです? かと、圡肥さんに聞いてみましたら、「クラスメソッドの社内で、『ブルボンといえばルマンドだよね』『いやバームロールだろ』という論争があり、ついにデータ分析・可視化ツールの導入支援を行うという本業の強みを生かして『ブルボン総選挙』という投票を社内で行うことになりました。そこで、このカフェでの売れ行きも集計結果に加えようということになり、全種置くことになったんです」
そんな理由!?
しかも同社では毎日誰かが票を稼ぐためにブルボンのお菓子を買ってくるため、社内は常に「ルマンド」「ホワイトロリータ」だらけだそうです。
いやあ、クラスメソッド社、やっていることは超テクノロジー系なのに、意外とヒューマニズム溢れまくってます。てっきり社内はロボットみたいな無機質な人ばかりかと思っていたので、なんだか微笑ましくて好感が持てました。
カフェのお客さんも、バリッバリのビジネスマンばかりかと思いきや、近所のおじいちゃんおばあちゃんが意外と多いのだとか。アプリさえダウンロードすれば、現金を持ち歩かずに済むので楽なのだそうです。さすがアキバシニアは違いますねえ。
そもそもこのカフェは、同社の社長がアメリカに行ってAmazon GOに感動し、うちでもやりたい! と考えたところから手探りで始めたそう。なんとカフェの川を挟んだ真向かいに会社があります。「社内でもリモートワークを認めているので、社員が自分たちの使いやすいカフェが欲しいなーという思いから作られたお店でもあります」と圡肥さん。
いろいろ人の思いが重なってできたんだなあ〜と感動させられました。無人化によって逆に人の温もりの大事さを知る。「Developers.IO CAFE」はハイテクを超えたハートフルなカフェでありました。
「Developers.IO CAFE」 ■住所:東京都千代田区神田須田町2−25 Gyb秋葉原 1F ■アクセス:JR・東京メトロ 秋葉原駅から徒歩5分 都営地下鉄新宿線 岩本町駅から徒歩3分 ■営業時間:月曜日〜金曜日 10:00〜18:30
取材・文・写真:猫田しげる
1979年北海道函館市生まれ。京都のタウン誌、北海道の新聞地域面、東京の街歩き雑誌、旅行本などの編集・ライター業に従事。2019年4月から拠点を札幌に移動し、ウェブライターとしてデカ盛りから伝統工芸まで幅広い分野で執筆。弱いのに酒好きで、「酒は歩きながら飲むのが一番旨い」が人生訓。