「進撃の巨人展FINAL」の目玉はまだ見ぬ最終話の音声展示 | FRIDAYデジタル

「進撃の巨人展FINAL」の目玉はまだ見ぬ最終話の音声展示

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東京・六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーにて「進撃の巨人展FINAL」の後期展示が5日にスタートし、開場時点で120分待ちになるほどの大盛況だ。

2009年に別冊少年マガジンにて連載が始まった『進撃の巨人』の、10年の軌跡を約180点以上もの原画で振り返ることができる大型展覧会。最終話に向けてさらなる盛り上がりを感じさせる本展も残すところあと1ヵ月を切った。

訪れた人々で賑わう、終了目前の前期展示中の会場に潜入。本展および2014年に上野の森美術館で開催された「進撃の巨人展」の総合プロデューサーを務めた関俊作氏(株式会社電通)の解説を交えながら紹介していく。

総合プロデューサー・株式会社電通の関俊作氏
総合プロデューサー・株式会社電通の関俊作氏

壁の中か? 外か? 選択から始まる君の物語

オープニングシアターに立つとアルミンによる案内が始まり、迫られるのが<人生の選択>だ。壁の中の世界と、壁の外の世界、どちらの入口から入るかによって次の原画展示ゾーン<壁の世界>の内容が異なる。

オープニングシアターでの、壁の中に進むか壁の外に進むかの選択
オープニングシアターでの、壁の中に進むか壁の外に進むかの選択

<壁の世界>では、壁の中を選択すればエレン達、壁の外を選択すればライナー達の、子供時代から現在を描いた原画で彼らの歴史を追うことが可能だ。壁の中と外で育った子供達の人生が交錯し、やがて巨人同士の激しい戦いとなる。

原画からは細やかな線や、臨場感やスピード感を出すため散らされたホワイトなど、印刷後のページからはわからない立体感がわかるはず。時には試行錯誤の跡が見てとれることも。

「オープニングシアターでの、壁の中に進むか壁の外に進むかの選択に象徴されるように、今回の展示は『これは君の物語』であると同時に『恐怖』、さらにはもっと普遍的なテーマも含んでいます。

『人が生まれてくること』や世の中に対する自分のあり方、正義とは何か。前回の展覧会では原作の9巻までの内容で、その先のストーリーについては触れませんでした。今回は先の物語も含め、エンターテイメントとして楽しみながら巨人の謎やキャラクターについて深部に降り立てるように構成しています」(総合プロデューサー関俊作氏 以下同)

さらに進み、過酷な戦いを描いた原画を展示している<衝突と死闘>のゾーンでは、突如として降ってくる巨人群が頭上に現れる。これを見ている最中に筆者の後方から「うわっ何これ!?」といった声が聞こえたが、まさにその通りで、壁の中にいた人々の目の前に巨人が現れた時の驚きを味わえる仕掛けだ。

「2014年の『巨人展』で、編集の川窪慎太郎さんが『デートでこの作品を知らない相手を連れて来ても楽しめるような、体感できるものをやりたい』とおっしゃっていたこともあり、今回も“体感すること”に重きを置いた企画を考えました」

立体展示<惨劇を伝える物たち>は巨人に破壊され荒廃した街並みのジオラマと、作中に描かれるアイテムを再現し、来場者はここで巨人の世界に降り立つことに。アニの指輪、ニシンの缶詰、海で拾った貝殻、リヴァイのスカーフなどが巨人の世界からこの世界に持ち込まれたかのようなリアルさでそこにある。後期は立体機動装置、ハンジのゴーグル、地下室の鍵が新たに展示され、登場人物達の痕跡をモノから辿れる。

このゾーンで体感できるもうひとつの展示が<ジオラマシアター「巨人大戦」>。20m超の大型スクリーンでは3DCGで制作された2種の映像を公開。上下左右とダイナミックなアングルから巨人同士の戦いを俯瞰しその激しさに息を飲む。没入感とスピード感があふれる立体機動装置での移動シーンは思わず体が前のめりになった。

「<ジオラマシアター『巨人大戦』>の映像は最後の最後まで粘って……オープン前日まで修正し続けていました(笑)。クリエイティブチームが頑張っていたので素晴らしいものができあがるとわかっていましたが、最後は立ち上がった映像を見てみないとわからないことも多くて。信頼し合えるスタッフだからこそできたことですね」

キャラクター解説と、彼らを象徴する名場面の原画をじっくりと見られる<英雄たち>は、複雑な彼らの関係性やそれぞれの生き様をクリアにできるので、時間の余裕をもって臨みたいゾーンだ。また、前期と後期で展示されている原画が異なるので、前期の展示を楽しんだ人も再び訪れて欲しい。

連載の最終話を音のみで表現した<音声展示>は、実際に足を運んで耳をすませてもらうほかない。巨人の足音、轟音、立体機動装置の音……わずかなヒントを頼りに想像が膨らむラストシーン。どんな想像をしたか、会場を出たあとに会話が弾むこと間違いなしだ。

「実はこれは編集の川窪さんのアイデアなんです。2014年の展示でVRヘッドマウントディスプレイ『Oculus Rift』を使った360度体感シアター”哮”で体験コーナーを設けたように、今回も自ら足を運ぶことでしか体験できないものを作ろうということで音声展示になりました。

賛否両論あるかもしれないし、来場していただいた方に評価を委ねる部分も多い。でも『行ってみないとわからない』って面白いですよね、やっぱり。チャレンジのある企画としてみなさんにも楽しんでもらいたいです」

<音声展示>の暗闇を抜けると真っ白な壁が10年分のネームで埋め尽くされ、一角で作者・諫山創のインタビュー映像も。作品に込めたもの、目指す場所、10年分の想いなどが語られている。

最終話目前のこのタイミングで楽しんでもらえる展示って何だろう? と考えた末に生まれたこの展示会は、読者の方々の人生に『進撃の巨人』という作品が何かを残すためのお手伝いができていると思います。ぜひお友達や恋人や家族と足を運んでください」

展示で『進撃の巨人』の深部に降り立ち、会場を抜け現実に浮上すると、連載が始まった第1話からずっと作品に圧倒され続けてきたことを心から実感させられた。連載初期、まさかこんな壮絶で壮大な物語になるとは予想していなかった。最終話を完走してからも、この心地の良い気迫に押され続けたい。

  • 取材・文川俣綾加

    福岡県出身のライター。漫画、アニメの取材記事や解説などを媒体を問わず執筆中。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せる POPの見本帳』『ねこのおしごと』のほか写真集『小雪怒ってなどいない!』(岡田モフリシャス名義)。

  • 撮影田中祐介

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