代償に肉体関係 “ひととき融資”の罠にハマる女子たちの実態
一度のSEXで50万円。カネを貸す代わりに性交渉を求めるヤミ金融の被加害者を直撃!
「一応、キミの写真撮らせてね。逃げたらどうなるかわかるよね」
「はい、わかります」
「オッケー、じゃあこっち向いて。あ、あとこれが今日の20万円ね」
「ありがとうございます……」
全裸でベッドの上に座り、こちらを見つめる女性(6枚目写真)――彼女の名はミコトさん(21)。半年前、ホストに狂い200万円の借金を抱えた。いまは、月に一度の肉体関係を持つことを条件に、一日0.3%の金利で不動産会社勤務の男性W氏(38)からその全額を借りている。
「ひとときを過ごす」=「肉体関係を持つ」ことを条件に、男性が女性に金銭を貸し付ける「ひととき融資」。冒頭の会話は、その「ひととき」後に交わされた実際のやり取りである。
「儲かるしやれるし最高」
いま、「ひととき融資」というワードがネット上で蔓延している。これは、性交渉を条件に、女性が男性からカネを借りるシステムだ。明日にでも数十万円単位の多額のカネが必要なのに、正式な金融機関からは融資を受けられないフリーターなどの女性が、主なターゲットになる。
個人間の融資なので、その場で現金のやり取りを行うこともできる。また、たいていは担保も必要ない。その手軽さにより、多くの困窮した女性が飛びついてしまうのである。
巧妙な手口を使って女性のカネと身体を食い物にする男性の言い分は実に身勝手だ。冒頭の男性W氏は本誌の取材に応じ、「カネも貸してやってるし、むしろ女性から感謝されていいくらい」だと言う。
「セックスは合意のうえだし、俺の場合は金利も法律の範囲内。『ひととき融資』を始めたきっかけは、2年半前にネットでその存在を知って、俺もやってみようと思ったことですね。2年半でやれたオンナは20人。一度に10万~50万円くらい貸すことが多いかな。SNSで『ひととき可能です』って投稿しておけば、週に何人ものオンナからDM(ダイレクトメッセージ)が来るんですよ」
そんな彼のスマホには、融資を希望する女性から送られてきた自撮り写真が、200枚近く保存されている。
「『カネを借りたい』って連絡してきたオンナには、まずは自撮り写真を送らせて、顔が気に入った子とだけやり取りをします。切羽詰まってる感じの子のほうが、高頻度でのセックスを受け入れてくれるし、経済的に押さえつけて言いなりにしている感じがたまらないんです(笑)。この超低金利時代に上限いっぱいの年利109.5%でカネを貸せて、しかも女とタダでやれるってサイコーでしょ」
人の弱みにつけこむW氏。女性は、行為中の写真や動画を撮られたりすることで弱みを握られ、泣く泣く「ひととき」の苦痛な時間を過ごすハメになっている。
本誌は、そんな女性たちにも接触を試み、取材をすることに成功した。
都内の喫茶店に現れたのは九州地方から上京して1年半が経つ女子大生のアミさん(19)。一人暮らしを始めて韓流アイドルグループにハマり、CDやグッズを買い漁(あさ)った結果、クレジットカードの約50万円が返済不能になった。
「親には心配かけたくなくて言えなかったから、『食事だけでお金をくれるパパ』を探そうとパパ活サイトに登録したんです。でも、初めて会った42歳の自営業のイカツいおじさんが、『月一回セックスしてくれれば50万円を無利子で貸してあげるよ』って言うので、藁(わら)にもすがる思いで借りてしまった。先に学生証のコピーを取られてしまったので、逃げることもできなくなりました」
現在は男性と出会って3ヵ月目。コツコツ借金を返済し、残りは15万円になったが、その間、アミさんは3回も相手とセックスをしなければいけなかった。
「正直言うと、おじさんとのセックスはすごく辛いです。さすがにアブノーマルなプレイは要求されたことないけど、キスとかすごく気持ち悪い。早く返したいけど、返し終わった後も学生証の写真を悪用されたりしそうで怖いんです」
もう一人の被害者、ノリコさん(26)は、都内でネイルサロンを開いたばかりだ。サロンの開店資金が80万円足りず、「ひととき融資」に手を出してしまった。
「フリーターだった私は正規の金融機関からお金を貸してもらえなかった。そこで、SNSや掲示板で『お金貸します』って書き込みしている人に片っ端から連絡を取ってみた。そしたら無担保で貸してくれる人は全員『ひととき』が条件でした。仕方なく、二人の男性から50万円と30万円を借りた。無利子無担保とはいえ、完済まで二人合わせて2週間に一回はセックスしなきゃいけない。何とか堪(こら)えてますが、自尊心を踏みにじられて、悔しくて毎晩泣いています」
借金の返済が終わっても、「肉体関係を持っていた」という事実をダシに、女性をさらに利用しようとする男性もいる。
「男性の中には、性行為の際に撮影した写真をちらつかせ、借りた以上の金銭を要求してきたり、過剰な肉体関係を強要してきたりする人もいる。女性は、カネを借りているという後ろめたさ、写真や動画を拡散されるかもしれない恐怖心などから、警察や弁護士に相談できないケースも多い。表に出ている話は氷山の一角だと言えるでしょう」(アトム市川船橋法律事務所の高橋裕樹弁護士)
「ひととき融資」を行うと違法性を問われる可能性も十分にある。
「不特定多数の相手に融資をする場合、法律上は行政に登録をしなければいけません。その登録をしなかったり、法定金利以上の金利で融資を行ったりすると出資法違反などの罪に問われます。また、抵抗が難しいと思われる相手に対し性交を行った場合は、準強制性交罪に問われることもあります」(高橋弁護士)
実際、今年6月にも、ネットで知り合った女性複数人に対して肉体関係を条件に行政へ未登録のまま現金を貸し付けたり、上限金利の2~8倍にあたる利息を受け取ったりしたとして、大阪府千早赤阪村元職員の藤田祐被告(36)が出資法違反などの疑いで逮捕されている。
このような理不尽な金銭の貸し付けばかり行っていると、逆に女性側から借金を踏み倒されたり、違法行為を逆手に脅されたりすることもある。悪事を働けば、必ず天罰が下されるのだ。
『FRIDAY』2019年8月16日号より
- 取材・文:奥窪優木
フリーライター
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。 ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。20帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿。著書に『中国「 猛毒食品」に殺される』(扶桑社)など。