「ドラッグストア戦争」に乗じて“オイシイ思い”をする方法

ウェルシア、マツキヨ、スギ薬局…。「仁義なき戦い」が始まった

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ウエルシアはイオンと手を組んで、全国制覇を狙う。

本誌記者が住む東京・豊島区の東長崎駅前に、最近、マツモトキヨシとウエルシアが相次いで出店した。元々あった店舗も含めて、駅の近くにドラッグストアが5軒。競争がますます激しくなっている。こんなに増えて、経営は大丈夫なのか――。流通ジャーナリストの石橋忠子氏が解説する。

「ドラッグストアは全国で2万店を超えますが、これから数年はまだ店舗数が増えていく見通しです。スーパーやコンビニなど異業種との競争も激化していきます。専門性と利便性の2つを兼ね備えていないと生き残れないでしょう。

専門性とは、ドラッグストアが地域医療の拠点となっていくことです。具合が悪くなると、まずは近所のドラッグストアに行き、薬剤師に相談する。薬剤師は市販薬で対応できるのか、医師に診察してもらうほうがいいのかを判断し、また食事などの指導もして、健康相談の最初の窓口になるのです」

ただし、薬は日常的に必要になるわけではない。そこで各社、コンビニやスーパーのように日用品を販売して利便性を高めている。ドラッグストアがティッシュペーパーなどの日用品から、近年では生鮮食品や美容品のプライベートブランド(PB)商品までも取り扱うようになったのがその表れだ。

大ヒットのヌルねば食品

ドラッグストア業界の専門誌『ダイヤモンド・ドラッグストア』副編集長の小木田泰弘氏がこう分析する。

「ドラッグストアは大まかに、郊外に店舗を構えて医薬品から食料品まで幅広く扱う大型店舗と、都心のコンパクトな店舗の2種類に分かれます。たとえば、マツモトキヨシは比較的都市部に店舗が多く、一方、ツルハドラッグは郊外にお店が多い。ウエルシアは郊外と都心、どちらもバランスよく出店しています。とくに、ウエルシアは健康に配慮した食品への取り組みがすごい。たとえば、横浜薬科大学と協同開発したプライベートブランドの『食べるヌルねば生姜スープ』(537円・税込み、以下同)は昆布やオクラなど、9種類のヌルヌルねばねばする食材を使用し、大ヒット中です」

ウエルシアは親会社イオンと提携して全国で攻勢を仕掛ける。地域社会への溶け込みも同社の特徴で、店舗に「ウエルカフェ」を併設し、地元の非営利団体が地域の課題を話し合うことができるように場所を提供している。

あえてポイント還元しない

そのウエルシアを猛追し、直近の決算発表で売上高・店舗数ともに1位に躍り出たのが、北海道発祥のツルハドラッグだ。親会社のツルハホールディングスは、くすりの福太郎やB&Dドラッグストアを買収して傘下に収める。

「ドラッグストアはM&A(合併・買収)によって大きくなっていますが、会社によって戦略が異なります。ツルハグループは各地域の有力チェーンを買収しても、相手の自主性を重んじて看板を掛けかえることをしません。ウエルシアはツルハと異なり、買収先の独自色を許さず、看板も掛けかえ、ウエルシアモデルに刷新します。

一方で、各社とも独自のPB商品の開発は積極的です。単に安い価格だけではなく、付加価値を足した商品に主軸を移しています。たとえば、ウエルシアは健康にも気を配った『糖質を抑えたクロワッサン2個入』(129円)が人気です。ツルハグループでは、『ラ・ヴィラ・ヴィータ』というブランドで3000円を超えるシャンプーやトリートメントを出しています」(前出・石橋氏)

ラ・ヴィラ・ヴィータはシャンプー一本が3456円と高価格だがリピート率が高く、累積出荷本数はすでに230万本にも上るという。

関東の人には馴染みが薄いかもしれないが、九州を中心に西日本で圧倒的な存在感を示すドラッグストアが、『ディスカウント ドラッグ コスモス』だ。売上高はツルハ、ウエルシアに続いて、第3位。今年から東京への進出を果たし、まずは渋谷区広尾に第1号店をオープンさせた(現在、都内は3店舗)。

「これまで西日本にしか店舗がなかったにもかかわらず、コスモスは顧客満足度指数で8年連続全国1位を獲得しているんです(日本生産性本部、サービス産業生産性協議会調べ)。人気の理由は、その安さです。『エブリデー・ロー・プライス』を謳(うた)い、特売セールをすることなく、いつ行っても安いことを実現しています。そのために、コスモスでは、あえてポイントカードを作らず、その分、1円でも価格を安くすることに回しています。すべての商品が安いのですが、とくに食料品が充実していて、2Lの水が66円で売られています(オンラインストアで、6本で398円)」(前出・小木田氏)

コスモスは今後、関東での郊外大型店の出店を拡大していく予定だが、近くにまだ店舗がないという人は、まずはネット通販で試してみてはいかがだろうか。

千葉発祥で、黄色い看板がお馴染みのマツモトキヨシは、インバウンド(訪日外国人)需要を取り込み、独自の攻勢を仕掛ける。同社は最近、次世代ヘルスケア型の新業態として「matsukiyo LAB」を手掛ける。ここでは簡単な血液検査や口腔内環境のチェックができ、管理栄養士のカウンセリングを受けた上で、顧客に合ったサプリメントを推奨してくれるという。

「マツキヨのサプリメントは低価格路線とは一線を画し、デザイン性も高く、管理栄養士が監修していて人気も高い。独自のブランドなので、価格競争をしなくていいのもメリットです。

ただ、’90年代から活発な広告宣伝と積極的な出店でドラッグストア業界のトップを走ってきたマツキヨですが、今は売上高で業界5位に甘んじています。そこで、業界7位のココカラファインと経営統合し、再び首位に返り咲きたい。しかし、そうなれば、かつての業界3位から6位に下がっているスギ薬局は上位陣の中で水を開けられてしまいます。なので、スギ薬局もココカラファイン争奪戦に参戦したという流れです」(前出・石橋氏)

インスタ映えも狙う

マツキヨとスギ薬局のどちらがココカラファインと経営統合をするかで、ナンバー1企業が替わり、業界地図が大きく塗り替えられる可能性があるのだ。そんなスギ薬局もまた、独自のサービスを展開し、地元・愛知から全国制覇を狙う。

注目はオリジナルアプリ「スギサポ」だ。「スギサポウォーク」では毎日の歩数管理ができ、歩くだけでポイントが貯まる。「スギサポイーツ」では食事管理、「スギサポデリ」では管理栄養士が考案した制限食が冷凍便で自宅に届く。

また、愛知県豊明市ではシニア層に向けたオンデマンド型の移動支援サービスを行っている。これは一回200円で病院やスーパー、市役所など行きたい場所に乗り合いで送迎してくれるサービスだ。

都市部では若者へのアピールも抜かりがない。今年4月にオープンした原宿駅前の「スギ薬局原宿店」では、インスタグラムやツイッターに投稿できるようフォトスポットを設置。それでいて、薬剤師や管理栄養士も配置され、ビジネスマンのメタボ対策からOLのダイエットまで、効果的なカウンセリングができるのが特徴だ。

各社がそれぞれにユニークなサービスを提供したり、価格競争をしたりする背景にはドラッグストア業界全体の危機感がある。流通アナリストの渡辺広明氏が解説する。

「ドラッグストアが提供する医薬品は、粗利が5割近くあります。その粗利を元に、飲料や食料品を格安で売るビジネスモデルなのです。ただ、一部を除いて医薬品はネット販売が解禁され、いずれ、コンビニでも医薬品が買えるようになるでしょう。そうなるとドラッグストアは経営が厳しくなるので、その前にスケールメリットを得ようと、M&Aが活発に行われているのです。

また、地方の中小スーパーは郊外の大きなショッピングモールのため閉店に追い込まれていますが、代わりにドラッグストアが生鮮食品を扱うことで業績を伸ばしています。しかし、今後、高齢者が車を運転できなくなると、国道沿いの店舗は売り上げが厳しくなる。今は好調かもしれませんが、将来的には楽観と悲観が入り混じっている業界なのです」

とはいえ、各社の覇権争いでサービスが向上するのは大歓迎。最寄りのドラッグストアを漫然と利用するだけではもったいない。少し足を延ばして、一番得をする好みのドラッグストアを見つけよう。

吉祥寺の商店街ではマツモトキヨシとサンドラッグが対面でガチンコ勝負を繰り広げる

『FRIDAY』2019年8月16日号より

  • 撮影蓮尾真司(ドラッグストア)

Photo Gallary5

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