本当の最終回へ「なつぞら」のリアルとその後を小田部羊一氏が語る

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――まるで最終回のようだった! と視聴者の驚きと感動を呼んだ朝ドラ『なつぞら』の8月10日放送分(114回)。

その幕切れは、ヒロインの奥原なつ(広瀬すず)と坂場(中川大志)、夕見子(福地桃子)と雪次郎(山田裕貴)の結婚式の集合写真のカット、という大団円感がいっぱい。「なつぞら最終回」がTwitterのトレンド入りをするほどだった。しかし、最終回(9月28日予定)に向け、なつには、さまざまな試練が待ち受けている。

『漫画映画 漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』の書影。カバーイラストは小田部羊一さん描き下ろし。単行本(四六判ソフトカバー): 240ページ 講談社刊 (2019年9月4日)

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ヒロイン奥原なつのヒント、モチーフとなったのはアニメーターの奥山玲子さん。そして『なつぞら』のアニメーション時代考証を手掛けているのは、奥山さんの夫であるアニメーターの小田部羊一氏だ。

おふたりは、おしどりアニメーターとして業界に知られていたが、妻が朝ドラ・ヒロインのヒントとなり、夫がそのドラマの考証に携わる、というのは、めったにないドラマとの関わり方だろう。『なつぞら』の終盤を控えて、小田部氏は近況を次のように語っている。

小田部羊一氏 撮影:村田克己

小田部:最近の僕は実に目まぐるしい日々を過ごしています。

アルザスで開催されたアニメーションの「ワークショップ」(18年11月)に講師として参加。19年は、欧州の「国際アニメーション映画祭」からたくさんの招待をいただきました。3月の「メクネス~」(モロッコ)、「モンストラ~」(ポルトガル・リスボン)。6月も「アヌシー〜」(フランス)を皮切りに3週間、映画祭を巡りました。そして8月末からはスイス国立博物館(チューリッヒ)の『アルプスの少女ハイジ展』に出席します。

今までの僕は、数年に一度、海外に行くか行かないかという程度でした。それがこうなったのには理由があります。

2017年、大病を患った僕は6月に救急入院し、退院は11月初旬でした。医者に命は保証できないと言われていたそうです。幸い生き延びることができ、改めて「生きている方が面白い」と思いました。何かの縁があって自分のところに来る面白い話は、できるだけ受けよう、という気持ちになったのです。

様々にいただいたお話の中でも、朝ドラ『なつぞら』との関わりは大きな出来事です。実は最初に『なつぞら』の話を聞いたのは、その退院のほんの数日後でした。「小田部さんにとって、面白い話だと思いますよ」と、東映アニメーションから電話があったのです。

(そして放送されている)ドラマの反響は大きく、奥山の母校(高校)での講演もさせていただきました。また、奥山の児童書が『新装版 おかしえんの ごろんたん』として復刊したり、紙芝居の『おばあさんとあひるたち』が初めて書籍化されたり、2冊の画集『奥山玲子アニメーション画集』と『奥山玲子銅版画集』も刊行されます。

――さらに『漫画映画漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』と題する書籍の刊行も決まった。これは奥山さんと小田部氏のおふたりを中心に、東映動画入社から、さまざまな先輩・同僚との関わり、作品創りの舞台裏といった、いわばリアル『なつぞら』を描いている。さらに東映動画を離れてからの作品創りやくらしなども、小田部氏本人や小田部氏・奥山さんを知るアニメーター、演出家にもインタビューをして構成されている。小田部氏が続ける。

小田部:(この本には)登場順で、ペコちゃんこと山下(中谷)恭子さん 勝間田具治さん、ひこねのりおさん、葛西治さん、池田宏さん、バブさんこと宮崎(大田)朱美さん。3人のアニメーターと3人の演出家が参加してくれました。

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演出家たちの証言(詳細)

・勝間田具治 『アンデルセン童話 にんぎょ姫』作画監督 奥山玲子との仕事…実写からアニメの世界へ/『アンデルセン童話 にんぎょ姫』、今明かされる実写パートの秘密/『にんぎょ姫』での作画監督の奥山さんとの共同作業/短い制作期間で見せた現場の意地/改めて思う、奥山さんとの仕事/勝間田さんから見た、小田部さんと奥山さん

・葛西治 『龍の子太郎』古巣に戻った夫婦を支えた東映動画スタッフ…『龍の子太郎』が動き出すとき/2人を迎え入れた「準備室」/はじめて語られる『龍の子太郎』メイキング/クリエイトコーナーと浦山監督/キャスティング秘話/葛西さんから見た、小田部さんと奥山さん

・池田宏 『空飛ぶゆうれい船』『どうぶつ宝島』からスーパーマリオの世界へ…はじめに/初めての出会いはアメノハヤコマ/お互い新人だった『空飛ぶゆうれい船』/アメリカ大使館で学んだ『ストーリーボード方式』/『どうぶつ宝島』から生まれた日本型アニメーションの「波」/池田さん、東映動画から任天堂へ/任天堂に小田部さんを呼んだワケ/奥山さんの本当にやりたかったこと/小田部さんの本当にやりたいこと

 

アニメーターたちの証言(詳細)

・山下(中谷)恭子 寄稿「懐かしい奥山玲子さん」

・ひこねのりお 「妖しい踊りと結婚の告白」…「おめでとう」が出会いの言葉/奥山さんからの突然の告白/『わんぱく王子の大蛇退治』、そして東映動画の思い出/ひこね夫妻から見た、小田部さんと奥山さん

・宮崎(大田)朱美 「奥山さんから続く女性アニメーターの路」…大田朱美さんから見た、出来たての東映動画と奥山さん/職場の思い出/びっくりした小田部さんの仕事ぶり/『太陽の王子ホルスの大冒険』と労働問題/奥山さんの道をかきわけながら進んだ、共働き生活/アニメーターを辞めて家庭に/宮崎さんから見た小田部さんと奥山さん/奥山さんから続くもの、そして得たもの

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小田部:池ちゃん(池田さん)からは、取材の前に「悪口、たくさん言うからね」と連絡がありました。池ちゃんの言葉を受けて、ペコちゃんとバブさんには「悪口でも良いから」と、僕から取材のお願いをしてみました。

お互い、人生この先、何があるか、という年になって、書いたり話したりしてくれる気持ちになってくれたのでしょうか。皆さん、本当によく引き受けてくれたと思います。感謝しかありません。

さて、どんな悪口が書いてあるか戦々恐々としながら読んでみたら、いっしょに関わった作品についても、それぞれの視点で自分の知らないエピソードがあったり、男性と女性では捉え方が違ったり、実に楽しく、興味深く読みました。

僕自身も長いインタビューを2回受け、かなりのことを追及されました。作品のことだけかと思ったら、恋愛のこと、生活のこと。「そんなことまで書かれちゃ」とも思いましたが、とても上手くまとめてくれました。

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小田部羊一インタビュー

〔Part 1〕”アニメーター”奥山さんのこと…「動画」と「童画」を」勘違いしてアニメーションの世界へ/毎日違う服、挑む同僚たち/『太陽の王子ホルスの大冒険』中傷画と鬼山さん/奥山さんの聞くもの、創るもの

〔Part 2〕”夢の工場”東映動画のこと…日本画からアニメーションの世界へ/東映動画での会社生活/東映動画という学校/

〔Part 3〕”パートナー”ふたりのこと…ペラっと/ダンスがきっかけ/いつも奥山さんが後押し

〔Part 4〕”夫婦回顧”さらに、ふたりのこと…長い道のりのスタート/産休明けの母乳/『ハイジ』キャラクター誕生秘話と25年目のスイス旅行/ぎっくり腰と『母をたずねて三千里』/”羊”と”玲”であんていろーぷ/日本文化と日本画を積極的に取り入れた『龍の子太郎』/強いけど、弱くてかわいい奥山さん/東京から京都へ。そして今にして思うこと。

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――朝ドラの『なつぞら』は「アニメーション草創期」を描いている。放送開始前(2月)のインタビューで小田部氏は次のように答えている。

小田部:僕自身は奥山をその通り描いたら、ちょっと気張った感じばっかり出るんじゃないかと思っていたんですよ。制作現場も今はすっかり変わってますから、当時を忠実に再現するのは無理だと思ってますし。

奥山は仙台出身で、ヒロインは北海道育ち。だから奥山の伝記じゃなくて、奥山を通して、当時のアニメーション業界の世界を描くということでいいんじゃないかと。その頃の東映動画にはディズニーを追い越せという気概があって、みんな大変だったけど楽しんでいたあの熱気とか、奥山や女性スタッフたちの仕事ぶりとか、そういう雰囲気が出ればいいなって。

小田部氏所蔵のアルバム。東映動画時代だけで10冊もある。書籍『漫画映画漂流記』には、このアルバムに保管されていた貴重な写真が数十点掲載されている。 撮影:村田克己

――書籍では、『なつぞら』に登場する「草創期」のリアルと、さらに「その後」のリアルが描かれているという。

小田部:『漫画映画漂流記』という題名の通り、僕は東映動画を皮切りに、たくさんのアニメーション制作スタジオを移り、任天堂にも行きました。奥山も会社や仕事を変えながらも、アニメーター、専門学校の教師、銅版画家と、常に絵に携わって来ました。

アニメーションを作ることは、「生きているように動かす」「命を与える」という意味の通り、なんて面白い仕事なんだろう、と思います。

ただ、どんな仕事にも、本気でやるからには苦しみや大変さがいっぱいあります。この本を読んで、若くても年を取っても、遊びにも仕事にも、これはおかしいぞ、と思うことに対しても、ぶつかってゆく力を持って欲しいのです。むしろ、そういう風にすると楽しいよ、ということを感じてくれたらと思います。

――小田部氏からのメッセージは、残すところ1ヵ月少しとなった『なつぞら』の内容にも関わるのかもしれない。朝ドラの『なつぞら』と、リアル『なつぞら』でありドラマが描く時代のその後も掲載されている書籍『漫画映画漂流記』。ドラマも書籍も、共に何が描かれてるのか気になるところだ。

「FRIDAYデジタル」は他メディアに先駆けて19年2月に小田部羊一氏にロングインタビューを実施した。4月1日の第1弾を皮切りに第3弾まで公開した記事は、そのインタビューの一部である。記事の大反響を受けて刊行したのが、書籍『漫画映画漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』である。本書は2月のインタビューを再構成し、8月に実施した2回目のロングインタビューも盛り込み、さらに奥山・小田部夫妻と同時代を開拓したアニメ―ション演出家3人、アニメーター3人のインタビュー&寄稿を加えて構成した240ページのボリュームとなっている。

『漫画映画 漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』の書影。カバーイラストは小田部羊一さん描き下ろし。単行本(四六判ソフトカバー): 240ページ 講談社刊 (2019年9月4日)

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