東海大大阪仰星 3人のリーダーが見据える「花園出場と全国優勝」 | FRIDAYデジタル

東海大大阪仰星 3人のリーダーが見据える「花園出場と全国優勝」

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3年生のリーダーたち。担当は左から、クラブの土岐爽和、チームの松井翔、ゲームの谷口宜顕
3年生のリーダーたち。担当は左から、クラブの土岐爽和、チームの松井翔、ゲームの谷口宜顕

「3人寄れば文殊の知恵」。あるいは戦国大名の毛利元就が示した「3本の矢」か。

高校ラグビーの名門、東海大大阪仰星を引っ張るのは3年生トリオだ。チームに知恵と強さを溶け込ませる。

仰星は冬の全国優勝5回。歴代5位の記録を持っている。

土岐爽和(さわ)、松井翔(かける)、谷口宜顕(よしあき)の3人にはクラブ、チーム、ゲームとその担当が決まっている。

クラブリーダーの土岐はフランカーだ。37歳のOB監督・湯浅大智の後に気づいたことがあれば話をする。

「人間として、クラブとして成長すること考えます。合宿をするなら宿舎のスリッパをそろえる、とか、風呂場やトイレをきれいにする、とかですね」

愛されるチームになるために、仰星がどうあるべきかに心を砕く。土岐はJAXA(宇宙航空研究開発機構)で働く夢を持っている。

チームリーダーの松井は目の前の試合に勝つことだけを考える。

キックオフからグラウンドの中で判断を下すのはこのスクラムハーフだ。試合前、サイド選択のコイントスにも出て行く。

「3人で話し合いができることは貴重です。間違っている方向には進みにくいと思います。社会も三権分立で成り立っています」

松井は内閣、国会、裁判所がチェックしあうこの国のシステムを引き合いに出す。

ゲームリーダーの谷口は競技をつきつめる。

「例えば、キックだとその使い方です。普通に蹴るのではなく、ひと工夫を考えます。1回ポイントを作って、逆方向とかですね」

日本はもちろん、世界のラグビーを映像で見て、ヒントを探す。

「勉強があるので、1日1試合を見られたらいいほうです」

谷口は1年からフルバックでレギュラー。昨年からセンターに上がった。U17日本代表。国際的な可能性を秘めた選手にふさわしい分野を任されている。

3人リーダー制は反省が創り上げた。

昨年、最初は主将ひとりだった。フランカーの良田陸斗(現立命館大)がその任についた。湯浅は振り返る。

「こちらが悪いのですが、責任を背負わせ過ぎた。秋になって疲弊してしまいました」

シーズン本番を迎え、スタンドオフの坂原春光(現関西学院大)とセンターの堀田恒司(現天理大)をリーダーに格上げして、良田の補佐をさせたが、結果は出なかった。

年末年始の全国大会の連続出場は5で途切れる。大阪府予選決勝では、常翔学園に7-54と大敗した。

この黒星は同校初の連覇をも吹き飛ばす。今の3年生が1年生の97回全国大会では全国制覇していた。

保健・体育教員でもある湯浅自身にもその指導に反省がある。教育的配慮から初秋まで上級生を使ったが、よい方向に導けなかった。

「細かいティーチングを怠りました。生徒たちをコーチングが施せるところまで引き上げてあげられませんでした」

湯浅はそれぞれを説明する。

「ティーチング(TEACHING)とは基本的なプレーや戦術を教え込むこと。コーチング(COACHING)はそれを土台にして生徒たちに気づきを与えることです」

相手のレベルに応じて、下げることも必要だと知る。ここまで来い、ではなく、降りていく。自分中心ではなく、選手中心。習熟度を確認する大切さを学ぶ。

日々の練習メニューは張り出すようにした。

「準備をして下さい、っていうことです」

ミーティングでは問題となるプレー映像を見せ、3人ひと組で解決策を1分間で話し合う。学年もうまさもばらばらだ。答えはあえて示さない。試合中における選手たちだけでの対応力を上げていく。

新チームは結果を積み上げている。

春の第20回選抜大会では 予選リーグを勝ち上がり、決勝トーナメントに進出する。1回戦(準々決勝)で御所実に14-26で敗退するも、勝者は準優勝した。

御所実には選抜の予選となる近畿大会では36-12と勝利している。

4月から5月の大阪府総体では、準決勝で前年度、冬の全国を初めて制した大阪桐蔭に12-33で敗れた。それでも、3位決定戦では関大北陽に35-7で快勝する。

11月から本格的に始まる全国大会府予選は抽選の結果、第3地区のAシードに入った。大阪は開催県枠を含め3つの出場枠があるため、3ブロックに分かれる。順当に行けば、決勝でBシードの関大北陽と再戦する。

湯浅は目標を口にする

「まずは全国出場、その上で全国優勝です」

昨年と同じ轍(てつ)は踏まない。

「目標は毎年同じです。勘違いしてはいけない。まずは自分で全国大会に出る」

今夏も例年通り二次の合宿を張った。

一次は7月28日から6泊7日の日程で大分・久住(くじゅう)に滞在した。一軍にあたるAチームは御所実などと試合形式の練習を行い、B以下のチームは朝から夕方まで数多くの試合をこなした。

「経験をつめてみんなよくなってきました」

湯浅は満足感を表現した。

二次は8月6日から10泊11日の予定だ。長野・菅平で春の選抜優勝校の桐蔭学園、東福岡など19校と試合をする。

「ボールを動かし、ラックを作らない」

谷口が表現する仰星のラグビーを磨き、2年ぶり19回目の聖地到達をまずは目指す。

  • 取材・文・写真鎮勝也

    (しずめかつや)1966年(昭和41)年生まれ。大阪府吹田市出身。スポーツライター。大阪府立摂津高校、立命館大学産業社会学部を卒業。デイリースポーツ、スポーツニッポン新聞社で整理、取材記者を経験する。スポーツ紙記者時代は主にアマ、プロ野球とラグビーを担当

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