吉本興業「闇営業監視人だった」元マネージャーが決意の告白

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ブラック企業吉本興業の実態
社長にはビンタをくらった

本誌記者のインタビューに応じる吉本興業の元エリート社員。言葉を選びながらの告白は4時間にも及んだ

「芸人というのはな、商売道具のオモチャやから。お前が出世するための道具として使っていったらええんや。ボロ雑巾みたいに使えばいい」

焼き肉店で食事をしていると岡本(昭彦)社長は、私にそう言い放ち、

「一部のメンバーにだけ気を遣ったらええんや」

と付け加えました。すると同じテーブルにいた幹部たちは大爆笑したのです。この時から上層部に対する私の不信感が芽生えていきました。

<本誌の取材に対して、吉本興業元社員の男性A氏は、苦渋の表情を浮かべながらこう語り始めた。

A氏はかつて吉本興業のエリートマネージャーとして、日本人なら誰でも知っているような売れっ子芸人を何人も担当してきた人物。そんなA氏が、「闇営業」問題で揺れる吉本興業の「真の姿」を多くの人に伝えるべく、重い口を開いた。>

岡本社長の記者会見をテレビで見て、私は開いた口が塞がりませんでした。「吉本興業は全員がファミリー」と言っていましたが、あまりにも空々しい。社長はカメラの前だけ耳当たりのいいことを言って、本当は芸人さんたちを見下していた。そういう姿勢に私は憤りを感じました。

岡本社長が「芸人はオモチャ」と発言した焼き肉店での会食で、「さあ喰え、さあ喰え」と私は大量の焼き肉を食べさせられました。ご飯はマンガのような大盛り。肉は次々と鉄板の上で焼かれていったのです。

「吉本で働くには会食も大事だから鍛えなアカン。藤原(寛・副社長)なんか一日7回の会食を乗り越えてきたから出世したんやぞ」

と社長からは言われました。

私はこの日は朝から体調が悪く、なかなか箸が進まず途中でトイレに立ちました。席に戻ると、岡本社長は私に向かって、

「お前、食えるって聞いとったぞ。なんで食われへんねん」

と絡んだあげく、あろうことか頬をビンタしてきたのです。社長がすぐ手を出すことは社内で有名でしたが、いい大人が肉を食わないからという些細(ささい)な理由でビンタされるとは。やはりショックでした。

こうしたパワハラ行為は社内では日常茶飯事で、私はどんどん精神的に追い詰められていったのです。

多くのマネージャーは毎週月曜日に、前週1週間の勤務内容を上長に報告します。朝はスポンサーと打ち合わせ、昼間は収録の立ち会い、夜にはデスクワーク。月の労働時間は300時間を優に超え、一年にとれる休日は1週間もありませんでした。だからどうしても労働基準法を守っていないスケジュールになってしまいます。

しかし、会社としてはそれじゃまずい。だから、上長から勤務記録の書き直しを指示されました。働いていた日を「休み」に変えろと。月に1日も休んでいなくても、8日間の休みがあったと記入しなければ上長のOKが出ませんでした。

若手の芸人さんたちの置かれた立場も酷いものでした。吉本主催のイベントでは、絶対に収支をプラスにしなければならないと会社から厳命されていました。しかし、もちろん興行的に失敗するイベントだってあります。その際、シワ寄せを受けるのが、芸人さんや下請けのスタッフさんです。イベントによっては、芸人さんや外部の作家さんのギャラが0円なんてこともありました。だから、会社を通さない闇営業、直営業をやっている芸人さんはたくさんいましたよ。吉本主催のイベントに出演するよりもそのほうが稼げるのだから、仕方ないことだと思います。

変装して劇場で見張る

吉本は一連の闇営業報道で批判されたとき、「芸人の直の営業は元々認めているから問題ではない」といった趣旨の言い逃れをしていました。

しかし、吉本は所属芸人の直営業を見逃すような甘い会社ではありません。

会社は私たち現場の社員に指示して、芸人さんたちが吉本主催でないイベントに勝手に出演していないかを監視させていました。私も帽子をかぶり、メガネをかけて変装して、そういったイベントを調査していたのです。

そこで、会社に無断で出演している芸人さんがいないかチェックして、上長に報告する。「どうも~!」ってステージに上がった芸人さんと目が合い、「えっ!?」って顔をされることも何度かありました。

ほかにも、社内にはテレビ番組に出演する芸人さんの発言をチェックする担当社員がいました。芸人さんが少しでも吉本に批判的なことを言ったら、リストアップして上長に報告するんです。とにかく芸人さんの監視体制は陰湿でしたね。売れている芸人さんであっても、会社の悪口を言えば評価はダウン。(吉本興業HDの)大﨑洋会長や岡本社長にペコペコしない芸人さんは、なかなかギャラも上がらないのです。

私は担当している芸人さんのSNSも監視していました。吉本の悪口や不満などを書いているのを見つけたら、すぐに「何時何分に誰々がSNSにこういうことを書いていました」と上長に報告します。それを把握していないと、「なんでお前、発見できんかったんや」と、呼び出されて私が怒鳴られる。怒られるだけならまだマシで、左遷させられることもあります。だからやらざるを得なかった。

ただ監視業務をするにあたって、気をつけなくてはならないこともあります。

闇営業やSNSでの会社批判を見つけたら、呼び出して注意する前に、その芸人さんが松本人志さんに可愛がられているかどうか調べないといけないのです。

なぜなら、(松本さんと仲が良い)彼らを呼び出して小言を言えば、すぐに告げ口されて、「問題のあるマネージャーがおる」と松本さんや社長に伝わってしまう。すると社員のほうが飛ばされてしまうこともあり得るのです。

社員を信じていない

会社が監視しているのは芸人さんだけではありません。社員も監視しています。

たとえば、「社内の会議室に盗聴器が仕掛けられている」というウワサが社員の間でまことしやかに囁かれていました。岡本社長は入社式のとき、新入社員にも、「テープ回してないやろな?」というようなことを言っていました。盗聴が当たり前になっているんだなと感じましたね。

マスコミに吉本の批判記事が出ると「犯人探し」を徹底的に行います。ネタを漏らしそうな怪しい社員がリストアップされ、役員主導で調査が始まります。私もまったく身に覚えのないことで役員に呼び出されて、1対1で唐突に「これ知らんか?」と問い詰められました。会社は社員のことをまったく信じていないのです。

私が会社を辞める際には、人事部のトップに呼ばれて、こう言われました。

「もう君は会社の人間じゃない。同期や上司で会社を批判したり、週刊誌に情報を漏らしている奴はいなかったか?」

吉本ではみな、不満を漏らしたら、同僚から上長にチクられるのではないかと疑心暗鬼です。だから仕事の悩みを誰にも相談できない。岡本社長、大﨑会長、松本さんのラインに気に入られなければ、社内で出世も望めません。それもあって30歳前後で同期の半分以上は辞めてしまい、中堅の人気芸人さんと対等に付き合える30~40代の社員が少なくなる。20代の社員は芸人さんと会社の板挟みで、本当に苦しんでいると思います。

私自身、上長から恒常的にパワハラを受けていましたが、相談できる人は社内に一人もいませんでした。上長からは私物のカバンやパソコンを投げ捨てられ、「お前、会社から消すぞ」と恫喝(どうかつ)されたこともあります。吉本に在籍していた当時はストレスで血尿が出たり、円形脱毛症になったりしました。こういったことの積み重ねで、追い詰められていきました。

<本誌は吉本興業に対して、A氏が証言した岡本社長の発言やパワハラ行為、また闇営業を監視する業務について、事実関係を確認するために質問状を送付したが、期限までに回答は得られなかった。>

会社は「芸人ファースト」と言いながら、芸人さんたちを蔑(ないがし)ろにしており、私も闇営業の監視などやりたくもない仕事をさせられ、芸人さんたちを第一に考えて働くことができなかった。これが、「日本一のお笑い企業」を標榜する会社のまったく笑えない実情なのです。

藤原副社長は企業間の揉め事を穏便に収めることに手腕を発揮し、社内では「謝罪の天才」と呼ばれる
旧新宿区立四谷第五小学校の校舎を利用している吉本興業東京本部の社屋。吉本興業の東京進出を支えている
岡本社長の口下手は社内でも有名。だが、A氏をビンタした焼き肉店での会食では、酒を飲んで饒舌だった
大﨑会長は’09年の社長就任以降、社内では絶対的権力者として君臨。一般社員と会話を交わすことは少ないという
ふだんは「松本一派」と呼ばれる後輩芸人と飲み会を開くことが多い松本だが、この日はスタッフらしき男性と二人でカフェにいた(本誌’17年8月4日号より)

『FRIDAY』2019年8月23・30日号より

  • PHOTO加藤 慶(1枚目) 蓮尾真司(2〜4枚目) 時事通信社(大﨑会長) 坂口靖子(松本人志)

Photo Gallary6

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