渋野日向子の屈託のない笑顔に東京五輪「金メダル」が見える
全英オープンで42年ぶりのメジャー制覇の快挙
「まだプロテストに受かって1年だから、『メジャー出場はちょっと早いんじゃないか』という感覚を僕は持っていたんですけどね。それがまさか優勝してしまうなんて……ビックリしました」(渋野の高校時代のゴルフ部監督・田淵潔氏)
日本の女子プロゴルフから世界レベルの選手が誕生した。現地時間の8月4日、渋野日向子(ひなこ)(20)が海外メジャー初出場で、全英女子オープン優勝を果たしたのだ。’77年、全米女子プロゴルフ選手権を制した樋口久子以来、日本勢では男女通じて42年ぶりのメジャー制覇である。
「渋野選手のスゴさは、同じスイングを何度も繰り返せる再現性にあります。ドライバーもアイアンも常に同じスイング、同じタイミングで打てる技術がある。スイングそのものが綺麗なのはもちろん、どんな場面でも同じスイングができるというのは、プロでもほとんどいません。そのベースには、小学校の頃にプレーしていたというソフトボールで培った身体的な強さがあります。下半身が安定していて、左右のバランスがよく、スイングの軸がしっかりしている」(プロゴルファーの沼沢聖一氏)
渋野のコーチであり、今大会では彼女のキャディも務めた青木翔氏は話す。
「以前から、渋野の肩の強さや肩甲骨の柔らかさは、明らかに他の選手とは違うと感じていました。ですが、私がコーチするようになった時はまだまだ下手だったので、これまでの2年間、スイングを改造したり、構え方を一から作り直したりしてきました。今でも課題はたくさんある。身体作りも、今後3年で大きく変えていく予定です」
大会中、観客の心を摑んだのは、渋野の屈託のない笑顔だ。
「昨年まで、渋野には喜怒哀楽が表に出すぎてしまい、感情にプレーが左右されてしまうメンタル面の弱さがあった。それを克服するため、5月に優勝したサロンパスカップ直前の時期に、試合中どんなことがあっても意識して笑顔を絶やさないでいるようにアドバイスしたんです」(青木氏)
その後は7月に資生堂アネッサレディスオープンで優勝し、今回も全英で首位を勝ち取った。
「彼女は、笑顔でいることがメンタルに強い影響を与えると確信を持つことができたのでしょう。彼女だったら、来年の五輪で金メダルも十分あり得ると思います」(前出・沼沢氏)
東京五輪で金メダル――。渋野はそれが夢物語ではない領域まで近づいている。





『FRIDAY』2019年8月23・30日号より
撮影::蓮尾真司写真:Getty Images