星稜・奥川の熱投だけじゃない! 甲子園準決勝“戦前”展開予測

熱戦が繰り広げられた今大会も優勝は履正社、明石商、中京学院大学中京、星稜の4校に絞られた。ベスト4の激戦を専門ライターが分析する。

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8月17日の智弁和歌山戦で延長14回、165球を投げ切った星稜の奥川恭伸。翌日の仙台育英戦は登板回避。星稜は温存したエース奥川を先発させ、準優勝した’95年以来2度目の決勝進出を目指す

今夏の甲子園を初戦から観戦しているスポーツライターがいる。筑波大学大学院で野球の動作分析を研究し、高校や社会人など年間300試合以上を取材する西尾典文氏だ。8月20日にいよいよ準決勝を迎える今大会。勝ち残った4チームのこれまでの戦いぶりを振り返りながら、西尾氏が“戦前”の展望予測をする。

履正社(大阪)vs明石商(兵庫)

4試合で34点の強力打線と徹底した監督の分析力が激突

第1試合は近畿勢同士の対戦。履正社は、ここまでの4試合で34得点を挙げている打線が最大の強みだ。鈴木寛人(霞ケ浦)、前佑囲斗(まえ・ゆいと、津田学園)、谷幸之助(関東一)といったプロ注目の本格派投手をことごとく攻略するなど、勝ち残った4チームの中でも攻撃力は間違いなくナンバーワンである。キーマンとなるのが1番の桃谷惟吹(ももたに・いぶき)と4番の井上広大だ。桃谷はこれまでの4試合の第1打席で全てヒットを放っており、チームに勢いを与えている。桃谷が作ったチャンスを池田凜、小深田大地の二人が広げ、井上が帰して大量点を奪うという攻撃が確立できている。全4試合に先発して29回を投げているエース・清水大成の疲労が不安材料なだけに、序盤でリードを奪えるかがポイントとなる。

一方の明石商は3試合全てで1点差ゲームをものにしてきた。ここまで11犠打を決めており、3回戦の宇部鴻城戦ではサヨナラスクイズを決めるなど手堅く1点を奪う攻撃には自信を持っている。気になるのは投手の起用法だ。2年生エースの中森俊介が初戦で調子が上がらず、3回戦では登板を回避して、準々決勝でもリリーフでの起用となった。強力な履正社打線を相手に狭間善徳(はざま・よしのり)監督がどのような判断を下すかに注目だ。

これまで直接対決はないものの、両チームともコンスタントに近畿大会に出場しており、お互いをよく知り尽くしている相手である。特に明石商の狭間監督は相手チームを徹底的に分析することで知られており、履正社の各打者の特徴、エースの清水の癖なども頭に入っているだろう。戦力的には履正社が上回るが、接戦で終盤を迎えるような展開になれば、明石商に勝機が見えてくる。

中京学院大中京(岐阜)vs星稜(石川)

エース奥川先発なら絶対有利 強豪を連続撃破の打撃がどこまで奮起するか

星稜は3回戦の智弁和歌山戦で延長14回、165球を投げ切った奥川恭伸を準々決勝で温存できたことが非常に大きい。奥川はここまで25回1/3を投げて被安打はわずかに8で自責点0とほぼパーフェクトなピッチングを続けている。常時150km前後をマークするストレート、打者の手元で鋭く変化するスライダーやフォークはプロの投手を見ているようであり、体調に問題がなければ1点を奪うのも難しいだろう。3回戦まではなかなか繋がらなかった打線も、準々決勝では22安打、17得点と仙台育英を圧倒して調子を上げてきている。奥川が先発してしっかり試合を作れば、星稜が圧倒的に有利な状況といえる。

しかし、東海大相模、作新学院と近年の甲子園優勝校を続けて破った中京学院大中京も、チームに勢いがある。どちらの試合も7回以降に大量点を挙げて逆転しており、その集中打は見事という他ない。終盤勝負に持ち込むために重要になるのがやはり投手陣だ。3試合全てに先発している不後祐将(ふご・ゆうま)が星稜打線をしっかり抑え、これまでの戦い方と同様に早め早めの継投で最少失点に抑えることが、勝利への最低限必要な条件となるだろう。

戦力的に考えると全国でもトップの打線を誇る履正社と大会ナンバーワン投手の奥川を擁する星稜が有利であることは間違いない。だが、対する明石商と中京学院大中京もこれまでの戦い方を見ると、簡単に敗れ去るようなチームではない。一昨年優勝した花咲徳栄の岩井隆監督も「甲子園で優勝するためには実力以外の目に見えない力も必要」と話しており、前評判通りにはいかないのが甲子園なのである。果たして目に見えない力を味方につけて決勝に進出する2チームはどこになるのか。準決勝も熱戦に期待したい。

  • 取材・文西尾典文(にしお・のりふみ)

    スポーツライター。愛知県出身。’79年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

  • 写真時事通信社

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