「甲子園決勝」を完全分析 星稜・奥川の凄さと履正社の“勝機” | FRIDAYデジタル

「甲子園決勝」を完全分析 星稜・奥川の凄さと履正社の“勝機”

ともに初優勝を目指す星稜と履正社。エース奥川ばかりが注目されるが、履正社にも意外なアドバンテージがある。

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
準決勝の対戦相手・中京学院大中京を7回無失点に抑えた奥川恭伸。今大会の防御率は驚異の0。150km台の剛速球を武器に履正社打線に挑む
準決勝の対戦相手・中京学院大中京を7回無失点に抑えた奥川恭伸。今大会の防御率は驚異の0。150km台の剛速球を武器に履正社打線に挑む

いよいよ8月22日に決勝を迎える夏の甲子園。履正社(大阪)と星稜(石川)というどちらが勝っても春夏通じて初優勝という顔合わせになった。展開を占うのは、今大会両チームの戦いを観戦し続けてきたスポーツライター・西尾典文氏。筑波大学大学院で野球の動作解析を研究し、高校、大学野球を中心に年間300試合を取材する専門家だ。101回大会を制するのは、どちらのチームか。以下は西尾氏の分析だ。

選抜で奥川のボールを体感した履正社打線のアドバンテージ

まず、両チームの戦いぶりをデータで振り返ってみよう。

〇履正社
5試合 41得点 17失点 6本塁打 0盗塁 1失策 防御率:3.40
〇星稜
5試合 37得点 5失点 5本塁打 5盗塁 2失策 防御率:0.80

両チームで大きく差があるのが防御率。この要因となっているのが、なんといっても星稜のエース、奥川恭伸の存在だ。ここまで4試合に登板(先発は3試合)して32回1/3を投げて被安打10、45奪三振、5四死球、1失点(自責点0)で防御率は0.00という圧巻の成績を残している。3回戦の智弁和歌山戦では延長14回、165球を投げたことによる疲労が心配されたが、準決勝の中京学院大中京戦でも7回をわずか87球、被安打2で無失点とその影響を全く感じさせないピッチングを見せた。

今大会から準決勝と決勝の間に1日休養日が設けられたことも、奥川にとっては追い風となる。これまでと同じように奥川が投げられれば、星稜が勝つ可能性は極めて高いといえるだろう。

先頭打者として履正社の桃谷惟吹は、今大会5試合すべての初打席で出塁。本塁打、二塁打、単打、二塁打、三塁打と初回の“サイクル安打”を達成している
先頭打者として履正社の桃谷惟吹は、今大会5試合すべての初打席で出塁。本塁打、二塁打、単打、二塁打、三塁打と初回の“サイクル安打”を達成している

一方、履正社が勝つために必要不可欠となるのが投手陣の頑張りだ。そういう意味では、準決勝の明石商戦では2年生の岩崎峻典が見事なピッチングを見せて一人で投げ抜いたのは大きい。その前の4試合全てで先発していた、エースの清水大成を休ませることができたのは好材料だ。順当に考えると、決勝戦は清水の先発が予想される。

ポイントとなるのはその立ち上がりだ。先発した4試合中3試合で初回に走者を出しており、準々決勝の関東一戦ではいきなりスリーランを浴びるなど、不安定な投球が目立つ。今春の選抜1回戦で両チームが対戦した時も、初回に山瀬慎之助にタイムリーを打たれて1点を失い、それが決勝点となっている。今の奥川を相手に序盤に先制点を奪われることは、そのまま負けに直結することに等しいだけに、清水は序盤から全力で星稜打線を抑え込む必要があるだろう。準決勝で好投した岩崎もいつでも投入できるように準備が必要だ。

いくら投手陣が頑張っても奥川から点を取らないことには勝つことはできない。履正社打線の強みを挙げるとすれば、鈴木寛人(霞ケ浦)、前佑囲斗(津田学園)、谷幸之助(関東一)、中森俊介(明石商2年)とプロ注目の好投手を序盤に攻略していることである。どんな好投手でも立ち上がりというのは不安があるが、奥川も準決勝の中京学院大中京戦では先頭打者にヒットを打たれて出塁を許している。履正社のトップバッター桃谷惟吹(ももたに・いぶき)は、ここまで5試合全てで第1打席にヒットを放ち、そのうち4本が長打とチームに勢いを与えている。まずは桃谷が最低でも出塁して奥川にプレッシャーをかけたい。

もう一つ、履正社のアドバンテージを挙げるとすれば、選抜で絶好調時の奥川と対戦しているということだ。これまで敗れたチームの選手たちは「見たことのないボールだった」と語っていることが多いが、そのボールを一度見ているということは大きな経験である。また、その奥川を打つことを目標として取り組み、甲子園の決勝という最高の舞台で対戦できることで、チームの士気が最大限に高まっていることもプラスではないだろうか。序盤に奥川から1点を奪い、投手陣が踏ん張りながら数少ない追加点の機会をものにする、というのが履正社の勝利のためのゲームプランといえるだろう。

過去10年の決勝を見ると優勝候補同士の対戦というのは意外と少ない。そして過去3年は大差で勝負がついている。今大会は両チームが持ち味を存分に発揮し、終盤まで目の離せない熱戦となることを期待したい。

  • 取材・文西尾典文(にしお・のりふみ)

    スポーツライター。愛知県出身。’79年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

  • 写真時事通信社

Photo Gallery2

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事