コンクリ殺人・湊伸治 異常興奮でズボンも破れた傷害事件公判 | FRIDAYデジタル

コンクリ殺人・湊伸治 異常興奮でズボンも破れた傷害事件公判

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昨年8月、川口市の路上で、当時32歳の男性の肩を警棒で殴り、首をナイフで刺したという殺人未遂容疑で逮捕された湊伸治被告(46)。のちに傷害罪で起訴され、今年の2月からさいたま地裁で公判が続いていたが、8月22日、被告人質問が行われた。

湊伸治容疑者が男性を刃物で刺した事件現場。湊容疑者は近くのアパートに女性と住んでいたようだ
湊伸治容疑者が男性を刃物で刺した事件現場。湊容疑者は近くのアパートに女性と住んでいたようだ

湊被告の名を知らずとも、彼が未成年時に関わった凶悪事件を知っている者は多いだろう。その綾瀬・女子高生コンクリート詰め殺人事件とは、東京都足立区で当時16歳から18歳の少年らが、見ず知らずの女子高校生(当時17)を拉致したうえ、一人の少年の家に監禁し、強姦や暴行を繰り返したのち死亡させ、その遺体をコンクリート詰めにして遺棄した凄惨な事件である。逮捕された主犯格の少年AからDまでの4人に対し実刑判決がくだされ、服役ののちそれぞれ社会復帰していた。湊被告はそのうちの1人、女子高校生を監禁した家に住んでいた当時の少年C、当時懲役4年以上6年以下の不定期刑を受けた男である。

前回レポートした第二回公判の記事にも記したとおり、湊被告は昨年8月19日の夕方、川口市の路上において車に乗っていた男性Aさん(32)の顔面を拳で数回殴り、その後車を降りたAさんの右肩を警棒で殴ったうえ、車に乗って立ち去ろうとしていたAさんの後頚部をナイフで刺したという傷害罪に問われている。

これまでの法廷では、隙あらば弁護人に話しかけて自らの主張を伝え、また裁判官にも「意見いいっすか!」とたびたび話しかけてきた。この日、水色のポロシャツに、紺色の「LL」という布が縫い付けられたアシックスのジャージで現れた彼のテンションは最高潮だった。弁護人や検察官らの質問が終わらないうちから大声で話し始め「質問が終わるまでちょっと待って!」とたしなめられること数回。ときにふんぞり返りながら、同じく水色のタオルハンカチを手に持ち、身振り手振りを交えて自らの主張を述べ続けた。

「事件から15分くらい前、散歩してたんですけど、車から被害者Aさんと助手席のBさんが降りてきてた。近所の人が来たんだと見てたら、『おめえ、何見てんだ』って言ってきた。なんだこいつ、何言ってんだと思って、話してみたいと思って、ステップワゴンに警棒とナイフが入ってたんで、開けてそれをズボンの右ポケットに入れて、Aの方に歩いて行きました。

『おめえ、何見てるんだ、って何!?』って言ったら『おめえが見てるだろ』と言ってきたんでカチンときて、右の拳をまず出しました」

と、このような調子で繰り広げられた彼の言い分によれば、被害者から因縁をつけられたのでそれに応じる形でまずパンチを繰り出したが当たらず、逆に2人に取り押さえられ、Aさんからはフロントチョークで押さえつけられてしまったのだという。

これを身ぶり手振りで話していた湊被告。それに飽き足らず立ち上がり「このぐらい押さえつけられて……」と証言台の横でしゃがんだところ、法廷に「ビリッ!」という大きな音が響いた。

「あっ切れちゃった!」

と言い、席に座ろうとした湊被告のズボンは尻部分から股まで大きく縦に裂け、黄緑のパンツが見えてしまっていた。だが、それも意に介さず、椅子に座りまた話し続ける。

「2対1だし、このままじゃ勝てない。ユーチューブで警棒を使ってる人を見たことあったんでその真似をしようと。警棒を出した状態だとバレるので、閉じた状態でどうなるかやってみようと、正対した状態で振り下ろしたんですけど全く威力がなかったです。Aに左手で受けられた。反射神経がいいな、目がいいなと思いましたね。

そのあと俺が倒れて。でも気持ちだけは負けない。魂だけは死なねえぞと思ってました。立てるまで何回でも立つ。そういう心理で立ち上がって『おう』と言った。そしたら2人とも飛んできてぶっ飛ばされました。

こっちもヘロヘロで、気持ちだけで立ってて、体力もそんなにないからバテてるんすよ。だけど立ち上がり『おう』って言いましたね。そんな状況だったから何されたかよく覚えてない。でもそのあともう一回立ったんすよ、でもまた同じようにぶっ飛ばされた。家に戻ろうかと思ったけど、近所のやつにこのままやられたらバカにされるかも。ナイフで脅してやろうと、ナイフ開いて、見える状態にして、向かって行きました。ナイフでちょっとチクッとやってやろうかと」

そうしてAさんにナイフを向けたという湊被告。だが、Aさんが尋問で語ったように首の後ろを攻撃したのではなく「ツーブロックの髪の毛が残っている部分に刃先を入れた」だけだと大きな声で繰り返す。

「刺してない、止めてます! 刃先は髪のところ入ってる。当たった感触もないし、血も出てない」

逮捕当時、容疑を認めていたのは、家族の体の具合が悪く「早く出たいから妥協して認めたってだけです」という。だが納得がいかないと否認に転じたようだ。とはいえ、Aさんの首の後ろには刺し傷があり、写真などが証拠採用されているが、やはり湊被告は「刺してない」と、決してこれを認めない。

その理由を改めて弁護人が問いかけた際、湊被告はこれまでのマシンガントークから一転、わずかに口ごもったが、そのうち語り始めたのは“陰謀論”だった。

「それ言うと……難しいところなんすよ。いま、ディープステート、問題になってる。マスコミやCIA、諜報機関とかが悪い人間と繋がってたり、そういうことがあるんすよ。

国際金融資本家が金融を牛耳って、司法を牛耳り、マスコミも……諜報機関も、ネオコンとかそういう人たちと繋がって。日本は情報を流さないから知らないんですよ。

この人たちが何やってるかは知らないですよ、ただ状況証拠がネットで出てきてるんです。伊藤詩織さんのレイプ事件も、逮捕寸前にある人に電話したことでその人が逮捕を免れた。権力持った人がいるかどうかですよ。だからそこを言うか言わないか。難しいとこで」

湊被告は被告人質問の最後にもこう繰り返した。

「最初の弁護士にこの事件はおかしいと言ったんす。何言っても検察が拒否する。少年法改正とか、GPSを受刑者につけるとか議論起こってるからそっちじゃないかと話したら、その弁護士が少年法改正じゃないかって。そして警察は週刊誌を使って、更生の余地がないとか、悪くするような話を……俺が何やってきたのかも知らないのに、馬鹿らしい……」

少年時代に凶悪犯罪で服役したことがある湊被告を逮捕することで、国家が少年法改正に動こうとしているのだと湊被告は信じているようだった。10分の休廷を挟んではいるが、2時間ノンストップで話し続けた湊被告の論告求刑は、次回行われる。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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