最前線の舞台俳優・山本一慶「2.5次元」のこれまで・これから

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この10年ほどで一大ジャンルとして定着してきた「2.5次元」(2.5次元舞台、2.5次元ミュージカル)。現在では、様々なコミックやゲーム、アニメのタイトルが舞台化され、さらに勢いを増している。しかし、そもそも「2.5次元」とは何なのかが一般の人には分かりにくい。そこで、約10年のキャリアの間、「2.5次元」への出演を続けている俳優の山本一慶(やまもと・いっけい/30歳)に、「2.5次元」の魅力と可能性を語ってもらった。「2.5次元」の隆盛をステージの上から見続けている山本の言葉から、「2.5次元」の未来が見えてくる?

山本一慶:「2.5次元」で山本のファンになりストレートプレイの舞台を観に来る人も多いそう。「僕はそれがすごく嬉しいです」と語ってくれた。(写真:竹内みちまろ)

「2.5次元」とは?

――まず、「2.5次元」の定義を教えてください。

山本一慶(以下、山本):僕が解説するのはおこがましいのですが、簡単にいうと、コミック・アニメ・ゲームなどの原作の中にビジュアルを持つキャラクターがすでに存在していて、その作品を舞台化する際に、ビジュアルを含めて3次元の人間が原作(2次元)のキャラクターに寄せて芝居をした場合、その作品は「2.5次元」になるのかなと思います。なので、例えば、アニメを原作としても、原作の方を3次元に寄せて製作した場合、作り手側からすると「2.5次元」というよりは、いわゆるストレートな普通の舞台になったりします。

「2.5次元」は、ファンの方が「この舞台、すごい! 2次元でも、3次元でもないから2.5次元だ」と言葉遊び的な感覚で言い始めてくれたことで生まれた言葉だと思いますが、定義自体はすごくあいまいです。例えば、コミック化やアニメ化がされている作品でも、原作が小説だった場合、「2.5次元ではない」となる場合もあります。ただそれは一般の人にはわかりにくいですし、アニメやコミックが好きで舞台を観に来てくれた方にとっては、その作品は「2.5次元」でいいと思います。

出演する側としては、「2.5次元」であろうと、ストレートプレイのいわゆる普通の舞台であろうと、やることは何も変わりません。細かいことを言えば「2.5次元」にはならないとされる作品でも、一般の方が「2.5次元」と思ってくれているのなら、「2.5次元」という言葉を使ってどんどん紹介してほしいくらいです。まず何よりも、興味を持ってくれた方に1人でも多く劇場に足を運んでいただき、作品を観てほしいので。

今「2.5次元」は最新技術を惜しげもなく投入

――初めて出演した「2.5次元」の舞台作品は?

山本:「2.5次元」というジャンル分けがまだなかった時代ですが、『裏切りは僕の名前を知っている』(2011年)になると思います。そのときにすでに、「テニミュ」の愛称で知られる「ミュージカル『テニスの王子様』」は何年も公演を重ねていましたので、「2.5次元」という概念の土台のようなものは完成していたのではないかと思います。ただ、「2.5次元」という言葉はまだ浸透していなくて、僕が「テニミュ」シリーズに出演させていただいていた間(2012年~2014年)に、一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会が設立され、その頃から「2.5次元」という言葉が浸透していったように記憶しています。

――技術的には、「テニミュ」に出演されていた頃の「2.5次元」はどんな様子だったのでしょう。

「2.5次元」が紹介されるときによく、「テニミュ」で、映像と照明を使って実際には存在しないボールを表現し、それをテニスプレイヤーに扮する3次元の人間がステージの上で打ち合うことが紹介されますが、技術的なことを今と比べてしまうと、目の錯覚を利用して立体的にものを動かしたりなどということはなかったかもしれません。ただ当時は、普通に「面白い」と感じましたし、お客さんも感動してくれました。

――「2.5次元」の作品に出演する中で、「これは、すげえ!」と思ったことは?

2016年7月に上海で「ライブ・ファンタジー『FAIRY TAIL』」の公演をさせていただきました。今では当たり前になっているものですが、そのときに使った紗幕が、映像を投影し、そのうえで紗幕が透けて後ろにいる僕たちがお客様から見えるというものでした。スタジオで稽古を重ねている間は、正直にいうと、「ほんとに透けるの?」と半信半疑でした。でも、本番の映像を見たら本当に透けていて、そのときは、「すげえ!」と思いました。

今、「2.5次元」には、「そんなことが本当にできるのかな?」と思うような段階のものを含めて映像・音響・照明をはじめとする最新技術がどんどんつぎ込まれています。「2.5次元」だと、できたばかりの技術を試しやすいのだと思います。ステージの上で魔法を使って戦うこともできますし、武器を光らせたりすることもできます。技術の進化とともにステージの内容も進化しますので、「2.5次元」はこの先、誰も想像できなかったものが生まれるかもしれません。

山本一慶:幼いころから「僕もテレビや舞台に出る人になるのだろうな」と思っていたそう。(写真:竹内みちまろ)

海外の観客は「わあ、ジャパンだ!」と感動

――上海公演を行ったとのことですが、「2.5次元」の海外での反応はどうでした。

山本:すごく楽しんでいただけました。「2.5次元」の中には海外に発信されている作品もありますが、海外で公演されている「2.5次元」を観た外国人のお客様は、「わあ、ジャパンだ!」と感動してくれます。コミックや、アニメや、ゲームがあって、そこから「2.5次元」の作品が生まれるというのは日本独特の発想だし、日本人だからこそ始められたことだと思います。

私事ですが、今年の6月に上海で僕のファンミーティングイベント「山本一慶 バースデー・リサイタル2019 in 上海」を開催しました。「お客さんが来てくれるのかな……」と不安だったのですが、当日は、大勢の方が来てくださりました。「何で僕のことを知っているのだろう?」と疑問に思ったのですが、「テニミュ」や、中国でアプリが人気の「あんさんぶるスターズ」シリーズの「2.5次元」(「あんさんぶるスターズ!オン・ステージ」)で、お気に入りのキャラクターを僕が演じていて、それで僕のことを知ってくださった方が本当に多かったです。しかもみなさん、日本語を結構勉強しているんです。ビックリしました。日本のコミック、アニメ、ゲーム、そしてそこから生まれた「2.5次元」は、十分、海外に発信できるものなのだなと感じました。

突き詰めれば、「2.5次元」の魅力は、舞台の魅力

――「2.5次元」の魅力はどこにあるのでしょう?

山本:先ほど「2.5次元」でも、「2.5次元」ではない舞台でも、演者からするとやることは同じと言いましたが、「2.5次元」の魅力は、突き詰めれば舞台の魅力になると思います。

映画を映画館で観ることと、舞台を劇場で観ることの違いは、舞台では“生の人間が目の前で演じる”ということです。映画だと、例えば何かを表現する際に映像を使用したら、「映像を使っているだけじゃん」と言われてしまうかもしれません。ただ、それが舞台では、お客様が感じ取ってくれれば、例え映像で映し出しているテニスボールだったとしても、“舞台の上に存在するもの”として表現することができます。舞台上でキャストが力尽きて倒れた場面でも、お客様が「本当」と思ってくだされば、舞台の上では、登場人物が力尽きて“本当に死ぬ”ことになります。お客様は、“壮大な嘘”を見るために劇場に足を運んでくださることになるのですが、演者が芝居をし、お客様が感じ取ってくれることで“壮大な嘘”が“本当のこと”になります。舞台のマジックとでもいえると思いますが、それはとても素敵なことです。

舞台を観る時間は“非日常”の時間になると思います。映画やアニメでも“非日常”の時間は味わえますが、舞台は目の前で生の人間が演じているという時点で、“非日常”を“日常”にすることができます。僕は観客として舞台を観るときに、いつも不思議に思うのですが、例え後列にいたとしても俳優たちが目の前で演じてくれていて、気付いたら自分が舞台の上で観ているかのような気持ちになることがあります。

“嘘を本当に思う”って、平常心だったらできないと思います。それが、2時間ないし3時間のあの真っ暗な劇場の中だったら、嘘を作り上げることができます。僕はその時間が大好きです。舞台がもっと、もっと盛り上がって、たくさんの人が劇場に足を運んで、そこで数時間を過ごしてくだされば、日本人はもっと幸せになります。日本だけじゃなく、世界中が幸せになると思います。

山本一慶(写真:竹内みちまろ)

「2.5次元」はできたての言葉、浸透するにはもう少し時間が必要

――最後に、「2.5次元」に期待することを教えてください。

山本:僕は、「2.5次元」という言葉が生まれる前から俳優として「2.5次元」に携わり、その発展に立ち会えていることがすごく嬉しいです。もちろん、偏見を持たれたり、「チャラチャラやってる」と思われることもあるのですが、今後、それを払しょくするためには、スキルと経験がある人間たちがしっかりと「2.5次元」の舞台に立ち続けることが必要だと思います。

ひと昔前だったら、アニメも、ゲームも“悪いもの”で、「アニメばかり見たらダメ」とか、「ゲームはやめなさい」と言われていたと思います。それが今では、アニメは日本が誇るコンテンツになり、ゲームはスポーツとして認められ始めています。入り口はアニメでもマンガでも構いませんので、1人でも多くの方に劇場に足を運んでいただき、舞台の世界を体験してほしいです。

舞台は敷居が高いといいますか、ちょっと踏み込みにくいところがあると思います。その“踏み込みにくさ”をほぐしてもらうために、「2.5次元」という言葉を使って、「舞台は身近なものなのですよ」と伝えて行くことはすごくいいことだと思います。

「2.5次元」を観に来てくださるお客様の中には中学生の方などもいますが、若い子たちは、「2.5次元」という言葉を、普通に口にしてくれます。ただ、「2.5次元」はできたての言葉なので、業界の中でも賛否両論があることは事実です。「2.5次元? 自分たちがやっているものはそんな軽いもんじゃないよ」とおっしゃる方もいます。「2.5次元」という言葉を上手に使いこなして行くにはもう少し時間がかかるのかなと感じていますが、若い人だけではなく、世代を問わず、みなさんの普段の会話の中で「2.5次元でも見に行く?」と何気なく使われるような言葉になってほしいです。

***

気さくにインタビューに応じてくれた山本だが、幼いころから母親に映画館や劇場に連れて行ってもらい、映画や舞台を観ていたそう。高校卒業後に芸能の道に入り、舞台をはじめ、テレビドラマや映画にも出演し、声優としても活躍している。「“舞台俳優”と呼ばれることについてどう思いますか?」と尋ねてみると、「ぜんぜん構わないです。昔だったら考えられなかったことですが、今は俳優がアニメ声優をやったりなど、色んな業界をまたいで活躍することができる時代です。僕もいろんなことに挑戦していきたいと思っています」と話してくれた。

「2.5次元」には「誰も想像できなかったものが生まれる」可能性もあるとのことだが、「2.5次元」が今後どう発展していくのか、山本のますますの活躍とともに期待したい。

プロフィール:山本 一慶(やまもと・いっけい)1989年6月1日生、東京都出身。2008年にデビューし、ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズン、「あんさんぶるスターズ!オン・ステージ」、「メサイア」シリーズなどや、シェイクスピア作品にも出演する。声優としても活躍。趣味はサバイバルゲームで、俳優仲間と行くことが多いそう。

山本一慶:「2.5次元」で山本のファンになりストレートプレイの舞台を観に来る人も多いそう。「僕はそれがすごく嬉しいです」と語ってくれた。(写真:竹内みちまろ)
  • 文・撮影竹内みちまろ

    1973年、神奈川県横須賀市生まれ。法政大学文学部史学科卒業。印刷会社勤務後、エンタメ・芸能分野でフリーランスのライターに。編集プロダクション「株式会社ミニシアター通信」代表取締役。第12回長塚節文学賞優秀賞受賞。

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