楽天、ドコモは物量攻勢!「ポイント新時代」をお得に生き抜くコツ
増税前の今がチャンス! 読めば得するウラ技一覧表&ポイント新勢力図付き
かつてポイントは、それぞれの店やチェーンが独自に発行していた。そのため、サイフはカードで膨れ上がり、自分がその店の会員であるのかさえわからなくなったものだ。そのポイント業界に革命をもたらしたのが、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のTポイントだった。
160枚のカードを所有し、自在に操るポイントの達人、「ポイ探」代表の菊地崇仁氏がポイントの歴史を振り返る。
「Tポイントは’03年にTSUTAYAやエネオスでポイントが貯まるサービスとして始まりました。’07年にファミリーマートでも貯めたり使えたりするようになり、一気に利用者が増えた。今でもリアル店舗で最も加盟店が多い老舗です。
次いで’10年に登場したのが、Pontaポイントです。三菱商事が親会社となって設立されたため、関連会社のローソンや昭和シェル石油、ゲオの共通ポイントとして産声を上げました」
ただし、これらはコンビニを中心とした少額の買い物でポイントがつくだけだったため、利用頻度は高いものの、そこまで多くのポイントが貯まるわけではなかった。そこに殴り込みをかけたのが、楽天とNTTドコモだ。
「それまでは楽天市場などのオンラインショッピングで主に使われていた楽天スーパーポイントでしたが、楽天ポイントカードを発行し、’14年から実店舗でも使えるようにしたのです。翌’15年にはドコモが自社のドコモポイントをdポイントに改称し、これも実店舗で使えるようにした。本来、後発は不利なのですが、楽天もドコモも母体の事業規模が大きく、盛大なキャンペーンを張って攻勢を仕掛けています。
今年6月からはドトールがTポイントからdポイントに、スポーツ用品販売大手のアルペンもTポイントから楽天スーパーポイントに鞍替えをしました。さらに象徴的なのは、今年11月からファミリーマートに楽天スーパーポイントとdポイントが参入することです。これまでTポイントの牙城となっていたファミマでも、楽天やドコモのポイントを選べるようになります」(菊地氏)
今が大きなチャンス!
なぜ楽天やドコモにそこまでの勢いがあるのか。菊地氏が続ける。
「要は母体におカネがあるからです。両社とも去年1年間で約2000億円相当分のポイントを発行していると言われています(原則1ポイント=1円)。Tポイントを何千ポイントも持っている人はマレですが、楽天会員やドコモユーザーで何千、何万ポイントを持っている人はゴロゴロいます。そのユーザーが買い物に来ますよと言われると、企業側も無視できない。ファミマもセブンイレブンに追いつくためには、楽天やドコモと組むことが必要と考えたのでしょう。
さらに今年に入っても、楽天とドコモは月100億円相当のポイントを出している。PayPayが去年から100億円キャンペーンを行って話題になりましたが、あれを常時やっているようなもの。サラリーマンの人は、働き方改革で残業代が減っていますよね。なので、日々の生活の中でポイントを意識してみてください。チリも積もれば山となります。各社の競争が激化している今は、消費者にとって大きなチャンスなのです」
コンビニで6%還元も
楽天とドコモが優位になったのは、自前でQRコードによるスマホ決済サービスを持っていることも要因だ。楽天ペイやd払いと連動することで、さらにポイントが貯まりやすくなったのだ。
「楽天の強みは、ポイントを使った経済圏をうまく作り込んだことです。元々の軸はEC(ネット通販)サイトですが、楽天証券や楽天銀行、楽天カードなど金融機関も持つようになった。
ポイントを貯めたくなるような仕組みづくりもうまい。楽天は他のポイントと違い、ページのトップにポイントが表示されるのでどれくらい貯まっているのかがわかりやすいのです。すぐに楽天市場や楽天ペイで使えるので、現金に近いポイントといえるでしょう」(ITジャーナリストの久原健司氏)
楽天経済圏に生きる人間にとって、楽天スーパーポイントはもはや専用の通貨のように君臨しているのである。
「来年の春以降から、楽天ペイがSuicaに対応するようになると発表されました。楽天ペイでチャージしたSuicaを使用すると、楽天スーパーポイントが貯まるようになるのでしょう。交通系ポイントとの連携で、最強の組み合わせになる可能性もあります」(消費生活アドバイザーの丸山晴美氏)
ただし、楽天スーパーポイントを最大限活用することは、楽天側に購買行動から懐具合まで筒抜けになることを意味している。その危険性には注意しておきたい(下コラム参照)。
使っているスマホがドコモであるならば、貯めるポイントはdポイントがいいだろう。マクドナルドやローソン、マツモトキヨシでポイントが貯まったり、使えたりするので使い勝手もいい。
消費生活評論家の岩田昭男氏が実体験からこんな使い方をおすすめする。
「ドコモが発行しているクレジットカード『dカード GOLD』を合わせて使うと、よりお得です。カードの年会費は1万800円かかりますが、ドコモユーザーで携帯代金やネット回線などを足して月9000円以上を支払っているなら、10%還元なので相殺できます。私はそのポイントをローソンで使っています。
ハワイや国内の主要空港でラウンジが使えるのもうれしいですね。航空会社のラウンジほどではありませんが、ソフトドリンクは無料で十分くつろげます」
Tポイントはこれまでヤフーと蜜月関係で、ECサイトのヤフーショッピングやLOHACOでポイントが多く貯まる特徴があった。しかし最近のヤフーは自身が親会社であるPayPayのほうのポイント還元キャンペーンに夢中で、PayPayではTポイントがつかない。
「ヤフーショッピングで付与されるポイントをPayPayのポイントに移すなど、ヤフーはTポイントから手を引きつつあるフシがあります」(岩田氏)
とはいえ、ファミマやTSUTAYA、ウエルシア、 野家などでTポイントが貯まるし、そのポイントを使えるのは魅力だ。賢く活用するには、こんなウラ技もある。前出の菊地氏が伝授する。
「Tポイントをドラッグストアのウエルシアで使うと非常にお得です。通常1ポイント=1円ですが、毎月20日は1.5倍で使用することができます。1000ポイントで1500円相当の買い物に使うことができるのです。ドラッグストアは商品のラインナップも食品スーパーに匹敵しますし、その日の目玉商品を購入すればお得感はさらに強まります」
これらのポイントに比べて、いささか見劣りするのがPontaポイントかもしれない。しかし、日常的にローソンを使うなら、見逃せない特典がある。クレジットカードを連動させることで、ポイントを飛躍的に集められるのだ。
「消費増税に向けて、真っ先に手を打ったのが、Pontaポイントです。10月以降、クレジット機能付きのローソンPontaプラスカードをローソン系列の店舗で使用すると、いつでも4%のポイントを還元すると発表しました。増税後、コンビニでは国から2%のポイント還元が行われますが(キャッシュレス決済の場合)、ローソンはこれに4%上乗せして、6%分を還元するということです。増税後の売り上げ減少を避ける狙いなのでしょうが、セブンイレブンやファミマは2%の還元しか発表していません。Pontaポイントはこれで躍進する可能性も出てきました」(前出・岩田氏)
Pontaポイントはクレジットカードのリクルートカードとも相性がいい。年会費が無料で、1.2%という高還元率を誇るリクルートカードだが(通常のクレジットカードは還元率0.5~1%程度)、ポイントの使い道が旅行サイトのじゃらんなどに限られていた。
「それがPontaポイントと等価交換できるようになったため、一気に利用範囲が広がりました。私自身、リクルートカードの会員ですが、ローソンで使えるのはありがたいですね」(前出・丸山氏)
マイルはポイントに換える
かつて飛行機に乗らずにマイルを貯める「陸マイラー」という言葉が流行った。ポイントを集めてマイルに交換し、特典航空券を手に入れることがポイント活用の王道だったのだ。国際航空券に換えれば高還元率を実現できたからだ。しかし、格安運賃が売りのLCCなどが登場し、時代は変わりつつある。
「たしかにマイルは国際航空券として使うのが一番得です。しかし、往復で最低1万2000マイルが必要なうえ、チケットも取りづらい。海外出張の多いサラリーマンは別として、一般の人には貯めるのが難しいでしょう。なので、JALマイレージバンクには、マイルの代わりにPontaポイントが貯まるコースや、dポイントに交換できる特典があります。一方のANAマイレージクラブも、楽天スーパーポイントやTポイントに換えられるようになっている。現実的にはマイルをポイントに換えて、コンビニなどで使ったほうがいいのではないでしょうか」(前出・菊地氏)
以下、ポイント新時代の勢力図を紹介する。賢く使って新しい「ポイント経済」社会を生き抜こう。
ポイントと賢く付き合う秘訣
まずは図をじっくり見てほしい。コンビニ、スーパー、ドラッグストア、飲食店、航空会社――あなたが一番よく利用するところはどこだろうか。それがポイントを賢く使う起点となる。セブンイレブンならnanacoポイント、イオンならWAONポイントを、あまり広がりはないものの、選択したほうがいい。
悩むのは、ローソンやライフ、エディオン(11月からはファミリーマートも)といった複数のポイントのいずれかがもらえる店舗だ。ドコモユーザーならdポイント、楽天ユーザーなら楽天スーパーポイントを中心に集めるのがいい。とはいえ、一つに集約する必要はない。
「主要なポイントはアプリで管理できるようになっています。これなら以前のようにサイフがパンパンになることもありません。代表的なポイントのアプリはすべてスマホに入れ、ポイントがもらえる場合は確実にもらうようにするのが正解です」(前出・丸山氏)
貯まったポイントを取っておいても、増えることはない。少額でも日常の買い物に素早く使ってしまおう。
「多くの人が誤解していますが、貯まったポイントは、それを使う権利が所有者にあるだけで、実質は企業のものです。企業側の都合でなくなるときもあるし、不正利用されても補償されません。さっさと使うに限ります」(前出・菊地氏)
これがポイントと賢く付き合う秘訣だ。




あなたのすべてが丸裸に? 本当は怖い「オンライン」ポイント
今年1月、Tポイントを展開するCCCが裁判所の令状なしで捜査当局に、氏名や電話番号、レンタルや購入履歴などの情報を提供していたと報じられた。
「誤解を恐れずに言えば、ポイントはエサで、企業の狙いは顧客情報です。顧客の属性と購買履歴をビッグデータとして集め、マーケティングに利用する。それが悪用されれば、個人情報が丸裸になるおそれがあります」(消費生活評論家の岩田昭男氏)
たとえば熟女AVを好んで見ている事実が、家族にバレてしまうのか―。「ポイ探」の菊地崇仁氏はこう言う。
「Tカードはオンラインとオフラインが分離しているため、裏の趣味が家族にまでバレる危険性は低い。しかし、楽天は違います。楽天経済圏と呼ばれるように、楽天市場をはじめとして、グループ会社には証券も銀行も、アダルト動画サイトまである。IDを入手すれば、表の行動から裏の趣味まで、すべてを把握することも可能なのです」
それでもポイントのために、ネットにすべての情報を委ねるのかどうか。それは個人の考え方次第である。
『FRIDAY』2019年9月6日号より
写真:アフロ