佐々木朗希が大学日本代表に投じた「戦慄の12球」徹底分析!

底知れぬポテンシャルを秘める「令和の怪物」の投球を、スポーツライターの西尾典文氏がどこよりも詳しく解説する。

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8月26日、神宮球場で大学日本代表相手に力投する佐々木朗希。ストレートは最も遅い球でも152km

甲子園にも出場しなかった令和の怪物・佐々木朗希が、ついにそのベールを脱いだ。8月26日(月)に神宮球場で行われた「侍ジャパン壮行試合 高校日本代表vs大学日本代表」で、全国デビューを果たしたのだ。そこで、佐々木朗希を昨年から見続けてきたスポーツライターの西尾典文氏にその投球内容を詳細に分析してもらった。

 

令和の怪物がついに全国の舞台でベールを脱いだ。
野球のU18W杯に出場する高校日本代表が大学日本代表と行った壮行試合で、今年のドラフト最大の目玉である最速163km右腕の佐々木朗希(大船渡高)が先発として登板。大学球界を代表する選手を相手に1回を12球で三者凡退に抑えた。改めて佐々木が投じた12球を振り返ると、以下のようになった。

152kmストレート:レフトフライ
155kmストレート:ボール
153kmストレート;ファウル
156kmストレート:ストライク(空振り)
154kmストレート;ファウル
134kmフォーク:空振り三振
155kmストレート:ストライク(見逃し)
138kmフォーク:ボール
136kmフォーク:ファウル
153kmストレート:ボール
134kmフォーク:ボール
152kmストレート:空振り三振

12球のうちストレートは8球。そのすべてが150km以上で、最も遅いボールでも152km、最速は156kmをマークした。平均にすると153.8kmとなる。1回だけの登板とはいえここまでのスピードを出せる投手はプロにもそう多くはないだろう。ちなみにこの日の試合で佐々木以外では高校ジャパンが4人、大学ジャパンが8人の合計12人が登板したが、その中での最速は西純矢(創志学園高)、飯塚脩人(習志野高)、森下暢仁(明治大)、吉田大喜(日本体育大)、伊藤大海(苫小牧駒澤大)5人がマークした151kmだった。大学球界も含めて全国から集まった好投手が全力を出しても、誰一人として佐々木の最も遅いストレートにも届かなかったのだ。もちろんピッチャーの価値はスピードだけではないが、この事実だけでも佐々木の存在がいかに飛び抜けたものであるかが分かるだろう。

佐々木の最も遅いストレートにも神宮球場に集結した日米15球団の関係者、詰めかけた3万人近い大観衆からは佐々木に対する感嘆の声が挙がっていたことは言うまでもない。しかしこの日の佐々木のピッチングは決して本調子と言えるものではなかった。本格的な実戦からは約1ヵ月離れており、またボールもこれまで使っていたものとは違う国際球ということもあって、良い時に比べるとリリースにばらつきがあったのだ。特に1回裏のピッチング練習ではその兆候が顕著だった。マウンドとボールの感覚を確かめるためか、1球目から変化球を続けていたが、その大半がボール球。最後に1球だけ投げたストレートもスピードガンでは150kmをマークしていたが、高めに抜けるボールだったのだ。そして本調子と言い切れない要因は初めてバッテリーを組むキャッチャーの水上桂(明石商高)にもあった。投球練習からいきなり後逸するなど、かなりキャッチングが不安定に見えたのだ。もちろん水上も高校球界ではトップクラスの捕手である。そんな水上ですら捕球するのに苦労するほど佐々木のボールが異次元ということの証明でもあるだろう。

実際の試合でも投球練習から修正してストライクをとるのに苦労するようなことがなかったのはさすがだが、ストレートはシュート回転するボールが目立った。コントロールの不安からか、インコースを狙ったボールも1球もなかった。また、佐々木の変化球の中で組み立ての中心となるスライダーはこの日1球も投げていない。途中で指先を気にする仕草が見られ、試合後には中指に血マメができかけた影響ということが判明したが、それだけ慣れない環境、ボールには苦労していたのである。しかしストレートが本来の軌道ではなく、得意球のスライダーを封印しても大学ジャパンの好打者を手玉にとったというのは、やはり凄いとしか言いようがない。

30日に開幕するU18W杯に向けて、ボールに慣れてくれば更に調子が上がってくる可能性も高い。今度は初の国際舞台でどのような投球を見せてくれるのか。今後の佐々木からも目が離せない。

 

  • 取材・文西尾典文(にしお・のりふみ)

    スポーツライター。愛知県出身。’79年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

  • 写真時事通信社

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