奇想天外動物コメディが「子供に読ませたい漫画」として人気の理由 | FRIDAYデジタル

奇想天外動物コメディが「子供に読ませたい漫画」として人気の理由

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「デザインとかお任せで」「自由でいいよ」「とりあえずいい感じに」「なる早で」

クライアントからこんなオーダーが振ってきたら、嫌な予感がしてしまうデザイナーは多いのではないだろうか。

「なる早って言われたから頑張ったのに返事が来ない……」「自由で、って言ってたのに、『なんか違うんだよね~』ってリテイクになった」「いい感じに、とかそういうふわっとしたオーダーやめてくれ……!」――そんな悲鳴がそこかしこから聞こえてきそうだが、しかし発注してきた相手が、「神様」だったとしたら……?

漫画『天地創造デザイン部』は、「天地創造の際、動物を造るのがめんどくさくなった神様が、デザイン&製造を業者に外注した」という斬新な設定の生き物コメディだ。

また、NHKの人気番組「あさイチ」で「今どきの学習漫画」が特集されたように、最近は様々なジャンルで「面白くてためになる」漫画が増えている。本作は、そんな作品のひとつでもある。

『天地創造デザイン部』1~3話を今すぐ読む

『天地創造デザイン部』1巻書影

物語の舞台となるのは、天界にある「デザイン部」という部署。ここでは個性豊かなデザイナーたちが働いていて、神様が投げてきた注文通りの生き物を造ろうと、日夜奮闘している。

配属されたばかりの新米天使・下田くんは、神様とデザイナーたちの橋渡し役。頑張り屋で好奇心旺盛な彼の視点を通し、読者もまた生き物の不思議に触れていくことになるのだ。

神様からのオーダーは、連絡役である天使たちがデザイナーにお知らせする。新米天使・下田くんの上司である上田さんは、いつも笑顔を絶やさない素敵な天使だけど、ちょっとセンスが独特…? Ⓒ蛇蔵&鈴木ツタ/たら子/講談社

神様からデザイナーたちに降ってくるオーダーは、「足がないのに走る動物」というまるでなぞなぞのようなものや、「馬をなんとか飛ばして」というムチャ振りなど、どれもこれもデザイナー泣かせな代物ばかり。

しかし、この完成型がまったく見えないオーダーから生み出されたのが、私たちのよく知るあの動物だったというのが本作の面白さ。例えば、「かわいくてかわいくない」という矛盾したオーダーから、デザイナーの冥戸(めいど)ちゃんが生み出した動物は、なんとコアラだ。

「誰でも知っている動物に意外な面があり、驚くという、この漫画のコンセプトを体現したような動物だと思います」と原作者の蛇蔵さんが語る通り、実はよく考えると、愛らしい見た目とは相反するようなスペックを備えているコアラ。

「うんこで子供を育てる」「毒を食べて生きる」「デスボイス&鋭い爪」を最高にかわいいと思ってデザインした冥戸ちゃんは、「かわいい」のセンスが周りとズレていた。しかし、これではオーダー通りにならないので、「外見をまったくかわいくなくしました」とあの見た目になったのである……。

ノリにノってる冥戸ちゃん。協力してくれた海原さんは、イルカやリス、ラッコなどかわいい動物が得意なデザイナー。彼の代表作・カンガルーが持つお腹の袋が、冥戸ちゃんデザインのコアラにも活かされている Ⓒ蛇蔵&鈴木ツタ/たら子/講談社

このように、「もしかしたら本当に、こんなムチャぶりからあの生き物は造られたのかも」と読んでいてそう思ってしまう本作。実は『天地創造デザイン部』は、原作者である蛇蔵さんと鈴木ツタさんによる、「動物のデザインって、誰かが手を加えたような感じがする」「デザイナーがいそう」「だとしたら、アザラシの子供とパンダは同じデザイナーが造ってそう」というこんな雑談が発端だったとか。

「3年前、インターネットの電話会議機能でツタさんと雑談しながら作業をしていたんです。その時に動物のデザインの話になったのですが、非常に盛り上がって楽しかったので、その場でアイデアをまとめ、当時の担当さんに即プレゼンをしました。それがきっかけです」(蛇蔵)

「私も蛇蔵さんも、本来は一作品を仕上げまでやる漫画家なのですが、お互い連載中で、もう一本漫画を描けるほどの余裕はありませんでした。そこで、『それぞれ得意なことだけやろう』となって、プロットを蛇蔵さん、ネームを私、作画は動物を描くのが上手なたら子さんに担当していただくことになりました」(原作・鈴木ツタ)

パンダやラッコといったお馴染みの動物から、ハルキゲニアやピンポンツリーといった「生き物……?」と首をひねってしまう謎生物まで、作中には様々な生き物たちが登場する。「これはさぞ作画が大変なのでは?」と思うが、意外なことに作画のたら子さんを一番悩ませたのは「骨」だったという。

「21話で動物の骨がたくさん出てきたのですが、角度が変わると訳が分からなくなるので、資料探しも大変でした。一番描いていて楽しかったのは、10話でデザイナーの金(きん)ちゃんが、馬を何とか飛ばそうとして生み出した試作段階の動物たちです。だんだん金ちゃんと同じ気持ちになりながら、『こなくそ!』と楽しく描けました」(作画・たら子)

個性派だらけのデザイナーたちの中でも、人一倍感情表現の豊かな金森(かなもり)さん。通称”金ちゃん”。思ったことはズバズバ言うタイプなので、神様からのムチャ振りにキレることも度々…… Ⓒ蛇蔵&鈴木ツタ/たら子/講談社

作中に登場するデザイナーたちは、単に見た目だけを考えるのでなく、「構造的に無理がないか?」「本当に飛べるのか?」「これでちゃんと生き残れるのか?」など、様々な問題をクリアしなければならない。そこで大きな助けとなるキャラクターが、エンジニアの火口さんだ。

彼女の協力のもと、動物の試作品を造ってみると……? 「首が長すぎて貧血で倒れた!」「重すぎて飛べない」「美味しすぎて食べられちゃうので絶滅しちゃう」といった様々な問題点が洗い出せるのだ。

「すっごい高いところの葉っぱが食べられる動物」というオーダーから海原さんが発案した首長ジカだが、火口さんに試作してもらったところ、脳貧血で即ダウン。この「急に倒れる」エラーは作中ではお約束だ Ⓒ蛇蔵&鈴木ツタ/たら子/講談社

何度もトライ&エラーを繰り返し、ちゃんと地上で生きていける生物を造り出すのが本作でのデザイナーたちのお仕事。その過程を追っていくうちに、「どうしてこんな姿をしているのか?」「なぜこれが主食なのか?」「なんでこの大きさなのか?」といった動物の知識が、読んでいて自然と身についてくるのである。

大人から子供まで幅広い読者の支持を得ている本作。「読みながら楽しく勉強できる」学習漫画としての面白さと、クライアントに振り回される「お仕事あるある」な面白さ、両方を兼ね備えているのが人気の理由ではないだろうか。

 

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