ラグビー日本代表に選出 茂野・徳永らが最終合宿で語っていた決意

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2019年2月23日、サンウルブズの一員としてワラターズ戦に出場した茂野

8月29日、都内ホテルでラグビー日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチが会見。9月20日からのワールドカップ日本大会の登録メンバー31名を発表した。リーチ マイケル主将、司令塔の田村優、核弾頭のアマナキ・レレイ・マフィらが順当に選ばれるなか、会見に同席した藤井雄一郎強化委員長は語る。

「選手、スタッフは家族より長い時間を過ごしてきました。選ばれた31名は、外れた10名の分まで活躍してくれると願っています」

今年のチームは従来の常連や復帰組を交えた約60名のスコッドをウルフパック、サンウルブズというふたつのチームに振り分け活動。段階的に人員を絞り、8月18日から10日間あった北海道・網走でのキャンプでは、41名で最後のサバイバルレースを実施していた。選考の背景に迫る。

「緊張感があります。一貫性のないパフォーマンスをするとだめだと思いますし、練習中からライバル意識を持ちながらやっていきたいです。ただ、グラウンド外では情報を共有し、スクラムハーフ同士で同じ画(ビジョン)が見られればと思っています」

網走でこう口にしたのは茂野海人。攻撃の起点となるスクラムハーフの座を、田中史朗や流大と争っていた。田中と流がジョセフの抱えるウルフパックで多くの時を過ごしていたのに対し、茂野はサンウルブズに参加して国際リーグのスーパーラグビーでタフな時間を過ごしてきた。

茂野が「一貫性のないパフォーマンスをすると…」と話すのは、おそらくジョセフが選手に「一貫性」を求めているためだろう。合宿中の実戦練習は主力組と控え組に分かれて行われている様子だったが、主力組に入るスクラムハーフは日ごとにかわっていた。

結局は3人とも「スペシャリストのポジションには、自分たちの戦い方を熟知している選手をより多く抱えたい」との理由で当選した。もっとも、それはあくまで結果論である。選考過程において、第三者の分析した「序列」と当事者の感情は得てして重ならない。

2019年8月3日、東大阪花園ラグビー場でのトンガ戦に出場した徳永

主力組に入りながらも自身が当落線上にいると感じていた選手には、徳永祥尭もいた。

21日の全体練習時は、身体をぶつけ合うフランカーの位置にリーチと一緒に入る。ところが他選手が引き上げるなか、テント型のトレーニングルームへ直行。すべてを終えて記者団に捕まると、「リハビリをしていました」と応じた。

皆に見られている間は問題なく動いていたようだが、陰では以前に怪我をした箇所のケアに注力していたのだ。実は怪我人も多く出ていたこのキャンプへもともと怪我を抱えながら参加し、身体に鞭を打ったことになる。

自分が主力側に回っているのは、あくまで同じポジションでリーダー格のラピース・ラブスカフニが別メニュー調整をしていたからだと考えていたのだ。

結局はラブスカフニ、リーチらとともにメンバー入りしたが、当時、心境をこう吐露していた。

「いまは長期の休みがないじゃないですか。ただ、自分はしんどい中でもやり続けなくてはメンバーに入れない位置にいると自覚している」

茂野や徳永がレギュラー争いに絡む一方、アピール機会の限られた戦士も気を吐いていた。その1人が山下裕史だ。2015年のワールドカップイングランド大会で歴史的3勝を挙げたメンバーの1人で、一時は代表を離れるも、2018年にはカムバック。茂野とともにサンウルブズで存在感を示し、スクラム最前列の右プロップの座を常連の具智元、ヴァルアサエリ愛らと争っていた。

己の立ち位置を問われれば、チームのスタイルを踏まえてこう述べていた。

「持ち味がセットプレー(スクラムなど)なのですが、そこはできて当たり前と評価が天井に行ってしまっている。あとはフィールド(ボールが動いている間のプレー)、スキル、ディフェンスと違うところで魅せていかなきゃいけない。(見つめるのは)個人の仕事ですね。ボールがタッチラインの外にある場合、(流れのなかでの)アタックの際、ディフェンスの際、スクラム後のディフェンスの場所、ラインアウト後のディフェンスの場所と、動く場所はほぼ決まっている。そこへ疲れていても速く行けるかが大事。特にアタックで誰かのポジショニングが遅れると、他の誰かがカバーして、その人が元いた場所の人数が少なくなってしまう。そうした細かいことを詰めないと、チームに悪い影響を与えてしまうんです」

網走合宿は28日に解散。ジョセフは参加者へ当落を伝えたとし、翌日の会見では改めて「41名全員が献身的にベストを尽くしてきました。それら選手のうち数名を外すのは苦しい決断でした」と話した。

今回、一貫性とともに求められたのは「自分たちのやることがどこまで理解できているか」と、何より「複数ポジションをカバーできるか」だったとのことだ。

確かにウィリアム・トゥポウは本職のアウトサイドセンターとフルバックでスタンバイ。本来フルバックだった松島幸太朗は、ウイングの先発候補でもある。

一方で、スクラムハーフやプロップのような専門職には一定数のスペシャリストが並んだ。特に右プロップでは、具、ヴァル、今年代表デビューした木津悠輔という3人がラインナップされた。スクラムでミリ単位の駆け引きが課されるプロップでは熟練者のニーズが高まるものだが、山下は外れた。

来日後にコンバートした中島イシレリ、ヴァルという攻撃的な選手が左右のプロップの2番手集団へ入ったことへの説明には、ジョセフのこの談話がマッチしそうだ。

「もうひとつ、自分たちのプレーの仕方を理解し、遂行できるか、が基準になっています。ディフェンスでも守り切れなくてはいけないですが、我々はあくまで自分たちの戦い方にフォーカスし、攻めることで勝機を見出せる」

ちなみに選手の出席しないメンバー発表会見は2大会ぶりだった。かねて日本代表選手に「アマチュア(社員選手)」がいることに疑義を唱えていたジョセフだが、これまでの過程を踏まえ選手をこう讃えた。

「日本代表はティア1(強豪国)と比べるとプロは少ない。そんな中、代表選手はラグビーだけのために純粋な気持ちでやっています。ジャージィへの誇り、日本を代表して戦うという気持ちが大きな力になる」

チームは8月31日に集合の見込み。9月6日の南アフリカ代表戦(埼玉・熊谷ラグビー場)を大会前最後の実戦として、9月20日にロシア代表との開幕戦(東京・味の素スタジアム)に挑む。以後は、28日に2018年欧州王者のアイルランド代表(静岡・エコパスタジアム)、10月5日に環太平洋の雄・サモア代表(愛知・豊田スタジアム)、13日に欧州6強の一角であるスコットランド代表(神奈川・横浜国際総合競技場)とそれぞれぶつかる。初の自国開催大会で、初の決勝トーナメント進出が期待されている。

山下ら網走まで生き残った10名は、それ以前に選外となった立川理道ら4名とともに大会のバックアップメンバーとして内々にリスト化された様子。正規の31名に「深刻な怪我」があった場合のみ、声がかかることになる。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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