野草ビュッフェ!?「ホテルコンチネンタル府中」がブッ飛びすぎ!
野草に競馬にラグビーに…。ホテルなのに振れ幅大きすぎ!
皆さんは「ホテルコンチネンタル府中」をご存知でしょうか。インターコンチとは違いますよ。開業から30余年のホテルなのですが、ここ、ホテルなのにエッジが効きすぎてるんです。レストランの料理からバーテンダー、広報担当者まで、個性強すぎていろいろ衝撃受けます。今回はそのエキセントリックなポイントを掘り下げるとともに、気づいたらハマっちゃう魅惑のコンチワールドにご案内します。
そもそも今回、ホテル広報のKさん(女性)に「貴ホテルがブッ飛んでてツッコミどころ満載っていうタイトルで記事を書きたいんですけど」と申し込んだところ、「ぜひよろしくお願いします!」と快諾してくれました。普通ありえませんね。
ここが変だよコンチネンタル①:レストランが“野草”推し
館内には「レストラン東北牧場」があります。何でこんな名前なのかというと、青森県に総面積85ヘクタールの広大な牧場を所有し、レストランで使う野菜や卵はここで生産しているのです。
しかもイチオシは「野草料理」。東北牧場で育てた野草をレストランで積極的に提供しており、すでに野草ファンの間では有名な存在です。野草好きが集まるオフ会などもたまに開かれているそうです。てか野草好きのオフ会って!!
これがディナーバイキングの野草料理の一例!
ディナーバイキングにその野草料理が登場します。50種以上の料理が食べ放題で2480円。ホテルなのにずいぶん安いですね。
料理は日替わりで、その時期に採れた野草を使ったメニューが並びます。10月ごろまでフレッシュな野草を使いますが、以降は冷凍保存した野草になります。
「そもそも野草って雑草だよね、何で食うの?」
丁寧に野草の効能を解説したカードも置かれています。ほほー。ヨモギは分かりますが、ハコベとかギシギシとか、食えるの! って思いますね。
では、その珍メニューを実食レポートします。
「ハコベの黒糖ジュース」。りんごジュースで割ってありマイルドです。個人的にはもっと草感があっても良いと思いました。
「オオバコ乗せクラッカー」(上)。おしゃれな一品です。チーズとオオバコって合うんですね! 意外な発見です。
「オオバコのチップ のり塩味」(下)。パリパリして塩加減も絶妙で、パクパクいけます! 大皿一つぶん食べ尽くしそうになりました。
「ハコベ入りオムレツ」(上)。ホウレン草の代わりにハコベ入りですが、言われなきゃ分からないほど野草感はありません。
「アカザとツナの和え物」(下)。アカザはビタミンA、ビタミンB2、ビタミンCが豊富だそうです。どの野草もビタミンは豊富そうですが…。淡白なのでツナの油分と合います。
「カンパチのヨモギ蒸し」(上)。野草料理店じゃなくても出てきそうなメニューですね。ヨモギの葉で蒸された白身が良い香りです。
「アカザとよもだカレーピザ」(下)。よもだカレーってご存知ですか? あの蕎麦屋「よもだそば」の有名なインドカレーです。実はコンチネンタル府中と「よもだそば」は同じ経営なので、メニューが共通だったりします。
「アオビユとサーモンの生春巻」(上)。アオビユは利尿作用効果があるそうです。生春巻きにはタクアンも入っていて、アオビユのシャキシャキ感と相まってかなりイケます。
「ツユクサの軍艦巻き」(下)。インスタ映えしますねえ。草しかのっていない寿司って初めて見ました。ツユクサはシャキッとして甘みを感じられ、美味ですよ。
「スミレの巻き寿司」(上)です。なんだかもう寿司に野草入っているのが当たり前に思えてきました。
「スベリヒユの酢〆」(下)。どう見てもきんぴらごぼうですが、スベリヒユは少し酸味があり、ヌメヌメしていてモロヘイヤのような感じで美味。もっとポピュラーな存在になるべきです。
「たんぽぽ生握り」(上)。“生”ってところに気合いを感じますね。花の部分ではなく葉っぱなので食べやすく、生ハムの塩気がいい仕事してます。
「カタバミフレンチトースト」(下)。ハート形の葉っぱが可愛らしく、カフェで出てきそうなメニューですね。カタバミ感は全くありませんが、普通にフレンチトーストとして美味しいです。
「ギシギシのせオイルサーディン」(上)。ギシギシはレモンの味に似ていると言われ、最近人気の野草です。しかしイワシも、自分の上にのっているのがギシギシだとは知らないでしょう。「海苔かな」ぐらいに思っていることでしょうね。
「豚肉のハコべ焼き」(下)。おそらくここの野草料理の中で一番万人ウケするんじゃないでしょうか。ハコベは春の七草の一つとしても有名ですね。薬味のようなピリ苦さが良いアクセントになっています。
「ヨモギのパン」。よもぎは入っているかいないかぐらいの量なので、ほんのり香る程度です。
全部盛ったらこうなった
だいたい全部の料理を盛り付けてみました。
あれ? と思われる方がいらっしゃるかもしれません。そう、野草以外の料理も盛り付けられています。
バイキングのメニューは野草縛りではありません。餃子、春巻き、チャーハン、串揚げ、ラーメン、とんかつなど、ノン野草メニューもたくさんありますので、野草に免疫のない方でも大丈夫ですよ。
だいたい野草料理は全体のうち8〜10種類ほどで、この日は取材だったので張り切ってたくさん出してくださったそうです。
ここが変だよコンチネンタル②:広報Kさんがロービー丼の夢を叶える
「ディナーバイキングはプラス1500円でローストビーフも食べ放題になります」とKさん。それはすごいですねと生返事しましたら、おもむろにKさんが大量のローストビーフを持ってきて、ご飯の上に敷き詰め始めました。
「うちの店でロービー丼を作るのが夢だったんです」
どうやらロービー丼の限界に挑戦したかったらしいですが、普段できないので取材にかこつけて夢を叶えようと目論んでいたそうです。今まで広報担当者でこんな方はいなかったので、いやあやっぱりブッ飛んでるなあコンチはと微笑ましく見ていましたら、「じゃあ猫田さん食べてください」と丸投げされました。えっ! 作るだけ作ってそれかよ! 全部食べましたけど。
ここが変だよコンチネンタル③:1個300円の卵も食べ放題
実は、ホテルコンチネンタル府中のもう一つの推しが「卵」。東北牧場で生産している自然卵は、赤玉が1個250円、青玉が1個300円という超高級卵。これを惜しげなく食べ放題で提供しており、贅沢な食べ比べも楽しめます。
赤玉はコクがありクリーミー、青玉はあっさりした味わいです。無農薬の餌を食べて育った鶏の卵だそうです。
広報Kさんによると「モトを取るんだ」
ちなみに朝食もブレずに野草です。
ここが変だよコンチネンタル④:バーテンダーの経歴がすごすぎる
野草の話が長くなりましたが、ホテルコンチネンタル府中の底力はこれだけではないのです。ホテル内には「カフェ&バー コルト」というカフェバーがあり、こちらのバーテンダーがなかなか個性派ぞろいです。
少し前までは仮想通貨に精通したバーテンさんがいたのですが、残念ながら退職(稼ぎが本業を超えたんですね)。その後に入った中村圭二さんも凄い人です。
中村さんはなんと、ホテルオークラのメインバー「オーキッド」に長年勤めており、「カクテル オブ ザ イヤー’98」を受賞した経歴の持ち主。それだけではなく、日本大使館公認のバーテンダーとして首脳はじめ国の重鎮とともに世界中をまわったそうです。カストロ大統領にカクテルを作って出したこともあるのだとか。
英語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語が堪能。ソムリエ業界の最難関資格であるマスターソムリエほか、マスターバーテンダー、日本酒の杜氏、茶道の表千家師範格、華道の小原流師範格を持ち、変わりどころでは葉巻を巻く「シガーローラー」の資格も日本人で初めて取得したという冗談のようなスペシャルエリート。
失礼ですが何でそこを辞めてホテルコンチネンタル府中に? と尋ねましたら、「いや、ぼーっとしてて」と笑っておられましたが、おそらくスピリチュアルなレベルでこのホテルに惹かれるものがあったのでしょう。
ここが変だよコンチネンタル⑤:カクテルも野草縛り
こんなすごいバーテンの中村さんですが、「カフェ&バー コルト」で出しているカクテルも「野草」です。
野草を漬け込んだリキュールを自家製しています。養命酒より健康に良さそうです。
しかし色は綺麗ですね! カクテルの名前は? と聞きましたら、「まあ草なんで、適当な名前付けてください」と大らかな返事が返ってきました。
ここが変だよコンチネンタル⑥:競馬ネタもぶっこんでくる
そうそう、近くには府中競馬場もあるので、大きなレースの際には競馬ファンのお客さんも多いのだとか。というわけでバーには「競馬カクテル」も揃えており、メニュー表が出馬表という小粋な演出もしています。
「トウカイテイオー」「キタサンブラック」など実在の馬をイメージしたカクテルを提供しています。実にユニークですね。
ここが変だよコンチネンタル⑥:ラグビーにも乗っかってる
府中は2019年ラグビーワールドカップ開催地でありチームもある「ラグビーのまち」。というわけでコンチも、ラグビーに乗っかっていろいろやっています。
ロビーにラグビーのコートがある! と思ったら、これは「トライボード」と言って写真を撮るためのセットだそうです。
ちなみにこの写真は広報Kさんです。
ホテルのロビーによくこんなデカいもん作ったなあ邪魔じゃないのかなあと思いますが、その辺さすがコンチネンタル。利便性よりもエンタメ重視なのです。
「ラグ飯」も見逃せない!
さらにレストランでは「ラグ飯」なるメニューを提供。これはラグビーボールを模したオムライスで、中からはやっぱり野草が出てきます!!
ラグビーカクテルまである
バーにもラグビーカクテルがあります。どこがラグビーなの? と怪訝に思ってしまいますが、日本代表チームの赤白ストライプのユニホームをイメージしたものだそうです。
なるほど〜! 強引なところもまたコンチらしくて良いですね。
まだまだネタがあるのですが、書いてて疲れてきたので、もう実際行ってみて! と言うしかありません。あ、もちろんホテルなので部屋やアメニティはきちんとしていますよ。
そもそも野草料理って旨いの? と思われるかもしれませんが、私の口には非常に合います。あまりにも喜んで食べるので広報Kさんが「よく食べますね〜!」とドン引きするぐらいです。
しかしホテルなのにこんなにアットホームなコンチネンタル府中、たまに「それでいいのか!」とツッコミたくなるほどユルいですが、なぜかまた足を運びたくなっている自分がいるのです。
ホテルコンチネンタル府中/レストラン東北牧場 住所:東京都府中市府中町1-5-1/アクセス:京王線府中駅北口徒歩1分/電話:042-333-7111 /営業時間:朝食 7:00~9:30、ランチ 11:30~14:30、ディナー 17:00~22:00/定休日:日・祝
取材・文・写真:猫田しげる
1979年北海道函館市生まれ。京都のタウン誌、北海道の新聞地域面、東京の街歩き雑誌、旅行本などの編集・ライター業に従事。2019年4月から拠点を札幌に移動し、ウェブライターとしてデカ盛りから伝統工芸まで幅広い分野で執筆。弱いのに酒好きで、「酒は歩きながら飲むのが一番旨い」が人生訓。