さらに激化 香港反政府デモは「21世紀の天安門事件」になるのか
「逃亡犯条例」改正をめぐってデモが激化する香港。武力衝突の可能性が危惧されるが
香港で、「逃亡犯条例」の改正を発端としたデモが激化している。6月9日から始まった大規模デモは、200万人以上が参加するほどになり、香港警察が市民に威嚇射撃を行う事態にまで発展。ついに香港の治安機関は一線を超えたのだ。
「8月25日の昼頃には、デモ隊に対して機動隊が、『催涙弾を撃つ』という警告幕を掲げました。その後、機動隊員が街中で数十発の催涙弾を集中砲火。逃げ惑う買い物客の中には、激しい吐き気と猛烈な目の痛みに見舞われ、救護班の手当てを受ける人もいました。デモは市街戦の様相を呈してきています」(香港で取材をしているジャーナリストの田中龍作氏)
「八九六四『天安門事件』は再び起きるか」などの著作で知られるルポライターの安田峰俊氏は話す。
「香港はもともと英国領だったこともあり、西側の国と同じようにキッチリとしたプロセスを踏んだうえで法律が制定されるのが普通です。しかし、今回はそうした行政の決まりを無視して香港政府が法律を作ろうとしたため、市民の中に不信感が生まれた」
「逃亡犯条例」に香港の人々がここまでの拒否反応を示すのは何故なのか。立教大学法学部教授の倉田徹氏は話す。
「一国二制度を採用する香港の人々にとって、中国共産党のやり方は受け入れがたい。それに加えてこの数年、中国を批判した人が香港から中国本土に連行されるケースが頻繁に起きています。市民の中には、自分も何らかの罪で本土に引き渡されるかもしれないという恐怖がある」
今回のデモによって「21世紀の天安門事件」が起こると危惧する声もある。
「中国の歴史ではよくある話ですが、権謀術数に長(た)けた側近が、権力者に歪曲した情報を吹き込んだ結果、誤った意思決定がなされることがある。それこそ’89年の天安門事件でも、当時80代半ばの鄧小平に、側近の李鵬が偏った情報を伝え続けたことで武力鎮圧に至った経緯があります。近年特に独裁化している習近平の傍らにも、そういった側近がいないとも限りません」(前出・安田氏)
中国の建国70周年を記念する10月1日には、史上最大規模のデモが決行される可能性が高いという。ちょっとしたボタンの掛け違いが、取り返しのつかない事態を引き起こすかもしれない。
『FRIDAY』2019年9月13日号より
- 写真:ロイター/アフロ(デモ) AFP/アフロ(人民解放軍) AFP/時事(空港)