アイリスオーヤマ好調の裏に「いくらなら買いたいか?」の週1会議 | FRIDAYデジタル

アイリスオーヤマ好調の裏に「いくらなら買いたいか?」の週1会議

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大手家電メーカーがこれでもかとばかりにハイスペックかつ高級路線を取る中、シンプルながら「なるほど」と思わせる機能と手に取りやすい低価格で多くの消費者に支持されている、アイリスオーヤマの家電製品。この夏の猛暑を、コンパクトで高性能な同ブランドのサーキュレーターでしのいだ人も多いのではないだろうか。

今年の6月には、パリ近郊にアイリスグループのフランス工場を竣工 写真:AFP/アフロ
今年の6月には、パリ近郊にアイリスグループのフランス工場を竣工 写真:AFP/アフロ

実は、アイリスオーヤマが家電市場に参入したのは、たった10年前。LED電球「ECOLUX(エコルクス)」やサイクロンクリーナーなどが最初だった。ここから始まった家電事業は、その後大きく成長。現在では「2022年アイリスグループ売上1兆円」を掲げ、国内だけでなく海外にもマーケットを拡大している。

家電事業に参入する以前からアイリスオーヤマは生活用品の開発を積極的に行っており、1980年代後半にはホームセンターを中心に、プラスチック製犬舎やクリア収納ケースなどのヒット商品を生み出していた。家電の開発は「快適な生活を実現させる生活用品」開発の延長線上にあるという。

不満をヒントに開発された、数々のヒット商品

これまでのヒット商品としては下記がある。

ふとん乾燥機 カラリエ

ふとん乾燥機ツインノズル
ふとん乾燥機ツインノズル

従来、大きなマットを広げるなど手間のかかった「ふとん乾燥機」を、敷布団と掛け布団の間にノズルを入れるだけで簡単に使えるようにした。手軽にふかふかの布団にできる快適さが人気となり、200万台を超えるヒット商品となった。

2口IHクッキングヒーター

2口IHクッキングヒーター
2口IHクッキングヒーター

「コンセントから電源をとる2口のIHクッキングヒーターは、火力不足で開発が難しい」という業界の常識を覆し、使える火力を制限することで実現した商品。電気工事不要で様々なキッチンに対応できることで、ロングセラー商品となった。

サーキュレーター衣類乾燥除湿器

サーキュレーター衣類乾燥除湿機
サーキュレーター衣類乾燥除湿機

サーキュレーターを搭載し、遠くまで直線的に届く風で乾燥スピードをアップさせた衣類乾燥機。それ以前からサーキュレーターも除湿機も扱っていた、アイリスオーヤマならではのアイデア商品。一年中、室内干しをする家庭が増えている中、短時間で洗濯物が乾くと支持されている。

アイリスオーヤマが一番大切にする「ユーザーイン発想」とは

次々とヒット商品を生み出す力はどこからくるのか。広報室の稲村氏によると、アイリスオーヤマが家電開発でもっとも大切にしているものは、顧客の欲しいものを市場に送り出す「ユーザーイン発想」だという。

「家電製品以外の分野においても、『ユーザーイン発想』は当社の商品開発の軸になっています。マーケティングや市場調査、競合比較などに頼らず、開発者が自ら生活者の代弁者となり、自分や周囲の人たちが欲しいものを商品として具現化し、市場を創造しています。

これまで市場になかった商品であっても、『ユーザーイン(私たちはこれを“なるほど機能”と呼んでいます)』をもつ商品は共感を得られることが多いです。このなるほど機能をもった商品をいかに値ごろ感のある価格に設定し、『いくらなら買いたいか』という視点も欠かせないポイントになります」

ヒット商品を生み出す源泉、毎週月曜日の「新商品開発会議」

その推進力となっているのが、毎週月曜日に開かれる「新商品開発会議」だ。アイリスオーヤマが扱う23000商品は、すべてここから生まれた。

「新商品開発会議は毎週月曜日、宮城県にある角田I.T.P.(インダストリアル・テクノ・パーク)で開催されています。1日に議論される議題は、新商品の企画・アイデアやその他の案件も含めて約60件。朝から夕方頃まで開催されます。

発表は1つの案件につき5~10分。経営陣を含めた関係者全員で情報を共有し、機能、デザイン、価格などをあらゆる側面から徹底的に議論することで、商品化へのスピードを上げています。

新商品提案ではモックアップ(原寸模型)やサンプル等を用いて、実際の使用感も検討され、最後は必ず社長の大山が決裁をします。発売の責任を会社が全面的に負うことで、例え失敗しても、開発者が次の案件に挑戦できる仕組みを構築しているのです」

開発者も生活者の1人として、商品を使い倒す

毎週やってくる新商品開発会議。そこでは膨大な量の企画が議論される。アイデアが枯渇することなく、ヒットを生み出す創造性の源はどこにあるのだろう。

「弊社には『ユーザーイン発想』を実現するために、社員が自らの生活の中から問題や課題を見つける習慣があります。そのひとつが『使い倒し』です。自社品・他社品含め、開発者が自主的に担当する商品群を実際に自宅等で徹底的に使い、使い心地やお手入れ方法などを検討します。

家庭を持つ開発者の場合、『ここが使いにくい』『ここがこうならもっといい』など、家族からヒントを得るケースもあるようです。『生活者の声を聞く』のではなく、開発者も生活者の1人として不満や不便を発見する取り組みです。この視点を商品開発に繋げています」

「売上高に占める新商品比率を50%以上に保つ」という経営指標を掲げ、新商品開発に力を注いできたアイリスオーヤマ。ヒット商品にあぐらをかくことなく、私たちの生活を快適にしようとする挑戦からは、今後も目が離せない。

  • 取材・文浜千鳥

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