微妙に優しい“いじめ漫画”が「いやされる」と支持されるワケ

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いじめを題材にした漫画というと、ショッキングな内容を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。2018年に映画化された『ミスミソウ』(押切蓮介)や、まさかの展開が話題の『いじめるヤバイ奴』(中村なん)、リアルな描写が壮絶な『イジメの時間』(くにろう)など、読んでいて胸が苦しくなってくる作品がほとんどだ。

そんななか、いじめを描いているのに「心がほっこりする」「なごむ」と女性を中心に支持を受けている、SNS発の漫画がある。それが、もすこさんによる『微妙に優しいいじめっ子』だ。

『微妙に優しいいじめっ子』1~4話を今すぐ読む

『微妙に優しいいじめっ子』1~3巻(以下続刊)/もすこ

本作は、地味でサエないいじめられっ子の田村くんと、いじめっ子で不良の木崎くんとの不思議な関係を描いた青春コメディだ。周りは「田村くんは木崎にいじめられている」と思っているし、田村くん自身もそう感じてはいるのだけれど……なぜか、木崎くんは微妙に優しい。

「お前の下駄箱にゴミ入れといてやったぞ」と言われて恐る恐る見てみると、アイスのあたり棒。勝手に借りられていたノートを開いてみると、英単語のつづり間違いを指摘してくれている。「パン買ってこい」とパシられるのに、「そこ段差あるぞ」と転ばないように注意してくれる……。

田村くんをパシリにする木崎くんは典型的な不良だが、田村くんの足の遅さを考慮したり、渡す金額を多めにしたりと、「そこ?」と思う部分で”微妙”な気づかいを見せてくる(『微妙に優しいいじめっ子』第1話より)©もすこ/講談社

こんな風に毎回びみょ~~に優しい木崎くんに、「なんで?」と困惑しながらも交流を深めていく田村くん。二人のコミカルなやりとりに笑いつつ、読んでいて「いじめってなんだろう?」「友達ってなんだろう?」と思わず考えてしまうのが本作の魅力だ。作者・もすこさんに、どのようにして本作が生まれたのか聞いてみた。

「いじめをテーマにした漫画を読んだ時に、あまりのすさまじい内容に悲しくなってしまったことがあって。『こうすれば優しい世界になるのでは』と漫画を描き、Twitterに投稿したのが始まりです。思っていた以上の反響があり、連載することが決まりました。

最初は、いじめっ子の木崎くんを制するというか、いじめようとするのにいじめにならない、という内容で考えていたんです。でも、『相手へのちょっとした思いやりがあれば、ほんの少しでもほんわか優しくなるんじゃないか』という風に思い、木崎くんの行動に『微妙な優しさ』を足すという今の内容になりました」

本作の”プロト版”と言えるTwitterでの投稿作には、なんと30万人以上が「いいね」したという。木崎くんが見せる”微妙な”優しさと、それに対する田村くんの鋭いツッコミが、多くの人の心を掴んだのだ。

そんな本作の中でも特に印象的なエピソードは、やはり田村くんの「名前間違い」問題だろう。田村くんは、自信を持って「友達」と言い切れるような存在がいない、いわゆる”ぼっち”である。しかも、クラスメイトに「村田くん」と名前を間違って覚えられているのに、気が弱くてそれを正せない。だが、唯一田村くんの名前を間違えないのが、木崎くんなのだ。それどころか、「田村ぁ!」とことあるごとに大声で呼び、クラスメイトに正しい名前をアピールしてくれる。

一見、優しく接してくれているクラスメイトだけれど、みんな田村くんの名前を「村田」と間違えている……。「笑っておけば丸く収まる」「わざわざ場の空気を悪くすることもない」という田村くんの性格が表れている1シーンでもある ©もすこ/講談社

そんな木崎くんを見ていると、「もしかしてすごくいい奴なのでは……?」と思ってしまうのだが、木崎くんはあくまでいじめっ子の不良。田村くんをパシリにして、いじめていることには変わりない。

「いじめはやっぱりいじめなので、そこは中途半端に描かないように気をつけています。木崎くんがめちゃくちゃ優しくなってしまうと、それはそれで作品タイトルでもある『微妙に優しい』から離れてしまうので、さじ加減が難しいです」と、もすこさんは語る。

「いじめを題材にした作品ではあるのですが、人との関わり方について描いている部分が大きいです。二人とも不器用なキャラで、ややこしい性格だと思うんですけど、木崎くんとの関わりのなかで、田村くんがどう成長していくのか。逆に木崎くんはどう変わっていくのか。こういった変化を、連載だからこそしっかりと描いていきたいと考えています」

本作を読んでいて考えるのは、「友達の定義ってなんだろう? 」ということ。放課後一緒に遊びに行けば友達? LINEで繋がっていれば友達? SNSのフォロワーって友達って言っていいの? こんな風に悩んだことがある人は、決して少なくないのでは。

「『いったいどこまでいったら友達って呼べるのかな?』というのを、10代の頃によく考えていた方なんですけど……本作には、そういう疑問についての私なりの答えも入っています。もちろん考え方は人それぞれなのですが、『こんな人との関わり方もあるかもな』『こういう関係性もありかもな』と、読んでいてそう思ってもらえれば嬉しいです」

木崎くんとの不思議な関係について、思い悩む田村くん。基本的にはほんわか笑えるエピソードが続いていく本作だが、この様に考えさせられるシーンも ©もすこ/講談社

代表作である『久住くん、空気読めてますか?』(雑誌「月刊ガンガンJOKER」で2015年9月号~2019年7月号まで連載)も含め、これまで学生たちが主人公の物語を描いてきたもすこさん。「私の描いた漫画を読んでいる時くらいは、楽しい青春を感じてほしい」という気持ちがあるという。

WEB漫画隆盛の昨今、ショッキングな残酷描写や、ドロドロした内容の作品はバナー広告でも目をひきやすい。しかし、そんな漫画ばかりだと、ユーザーとしては心が疲れてしまうのもまた事実。「せめてフィクションの中くらいは癒されたい」という人たちに、作者が目指した「優しい世界」が染みたからこそ、多くの支持を得ているのではないだろうか。

 

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『微妙に優しいいじめっ子』連載ページ(マガポケ)

 

『微妙に優しいいじめっ子』1~4話を公開中!

  • 取材・文大門磨央

    石川県出身。雑誌やWEBを中心に漫画、アニメ、映画などのコラムを執筆中

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