新・大宅賞作家、森功「国会の『悪だくみ』を許さない!」

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もり・いさお 1961年、福岡県生まれ。岡山大学文学部を卒業後、出版社勤務などを経てフリー。『悪だくみ「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(文藝春秋)で、第2回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞を受賞

「加計学園との面会については、昨年7月の国会閉会中審査の前にも、今井(尚哉(たかや)政務)秘書官に話した。その記憶は一貫している」

10日の衆参予算委員会に参考人招致された元首相秘書官の柳瀬唯夫(56)は、唐突にそう言った。繰り返すまでもなく今井は「影の総理」と呼ばれる首相の筆頭秘書官であり、柳瀬にとっては当時の上司にあたる。二人とも経産省出身だ。

加計学園の獣医学部新設に関する愛媛県や今治市の官邸訪問を頑なに否定してきた当の柳瀬が、なぜ今になって加計との面談を認めたのか。誰もが首を捻り、野党からもそこを突っ込まれた。すると、本人はこう屁理屈をこねる始末だ。

「もともと加計学園とは会った記憶があったが、国会でそれを聞かれなかったから答えなかった」

その上で「愛媛県や今治市の職員と会ったかどうか、メインテーブルの後ろにいたその他10人ほどなので、今もって記憶にない」と嘯(うそぶ)く。これに堪らず反論したのが、愛媛県知事の中村時広だ。

「県職員は県の立場を説明するために行ったんだ。子供の使いではない」

愛媛県の職員はメインテーブルに陣取り、柳瀬から名刺を受け取っている、と現物のカラーコピーまで披露し、怒りを露(あらわ)にした。問題の「本件は首相案件」メモについても、こう言い切った。

「総理を首相と書いた可能性は否定できないが、総理案件も首相案件も同義語だ」

首相の分身である秘書官が、官邸で加計学園と会った。それ自体が「首相案件」である。だからこそ官邸は、今まで必死になって加計学園たちの訪問を否定してきたに違いない。

しかし愛媛県文書の発覚により外堀が埋められ、これまでのシナリオが崩れた。参考人招致に応じざるをえなくなり、新たなストーリー作りの必要性が生じる。そこで昨年の国会で質問されていないのをいいことに、「加計と面談した記憶はあるが、その他のメンバーは覚えがない」という無茶なシナリオを描いたのだろう。そのシナリオライターは誰か。

柳瀬に続き、14日の集中審議には、首相の安倍晋三自身も答弁に立った。そこで、1年近く前に柳瀬が今井に加計学園との面談を報告しているのに、なぜ伏せてきたのかと問われると、こう述べた。

「今井秘書官から柳瀬元秘書官が加計学園と会ったことを聞いたのは、このゴールデンウィーク(GW)中だった」

二人の打ち合わせは、正確にはGWの少し前ではないだろうか。実は、それはあて推量ではなく、心当たりもある。

折しもGW直前の4月23日、私は月刊「文藝春秋」6月号の取材で今井と会った。多忙を極める首相の筆頭秘書官が逃げ隠れせず、2時間以上のロングインタビューに応じてくれたのだが、すでにこのとき今度のシナリオを描いていたのではないだろうか。

「柳瀬氏は愛媛県側と面会した記憶がないと言うが、そんなことがあり得るか」

そう問うと今井は即答した。

「僕は柳瀬が嘘をついているとは思いません。実際には会っていたとしても、本当に覚えていない可能性はあると思います。たとえば面会の場に大勢の人がいたら、忘れることだってあります」

秘書官が面会した内容を首相に報告しないのか、とも聞いた。

「秘書官は自分の業務としてやっているだけですから、いちいち報告しません」

そう答えた今井は、首相の「悪だくみ」に欠かせない官邸の振付師である。(文中敬称略)

森功(ノンフィクション作家)

昨年12月に上梓した『悪だくみ』。政官界、加計学園関係者などへの取材を通じ、官邸の暗部を暴いた

撮影:鬼怒川毅

Photo Gallary2

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