松坂大輔が戦力外の大ピンチ…「松坂世代」で生き残るのは誰だ!
今年で39歳となる「松坂世代」の選手たち。力の衰えは隠せず「引退」の文字がちらつく。生き残れるのは誰だろうか。彼らが最後の戦いに臨む。
ペナントレースも大詰めを迎えているプロ野球だが、ベテラン選手の去就が気になる時期になってきた。阪神が鳥谷敬と来季の契約を結ばないことが明らかになり、大きな話題になっているが、その鳥谷より1学年上のいわゆる“松坂世代”の選手たちも、来季の動向が注目されている。日本球界で一大勢力を誇った彼らも、今シーズンNPBでプレーしているのはわずか8人。果たして来季も戦力となるか、そして最後まで現役を続けられるのは誰になるのだろうか。
改めて松坂世代の現役選手8人の今シーズンの成績(9月5日時点)を見てみると、下記の通りとなる。
【投手】
久保裕也(楽天):18試合 2勝1敗0セーブ2ホールド 防御率3.26
藤川球児(阪神):47試合 4勝1敗11セーブ22ホールド 防御率1.53
松坂大輔(中日):2試合 0勝1敗0セーブ0ホールド 防御率16.88
永川勝浩(広島):一軍登板なし(9月6日に引退発表)
和田毅(ソフトバンク):9試合 4勝3敗0セーブ0ホールド 防御率3.86
館山昌平(ヤクルト):1試合 0勝1敗0セーブ0ホールド 防御率6.00(9月8日に引退表明)
【野手】
渡辺直人(楽天)19試合 16打数1安打1本塁打1打点0盗塁 打率.063
実松一成(日本ハム)5試合 1打数0安打0本塁打0打点0盗塁 打率.000
ここまで圧倒的な存在感を見せているのが藤川だ。開幕当初こそ「負け試合」の登板が続いたが、着実に調子を上げて5月からは勝ちパターンの中継ぎに昇格。その後も安定したピッチングを続けて7月下旬からは抑えに復帰し、’12年以来となる2桁セーブをマークするなど、見事な活躍を見せている。
1点台の防御率も素晴らしいが、それ以上に見事なのが三振の多さである。今シーズンの奪三振率はここまで13.21。自身最多となる46セーブをマークした’07年の奪三振率は12.47であり、その数字を上回っている。代名詞である“火の玉ストレート”の勢いは完全に戻っているといえるのではないか。日米通算250セーブまではあと12。この調子が続けば、来季には、松坂世代で初となる名球会入りも実現する可能性が高い。
もう一人健在ぶりを示しているのが和田だ。昨年は左肩痛に悩まされて一軍での登板は0に終わったが、今シーズンは二軍で結果を残して、6月にローテーションに復帰した。7月3日の楽天戦では7回を投げて無失点というピッチングを見せ、ここまで4勝をあげ、故障者の多い投手陣を支える存在となっている。藤川のような分かりやすいスピードがあるわけではないが、和田の良さもストレートにある。ボールの出所の見づらいフォームから140km台をコンスタントにマークして、打者は振り遅れることも多い。度重なる故障に見舞われながらも、ストレートのキレを失わなかったことがここまで一線で活躍できている理由だ。
藤川、和田の二人は戦力として来シーズンも期待できそうだが、その他の6人については厳しいと言わざるを得ない。二度の戦力外と故障による育成契約も経験した久保が、かろうじて中継ぎとして戦力にはなっていたが、8月10日のオリックス戦では1回を投げて3失点と打ち込まれ、12日には登録抹消となった。そして世代のトップを走ってきた松坂は、ここまで2試合に先発したものの、2度目の登板となった7月27日のDeNA戦ではワンアウトしかとれずに、8失点と初回で試合を壊して2軍落ち。さらに、8月には来シーズンの契約が「不透明」という報道も流れた。若返りを図る必要があるチーム事情もあり、これ以上、松坂に期待はできないと判断する可能性も高くなっている。
レギュラーシーズンの終了まで約1ヵ月。崖っぷちに立たされた彼らが果たして「最後の意地」を見せられるだろうか。
取材・文:西尾典文(にしお・のりふみ)
スポーツライター。愛知県出身。’79年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
写真:時事通信社