「久保建英にパスが来ない」 移籍先のマジョルカでスペインの洗礼
レアル・マドリードからレンタルされた「日本の至宝」はこの試練をどう乗り越えるか
9月1日、日本サッカー界の歴史を塗り替える出来事があった。
レアル・マドリードからマジョルカへ期限付き移籍中の久保建英(たけふさ)(18)がスペイン一部リーグでデビュー戦を飾ったのだ。これは欧州4大リーグにおける、日本人史上最年少の出場となる。
日本中が祝福するデビュー戦のはずだが、試合後のマジョルカの公式ツイッターには非難が殺到した。そのどれもが、久保にパスをまわしてくれという嘆願であった。現地で試合を取材したサッカーライターの了戒美子(りょうかいよしこ)氏は言う。
「試合開始から78分。満を持して久保選手は右MFに投入されました。しかし、なかなかパスが来ない。出場してから約5分間は、ボールに触ることもほとんどできていなかったと思います。結局、試合終了までの約15分間で、攻撃にしっかり絡めたのは2~3回ほどでした」
将来を嘱望される若きサッカープレイヤーがパスをもらえなかったのはなぜか。
「欧州ではリーグ戦の前に、プレシーズンを過ごして選手たちの信頼関係をつくります。マジョルカに急遽レンタル移籍することとなった久保選手は、プレシーズンが終わった後の合流だったため、信頼関係を構築できていないのです」(スペイン在住のスポーツライター)
久保のマジョルカ移籍契約には、最低プレイ時間の保証も含まれていると現地メディアは報じている。そういった事情もあって出場の機会を得たが、チームメイトたちの反応は正直だったようだ。
また、日本人ならではの壁も久保の前に立ちはだかる。
「スペインなど欧州からしたら、アジアやアフリカはサッカー後進国です。だから、日本人プレイヤーに対する、『結果を残せるわけがない』といった偏見は残っていますね」(前出・現地ライター)
久保はこの試練をどう乗り越えるのか。
小学4年生の頃から、久保のトレーニングを担当してきたCOREトレSTUDIOの木場(こば)克己氏はこう話す。
「建英は修正能力が高いので、まったく心配していません。彼はJリーグで活躍できていなかった時も、自分に足りていないのは『走力』だと考え、独自のトレーニングを私に依頼してストイックにこなしました。結果、チームに欠かせない存在となった。
また、持ち前の胆力も評価しています。小学生の頃から、厳しいペアストレッチも顔色一つ変えずこなしていました。気になって『痛くないのか』と聞いてみると、『痛いけど、痛くない顔をしています』と答えるんです。プロ向きのメンタルですね。
マジョルカでも修正力と胆力を活かして結果を出し、信頼を勝ち取っていくはずです」
スペインではなかなかパスをもらえない久保。強い忍耐力で逆境をはね返すことができるか、注目が集まっている。


『FRIDAY』2019年9月20日号より
写真:AFLO