千葉ロッテ石川歩はいかにして「どん底」から蘇ったのか

WBC日本代表のエースが「突然投げるのが恐くなった」と吐露

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愛称は石川という苗字にちなんで「五右衛門」。ヒーローインタビューでは歌舞伎「石川五右衛門」の決めポーズをマネて両手を広げることになっている


「1次ラウンドと2次ラウンドの初戦に先発した昨年のWBCは、ボクにとって衝撃でした。海外の選手との力の差を痛感したんです。WBCで崩した調子はなかなか元に戻らず、シーズンに入ってもどん底を味わいました」

こう話すのは、ロッテのエース石川歩(30)だ。昨季は入団以来ワーストの3勝11敗、防御率5.09の成績。今季はそこから復調し、負け知らずの3勝で防御率はリーグトップの1.59を記録している(4月24日現在、以下同)。石川はいかにして「どん底」から蘇ったのか。

「投げる時の意識が、昨年とまったく違います。昨季はWBCで打ち込まれた経験から、完璧なコースにボールを投げなければという気持ちが強くなっていた。今年は『ある程度打たれても仕方ない』と考えるようにしているんです。淡々と投げる自分本来の投球スタイルが、上手くハマっているんだと思います」

石川は富山県立滑川高から中部大学(愛知県)、東京ガスを経て、’13年にドラフト1位でロッテに入団した。入団当初から、テンポのいい投球で安定感抜群。150kmを超える速球と縦に大きく曲がるスローカーブ、左打者の外角に逃げるシンカーを武器に1年目は10勝8敗の成績で新人王を獲得する。以来3年連続2ケタ勝利をあげロッテの大黒柱に成長すると、昨年3月に行われたWBCでは日本代表のエースに選ばれたのだ。初めての大きな国際舞台だった。ところが――。

タオルを被り茫然自失

「突然、投げるのが恐くなってしまったんです。海外のバッターはボール球を絶対に振らないし、少しでも甘く入ると痛打を食らう。簡単にストライクを取りにいくことに恐怖を覚えました」

2次ラウンドのオランダ戦。先発の石川はメッタ打ちに遭う。2本の本塁打を含む5安打を浴び、3回5失点でノックアウトされたのだ。


「(オリオールズのジョナサン・スクープに打たれた)1本目のホームランは衝撃的でした。自分では自信を持って投げたカーブを、軽々とスタンドまで運ばれた……。ちょっとでも甘くなれば命取りになることを、身をもって知ってしまったんです。もう安易にボールを投げられない。以来『際どいコースに投げなければ打たれる』という意識が強くなり、大胆な投球ができなくなりました」

シーズンに入っても、狂った歯車は元に戻らない。登板するたびに大量失点を繰り返し、4月には二軍落ち。再び一軍に上がった5月の阪神との交流戦でも、4回3分の1を投げ被安打6、与四球4、失点7と大炎上。降板後のベンチでは白いタオルを頭から被り、しばらく動くことができなかった。

「悔しかったです。『また打たれたな』『試合を壊してしまい申し訳ない』って思って……。でも、元の『どんどんストライクを取っていこう』という意識に戻そうとしても戻せなかった。コースを狙い過ぎて四球が増え、自分で自分の首を締めていたんです」

一昨年は1イニングあたり0.13個だった四球の割合が、昨年は倍近い0.24個に悪化。コーチやチームメイトにアドバイスを求めても、復活への明確な答えを出せなかった。

自信を失ったエースが、大学時代の恩師・堀田崇夫(たかお)監督を訪ねたのは年の瀬、12月のことだった。普段あまり感情を表に出さない石川が、「このままだと来年ヤバいんで」と血相を変えて相談。中部大学で2泊3日の緊急合宿が行われた。


「フォームもバラバラになっていたので、再確認したかったんです。身体の開くタイミングや体重移動の仕方など、10mほどのキャッチボールから少しずつ距離をのばし細かくチェックしてもらった。(合宿をした)3日間だけ良くても意味がないので、監督からは『この感じを覚えたか?』『この動作が大事だぞ』と何度も念を押されました。少しずつ、身体が以前の投球感覚を思い出し始めました。元のフォームでイメージ通りのボールを投げられるようになると、意識も変わります。今年はボク本来の、『自分のボールを投げればいいや』という気持ちでマウンドに上がっている。ようやく新人の時からの、好調時の自分に近づきつつあります」

どん底から生還したマリーンズのエースに、自信に満ちた笑顔が戻った。

いしかわ・あゆむ ’88年4月、富山県生まれ。小学校3年から野球を始め、ドラフト1位でロッテに入団。昨季までのプロ通算4年で39勝36敗、防御率3.31。’14年の新人王。身長186㎝、体重80㎏。右投げ右打ち

昨年のWBC2次ラウンドでは、オランダ代表だったヤクルトのバレンティンにも2ランホームランを浴びた

 

撮影:小松寛之

写真:日刊スポーツ/アフロ

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