北京新空港も開業 国際空港巨大化でトランジット難民続出か?

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

今、世界中で国際空港の巨大化が進んでいる。この夏、海外旅行をした人の中にも、トランジットの際に延々と歩かされたり、乗り換え損ねたり、荷物の積み換えが間に合わずロストバゲージになったりと、トラブルに巻き込まれた人が多いのではないだろうか?

そんな中、中国・北京に世界最大級の巨大空港「大興国際空港」が9月25日オープンした。総工費は1200億元(約1兆9000億円)、鉄道路線や道路など周辺の整備費用も含めると総額4000億元(約6兆3000億円)にも上る桁違いの国家プロジェクトだ。なぜ中国は、ここまで肝入りの巨大国際空港をこのタイミングにつくったのか。航空・旅行アナリストであり、年間100フライト以上に搭乗している鳥海高太朗(とりうみこうたろう)氏に話を聞いた。

9月25日にオープンした「大興国際空港」 写真:アフロ

「“必要に駆られて”が、一番大きな理由でしょう。現在の北京首都国際空港と上海の浦東国際空港、虹橋国際空港は、便数、路線数を増やしたくてもできない状況で、とうにリミットを越えています。中国は2040年までに年間旅客数を1億人にまで増やす計画のようです。

あとはここ数年、中東の航空会社がかなり力をつけてきているので、そこに対抗し、中国としての威厳を高め、強い経済力を見せつける意味合いもあるのでしょう。現状はサービス面等で中東が選ばれがちですが、中国はソフトを改善することで大きなライバルになり得ます」

今、北京『大興国際空港』が作られたワケ

世界観光統計によると、2018年の海外旅行者総数は14億人(UNWTO=国連世界観光機関調べ)。2030年には18億人に拡大するとも予測されている。 “民族大移動”と呼べるほど多くの人々が国内外を移動するにあたり、必要不可欠なのはそれだけの人数を受け入れることができる巨大な国際空港だ。そして人の流れが変わることは、その国の経済にも多くの変化をもたらすことになる。

「空港を大きくすることによってたくさんの便数を確保できれば、目的地だけでなく、乗り継ぎの経由地として選ばれ、ビジネスマンや観光客など多くの人を誘致することができます。

100以上の都市とつながる、世界的なハブ空港を持つドバイは、経由地として利便性を高めることで“金融の国”になりました。また、シンガポールも以前はあくまでも経由地という位置づけでしたが、世界空港ランキング7年連続1位を誇るチャンギ国際空港の充実もあり、今では観光地として栄え、たくさんの企業が進出しています。空港の発展と比例して、その国の経済が発展しているのは明らかです」

世界中の大小さまざまな空港を利用してきた鳥海氏によると、現存する巨大空港の潮流は、主に二つに分けられるという。

「ひとつは多くの便数、路線数を確保し、大量の利用者を受け入れることができる“スケールメリット”を生かした空港、そしてもうひとつは最初から乗り継ぎ客に照準を絞り、とにかく素早く、簡単に、時間をかけず乗り継ぎができるよう“利便性”を重視した空港です。どちらもメリット・デメリットがありますが、利用する私たちが用途に合わせて巨大空港を選ばないと、思わぬトラブルに巻き込まれることもあります」

事前に集めた「巨大空港で起きたトラブル」に関するアンケートによると、圧倒的に多かったのが、預け入れ荷物が行方不明になってしまう“ロストバゲージ”。その次が、乗り継ぎがうまくいかず空港内を走らされることだった。

「JFK→LA→サンノゼと移動する際、LA便が遅れてトランジットに失敗。航空会社に代替便の手配をお願いしましたが、“JFK空港の管制が遅れたせいなので自分たちのせいではない、レンタカーでも借りて行ってくれ”と言われ、空港内を走り回り、他の航空会社の便を購入。しかもロストバゲージ未遂という地獄を経験しました」(メーカー勤務 40代男性)

「日本からクアラルンプール経由フランス行きでロストバゲージしました。飛行機が遅れたものの、乗り換えにはギリギリ間に合ったのですが、そんなに荷物の積み替えが早く終わるはずもなく、全員の荷物が置き去りに。あとで何とかなるだろう精神で、“とりあえず人だけ送った”そうです。そしてパリに着いて手続きをすると、僕が少しフランス語が話せたのをいいことに、ほとんどの日本人の通訳をさせられました」(飲食店勤務 30代男性)

「フランスのシャルル・ド・ゴール国際空港で、搭乗の2時間前に着いたにも関わらず、空港が大きすぎてチェックインカウンターが遠い→待っている人が多くてカウンターの段階でボーディングタイムギリギリ→缶に入ったクッキーで荷物検査つかまる→空港内モノレールで搭乗口へ行かねばならず……と常に時間に追われていて、生きた心地がしませんでした。なんとか間に合いましたが、あんな経験はもうたくさんです」(保険会社勤務 30代女性)

これらの体験談を聞いても、鳥海氏はまったく驚かない。

「どれも“あるある”ですね(笑)。特に乗り継ぎの場合は、荷物の積み換えが間に合わず、目的地に着いたら荷物がないということが起こりがちです。また、空港とチケットによっては一度入国審査を通らなくてはいけない場合があり、そこで時間が取られてしまうと乗り継ぎがギリギリになってしまうケースもよくあります。直行便であればあまりそういうトラブルは起きませんが、乗り継ぎであれば使用する空港も選択した方が良いでしょう」

鳥海氏が教える乗り継ぎベスト空港

1 オーストリア ウィーン国際空港

2 スイス チューリッヒ空港

3 フィンランド ヘルシンキ・ヴァンター国際空港

「徹底的に乗り継ぎ客がスムーズに行けるターミナルの作り方をされているので、30分の乗り換え時間でもラクラク。荷物のオペレーションがしっかりしているのでロストバゲージの可能性もほぼありません」

鳥海氏が教える乗り継ぎワースト空港

1 イギリス ロンドン・ヒースロー空港

2 アメリカ サンフランシスコ国際空港

3 アメリカ ロサンゼルス国際空港

「ロンドンは便数が多いんですが、頻繁にターミナルが変わるので、2〜3時間は乗り継ぎ時間を確保しておきたいところ。アメリカの二つは入国審査に時間がかかると、乗り継ぎが危うくなってしまうので要注意です」

“スケールメリット”か“利便性”か

話を北京の大興国際空港に戻そう。この空港は手を広げたようなヒトデ型で、放射線状に伸びた部分がターミナルになっている。巨大な作りだが中心部から各先端部まで600メートルで、歩いても8分足らずだという。

「この形は、はっきり言って“異様”。放射線状のターミナルは贅沢なつくりで、相当広い土地がないとできないんです。資本主義国ではなく、共産国家だから実現できたんでしょう。中心部にショッピングモールなどを集中させることができますし、各ターミナルにも行きやすい。メリットは大きいですが、土地の狭い日本では絶対に真似できません」

この巨大国際空港ができることで、我々一般人にはどのようなメリットがあるのか。

「今でも中国経由ヨーロッパ行きの格安チケットは出ていますが、それがさらに増えるでしょう。中東経由より4〜5時間フライト時間が短いので、ヨーロッパに行きやすくなります。地方空港から中国行き、もしくは中国経由の便も増えますよ」

海外出張が多いビジネスマンや旅好きには喜ばしい一方で、気になるのが日本の空港事情だ。先に述べたように国際空港の大きさは、国の経済に直結する。ただ、国土の狭い日本において、大きさで勝負する空港はつくれない。このまま手をこまねいているしかないのか。

「日本のメリットは、アジアの一番東にあること。最近、日本経由アメリカ行きの便を利用するアジア人が増えているんです。日本の航空会社はサービスが良いですし、運賃的にも安いのが選ばれる理由でしょう。そして“スケールメリット”が難しければ“利便性”で勝負する。羽田空港や成田空港では出入国審査のスピードが旅客数に対して追いついていない感がありますが、そういった細かいオペレーションを改善していけば日本の空港もまだまだ勝負できます。

そして何より、目的地として東京の“エンタメ性”に魅力がありますからね。乗り継ぎの間に東京観光を楽しむ利用者も増えると思います」

“利便性”と“エンタメ性”、それを兼ね備えるべく、来年6月には羽田空港国際線ターミナル近くに日本最大級のエアポートホテルや飲食・物販施設、温浴施設やイベントホール、バスターミナルなどが完成予定だ。目的地として到着した人、乗り継ぎする人だけでなく、空港を利用しない人までも楽しめるよう、空港のまわりに複合商業施設を建てるという世界的空港トレンドをしっかり押さえた空港づくりは吉と出るか。空港の今後の発展に注目したい。

  • 取材・文周防美佳写真アフロ

Photo Gallary1

share icon記事をシェアする

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事