現場にいた加害者が語る『援交狩り』 少年少女による強盗致死事件

平成を振り返る ノンフィクションライター・小野一光「凶悪事件」の現場から 第24回

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

少年少女6人が2007年に起こした強盗致死事件。彼らは『援交狩り』と称して男性から金品を奪っていた。ノンフィクションライターの小野一光氏は、逮捕前の加害者の一人へ取材を行った。彼女が語った事件現場の様子をお届けする。

事件の様子を語ったA子さん。ショックを受け、深く反省した様子だった

『援交狩り』と称して、2007年1月に福岡県北九州市の28歳の男性を襲い、金品を奪おうとした容疑で、同年4月7日までの間に、少年少女6人が福岡県警に逮捕された。

だが、その逮捕容疑とは別に、彼らのうち少女1人を除く5人には、関与の疑いを持たれている”事件”があった。

それは同年2月に、山口県山陽小野田市の沖合で発見された男性の遺体について。遺体の身元は間もなく、福岡県飯塚市に住むX氏という30歳の男性だと判明したが、彼の乗る車は北九州市の門司港に放置されており、車内から発見された携帯電話には、逮捕された少女のひとりとやり取りをした記録が残されていた。

そうした経緯を友人の福岡県警担当記者から聞いた私は、すぐに現場へ向かうことにした。逮捕されたのは15歳の少女が2人と、16歳から19歳までの少年4人で、いずれも現住所は山口県だった。

その多くが山口県下関市の出身だったことから、私は下関駅の近くで聞き込み取材を始めることにした。すると間もなく、容疑者たちを知っているという少年から、気になることを耳にする。

「そういえばA子も(逮捕された少年少女と)一緒におったのに、普通に働いとるよ」

犯行現場にいた少女が、いまも下関市内のスナックで働いているというのだ。私は少年にスナックの名前とA子の店での源氏名を聞き出すと、ただちにそのスナックを探した。事前に得ていた情報によれば、A子の年齢は17歳だという。当然、17歳にスナックで接客させることは違法であり、そこが突破口になると考えていた。

客を装って店に入り、カウンターに座る。酒を注文し、最初に私の相手をした女の子に名前を訊くと、まさにA子だった。年齢を尋ねると18歳だと嘘を言う。彼女と雑談を交わし、しばらくしてからママを呼んでもらった。そこで私はまわりの客にわからないよう名刺を出し、自分が事件の取材をしていること、さらにA子が17歳であることを囁いた。ママの表情が凍りつく。

「知らんかった。私は彼女から18歳と聞かされとったから……」

未成年者を働かせていたことについて、言い訳を並べるママに、私は言う。

「私は彼女と外で話をしたいのですが」

本当はA子の年齢を知っていたであろうママは慌てて彼女を呼び、すぐに店を出るように促した。そしてA子は、私が取材場所として選んだカラオケボックスで、彼女が経験したことを淡々と語り始めたのである。

「そのとき一緒におったのは、私を含めて6人です。女は私とB子の2人で、男は同い年のC君とD君とE君、あとC君とD君の中学時代の後輩やったF君です」

B子は15歳、CとDとEは19歳で、Fは16歳とのこと。

「その日は、夜10時くらいにD君とE君とF君が遊ぼうといって、私の家に来たんですね。それでB子とC君を迎えに行き、6人で車に乗って小倉駅(北九州市)に行きました。遊びに行くって感じで、途中で『援交狩り』という言葉は一度も出ていません。で、小倉駅北口のロータリーで、B子とC君が車の外に出て、なんか話してたんです。そのうちB子がどこかに歩いていって、やって来た知らない車に乗りました」

その車を運転していたのがX氏だった。B子を乗せた車が走り去ると、A子を含めた5人は、あらかじめ行き先が分かっていたかのように、車で門司港を目指したという。

「車のなかで、どこに行くとか、なにしに行くとかは聞いてません。私にしてみれば、着いてみたら門司港やったって感じです。それで、海の手前のところに車を停めて、『俺らちょっと行ってくるけ、待っとって』と言い残して、C君とD君、E君が外に出て、海の方に歩いていきました。私とF君は車のなかに残ってました」

それから10~20分経ってから、C子を含めた4人が戻ってきた。

「C君は『オヤジがおって、そいつからおカネを取ろうとしたら、抵抗してきたんよ。それで殴ったら、逃げて海に飛び込んだ』と話してました」

その後、A子は彼らから、さらに詳しい説明を受ける。

「なんか、まず最初にC君が(X氏を)殴りよったそうです。それでその人が逃げて、E君が最初に追いついたんですよ。そこでその人に殴り返されて、殴り合いになったんですね。そこにC君とD君が追いついて、その人が地面に座って話し合いになったところで、急に走り出して、海に飛び込んだって……」

海に飛び込んだX氏を救助しようという行動はあったとA子は話す。

「その人が海に飛び込んだのを見て、C君は普通の様子でしたけど、その人を誘ったB子はかなり動揺していたそうです。で、D君やE君が近くにあったタイヤに紐をつけて、助けようとしたらしいんですけど、すぐにタイヤが沈んでしまい、だめやったみたいです。それで、震えるB子を気遣って、C君が『B子はどうしたい?』って聞いたら、『私、もう帰りたい』って。私ら全員が、そのときに(X氏が)死ぬとか全然思ってなかったんです」

Xさんの車が置かれたままになっていた門司港付近

犯行当時、少年4人は全員とび職の仕事をしており、Cを除いて3人は同じ会社だった。しかし犯行後にまずFが会社を辞め、続いて残る3人も会社を辞めていた。

「3月の終わりか、4月の頭か憶えてないんですけど、友だちの間で『B子が捕まったかも』って噂が流れたんです。それで調べたら、実際に警察署におることがわかったんですけど、そのときもなんの容疑かはわからんって感じやったし……」

X氏が生きているものと考えていたA子には、B子の逮捕理由がわからなかったのだ。だがB子のほかにC、D、E、F(加えて15歳の少女)も、冒頭の北九州市の男性に対する強盗未遂容疑で逮捕されていたのである。

「4月7日の夜に、友だちから『いますぐテレビのニュース見て』ってメールが入ったんです。そこでC君たち6人が捕まったことを知り、あと、あのときの人が死んどったことを知りました。すごいショックでした。それで悩んで両親に相談したんですね。そうしたら両親が警察に電話を入れて、今日、警察署で事情聴取を受けて来たばかりなんです。私は最初、なんも知らんけ関係ないと思ってましたけど、死んだ人の家族の気持ちを考えると、とんでもないことやと反省しています」

そう口にして消沈するA子を自宅に帰し、私はその週の発売号に、彼女へのインタビューを反映させた記事を書いた。

やがて、4月27日にA子はX氏に対する強盗致死容疑で逮捕され、同日にB子、C、D、E、Fも同じ容疑で再逮捕されることになったのだった。

  • 取材・文小野一光

    1966年生まれ。福岡県北九州市出身。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーライターに。アフガン内戦や東日本大震災、さまざまな事件現場で取材を行う。主な著書に『新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』(文春文庫)、『全告白 後妻業の女: 「近畿連続青酸死事件」筧千佐子が語ったこと』(小学館)、『人殺しの論理 凶悪殺人犯へのインタビュー』 (幻冬舎新書)、『連続殺人犯』(文春文庫)ほか

Photo Gallary2

share icon記事をシェアする

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事