50歳前後で「なんでもないところで転ぶ」のは必然だった | FRIDAYデジタル

50歳前後で「なんでもないところで転ぶ」のは必然だった

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突然転ぶことは、30~40代には少なかった。しかし、50歳過ぎから、小さな段差に足をとられてつまずいたり、なんでもないところで転んだりする人が増えてくる。

なんでもないところで転倒して大けがをしてしまうのは、なにも高齢者に限った話ではない イラスト:アフロ
なんでもないところで転倒して大けがをしてしまうのは、なにも高齢者に限った話ではない イラスト:アフロ

なぜ、50歳を境に人は転びやすくなるのだろうか。

そこで、約100万人以上の足形データを持つ『アシックス スポーツ工学研究所』の市川将(まさる)氏と楠見浩行氏に、その理由と老化の予防方法を訊いた。

50歳を境に、足のアーチがどんどん崩れていく!

なんでもないところで転倒して大けがをしてしまうのは、なにも高齢者に限った話ではない。「50歳ごろから、転倒には注意をしたほうがいいですよ」と語るのは、日本人の足を知り尽くした、『アシックス スポーツ工学研究所』の市川将氏だ。

「転倒しやすくなる原因の一つとして、50歳を境に足の筋肉が衰え、足のバランスが崩れることが挙げられます。我々の研究所は、1985年の設立以来、30年以上、日本国内外の足のデータを計測してきました。その、100万人以上の足形と歩行のデータを分析した結果、50歳から足の形が大きく変わることがわかったのです」(市川さん)

その変化とは、“足の幅が広くなる”ことに顕著に表れる。

「20代、30代、40代と年齢層別にデータを見ていて、大きな変化があるのは50歳です。個人差はありますが、50歳を境に、多くの人の足の幅が広くなります。原因は、足の5本の指をつなぐアーチ状の骨格が、加齢とともに崩れてくるからです」(楠見さん)

この、アーチ状の骨格が崩れると、足の裏にかかる体重のバランスも崩れて、幅が広がり、“開張足”と呼ばれる扁平な足になってしまうのだ。

足の「3つのアーチ」。このうち、最も弱いのが横アーチ。アーチを支える筋肉が少ないし、そもそも柔軟に動くような構造になっているので、崩れやすい (「究極の歩き方」アシックススポーツ研究所より)
足の「3つのアーチ」。このうち、最も弱いのが横アーチ。アーチを支える筋肉が少ないし、そもそも柔軟に動くような構造になっているので、崩れやすい (「究極の歩き方」アシックススポーツ研究所より)

足の形が変われば、足全体にかかる体重の負荷のバランスも変わる。特に開帳足の場合、指の付け根に体重がかかりやすくなり、足の指が地面から浮いてしまう状態、いわゆる”浮指”になる。その状態で歩くと、足の指をうまく使ってけり出せないため、つまづいて転びやすくなるのだ。

「この対策のためにやっていただきたいのは、足裏の筋肉を動かし、その衰えを少しでも遅らせることです。簡単な対策方法としては、床に敷いたタオルを足の指で握る・放すを繰り返し、引き寄せるトレーニングを続けることです。足の指には、曲げる筋肉(屈筋)と伸ばす筋肉(伸筋)があり、このバランスが崩れたり、加齢とともに萎縮(衰えしなびて縮むこと)してしまうことがあるのですが、その予防にもつながります」(市川さん)

特に現代人が注意したいのは、曲げる筋肉(屈筋)だ。これが衰えると、足の親指が常に反ったような状態になる“浮指”になる可能性が高くなる。

この“浮指”は、転倒しやすくなるだけでなく、腰痛や肩こり、むくみなど慢性的な不調との関連性を指摘する医師もいる怖い状態。とはいえ、ちょっとしたケアで予防ができるのだ。

「靴を履かない自宅では、なるべく足の指を使うように意識してください。5本指ソックスを履くなどして、足の指を使うように意識するのもいいでしょう。血行も深く関わっているので、夜眠る前などに、足の指を中心に足裏全体をセルフマッサージするのも有効です」(楠見さん)

さらに50代からは、より意識的に歩くことで、老人っぽい歩き方になるのを回避できるとともに、ちょっとした段差でつまずくこともなくなると言う。

「まずは、目線を前に据えます。そして肩を開いて背筋を伸ばす。次に腰を立てて、腰骨を左右に旋回させて大股で歩きます。すると、膝も伸びて姿も颯爽とします。歩く時は、かかとで着地し、親指の付け根でけり出すことを意識してください。また、やや速く歩くとよいでしょう」(市川さん)

「キネクト」という3Dセンサーを使った「NEC歩行姿勢測定システム」。体にマーカーをつける必要がなく、カメラに向かって歩くだけで、その人の歩き方の特徴が分かる(「究極の歩き方」アシックススポーツ研究所より)
「キネクト」という3Dセンサーを使った「NEC歩行姿勢測定システム」。体にマーカーをつける必要がなく、カメラに向かって歩くだけで、その人の歩き方の特徴が分かる(「究極の歩き方」アシックススポーツ研究所より)

速く歩く感覚は人によって異なるが、『アシックス スポーツ工学研究所』が運動効果を高める目的で提唱する理想の速度は時速7kmだ。具体的に、どのくらいの速さなのだろうか。

「1分間に約120m前進する程度です。50歳の方の歩幅に換算すると、1分間で150歩。なぜ、時速7kmかというと、走ることと歩くことの分岐点の速度だからです。科学的知見から考えて、この時速7kmというのは、走ることと同じくらいエネルギーを消費できる。また、歩くことは走ることに比べて、膝の痛みなどを引き起こす体への負荷が少ないのでおすすめです。この時はぜひ、ウォーキングシューズを履いてください。ランニングとは足への力のかかり方が異なるので、専用シューズを選ぶといいでしょう」(市川さん)

靴も足の老化に大きく関わっている。男性に比べて、女性のほうが足の老化が早い。それは、靴にあるという。

「30代の女性でも、50歳の足の形になっている人が少なくありません。それは、ヒールやミュールなどを履くことにより、足のアーチが崩れてしまっているのです。せめて長時間歩く時は、ウォーキングに適した靴を選ぶとよいでしょう。今、レディースのビジネスシューズにも、長時間歩行に適したものが多数登場しています」(市川さん)

また、靴選びのコツを伺うと、ホールドする部分と緩める部分の「メリハリ」が大切だという。

「足のアーチとかかとはしっかりホールドしつつ、親指の先には1cm程度のゆとりがあるものがよいです。足は、歩いているときに靴の中で前後に動くので、指を圧迫しないものがベスト。大きすぎる靴や、逆に足指にスキマがない状態の靴では、歩行時に足指をうまく使えず、浮指を誘発する可能性があります」(楠見さん)

足と歩き方は年齢を如実に物語る。もし、ちょっとした段差でつまずいたり、なんでもないところで転んだら、「足」の老化は始まっていると考えてもらったほうがよい。人生100年時代、いつまでも快調に歩き続けるために、一度自らの足と歩き方に少しだけ意識を向けてみてはいかがだろう。

 

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  • 取材・文前川亜紀イラストアフロ

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