李雪主&金与正に託された金正恩からのメッセージ
北朝鮮ファッション外交のツートップ
「李雪主(リソルジュ)夫人は、以前は緑や青の原色系の派手な服を着ることが多かった。グッチのバッグなどを持ち、北朝鮮国内でも贅沢をし過ぎではと批判が出たと言われています。今回の中国訪問で話題となったのが、彼女のベージュの質素な服です(1枚目写真)。金正恩(キムジョンウン)氏は黒い人民服を着ており、夫とのバランスを考えコーディネートしたのでしょう」
東京新聞論説委員で、朝鮮半島情勢に詳しい五味洋治氏が語る。
また、このところ外交の舞台で注目されているのが金正恩・朝鮮労働党委員長(34)夫人の李雪主氏(28)だ。彼女のファッションからは、巧みな外交戦術が垣間見える。3月の訪中では正恩氏に同行し、落ち着いた色の服を着こなして好印象で迎えられた。
「中国のメディアも『上品でセンスを感じる』と好意的でした。正恩氏の人民服は、父親の正日(ジョンイル)氏が着ていたのと同じモノです。『父の時同様に親密な関係を築きましょう』というメッセージが込められていましたが、李氏の質素な服はそれをうまく引き立てていたと思います。また年上で習近平総書記夫人の彭麗媛(ポンリーユァン)氏が派手な衣装で現れるのを見越して、『あなたを立てているんですよ』とアピールする意図もあったのでしょう」(前出・五味氏)
もう一人、話題となっている北朝鮮の女性がいる。2月に韓国で行われた平昌五輪で外交デビューした、正恩氏の妹・金与正(キムヨジョン)氏(30)だ。五味氏が続ける。
「彼女は宣伝扇動部という、正恩氏のPR担当部署の副部長です。裏方役ですから、目立たない黒っぽい服を着ることが多い。性格も人見知りで照れ屋。あまり目立つことを好まないと言われています。それが韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領との会談では、丈の短い真っ白なジャケットを着ていた。白は朝鮮半島の人々が好む色です。今でこそチマチョゴリ(朝鮮半島の伝統服)は色とりどりですが、昔はみんな白でした。伝統服を思わせる丈の短い服を着ることで、『同じ民族同士仲良くやろう』という対話姿勢を見せたのでしょう」(五味氏)
五味氏が驚いたのは、与正氏の帰国直後に撮られたとされる写真だ(2枚目写真)。
「与正氏は笑顔で正恩氏と腕を組み、兄妹の関係が良いことをアピールしていました。正恩氏は独裁者として恐れられ、常識が通用しない人物という印象があります。妹との親密ぶりをアピールすることで、そうしたイメージを払拭したい。女性の権利を大切にできる優しい指導者と思わせる狙いがあるんです。ただ騙されてはいけません。幹部女性のファッションや行動も、あくまで北朝鮮の印象操作の手段なのですから」
正恩氏は、女性ツートップの働きに満足していると言われる。外交の場での彼女たちの露出は、さらに増えそうだ。
写真:時事通信社