WC開幕!司令塔・田村優が語る「プレッシャーと向き合う決意」 | FRIDAYデジタル

WC開幕!司令塔・田村優が語る「プレッシャーと向き合う決意」

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日本の司令塔田村優。広い視野で状況判断をして、絶妙なパスやキックで相手ディフェンスを翻弄する
日本の司令塔田村優。広い視野で状況判断をして、絶妙なパスやキックで相手ディフェンスを翻弄する

その時が迫ってきた。ラグビー日本代表の司令塔を任される田村優は9月20日、4年に1度のワールドカップ日本大会の開幕戦に背番号10をつけて先発する。周りとスペースのありかをシェアしながら、ラン、パス、キックを自在に繰り出す。

さかのぼって7日には都内会場で、故障者を除く大会登録メンバーとともに結団式に臨んだ。対外的に言葉を発するのは「面倒くさい」とするが、いざ口を開けばストレートに思いを述べる。

身長181センチ、体重92キロの30歳。いつも遠くを見つめているような瞳をあちこちへ動かし、本番で発生しうる重圧について語る。

「もちろん、プレッシャーはとってもあります。期待が大きいのもわかっています。でも、僕自身はプレッシャーがある方が好きですし、そこから逃げるつもりはないです。まず、プレッシャーと向き合いたくなかったら、代表を辞めています。はい」

生まれは沖縄県浦添市。母の真奈美さんの地元だ。少年時代を過ごしたのは愛知県豊橋市だが、当時の思い出は長期の休みの日に過ごした沖縄でのものがほとんどだという。日本代表デビューを果たす2012年よりも前から「天才」と叫ばれてきた田村の、それがルーツだ。

越境入学した國學院栃木高でラグビーを始め、明大を経て入ったNECでは1年目の2011年度から活躍する。日本代表としては、歴史的3勝を挙げた2015年のワールドカップイングランド大会にも出た。

さらにそれ以降は、ほぼ常時スタンドオフのポジションを守った。裏を返せば田村にアクシデントがあればチームが大打撃を受けるとも取れるが、当の本人はそのリスクを最小化する努力をしている。

ジェイミー・ジョセフ現ヘッドコーチが就任した2016年秋の某日。練習前の田村は、イングランド大会前からチームへ従事していた井澤秀典トレーナーによるストレッチを受けていた。片足を逆側へ90度にクロスさせ、でん部を伸ばす。井澤は「彼はキックを蹴るから『このへん(足の付け根)』に『遊び』が欲しい」と、田村独自の身体感覚を解説。「キャリアのある選手は、自分の身体のことをよく知っている」といった旨の話も付け加えたものだ。

怪我のできない立場について、自らこう話していた。

「自分の身体がどういう身体か、何が(自分の身体に)効果的かもわかっている。自分にかける時間は、増えました」

ワールドカップイヤーの日本代表は、約60名いた候補選手を徐々に絞り込み。8月中旬から下旬までの北海道での合宿で、大会登録メンバーの31名を決めた。

公式発表の1日前にあたる8月28日、合宿地で大村武則総務が指揮官の決めたメンバーの名を読み上げる。

第三者から当確と見なされた田村も、この瞬間ばかりは緊張したという。誰にとっても、ワールドカップ出場は希少かつ貴重な体験なのだ。前回大会時の経験を踏まえ、当時の心境をこう言葉にする。

「えー、まぁ、2回目ですね。ああいう状況に出くわすのは。やっぱりドキドキしましたし、ずっと下を向いていました。自分の名前を呼ばれた時はホッとしましたし、ただ、その前に名前を呼ばれなかった人もいて…。何と言いますかね。…ずっと、下を向いていました。あまり、周りを見る感じではなかったです」

いざ本番。大会前最後の代表戦となった9月6日の南アフリカ代表戦では、7―41で屈した。会場の埼玉・熊谷ラグビー場では、自陣から大きくキックを蹴る際の判断や周りとの連携を課題に掲げた。同級生のリーチ マイケルキャプテンらリーダーシップグループの一員として、細部を詰めてゆく。

「今回の試合(南アフリカ代表戦)で、細かいことがどれだけ大事なのかがわかった。成長できるチャンスが来たな、と思っています」

日本大会では、オープニングゲームで久々に本戦出場するロシア代表と激突。以後は優勝候補のアイルランド代表、ダークホースのサモア代表、2016年6月に惜敗したスコットランド代表と順にぶつかる。

ここでは本人が常に言う「みんなにいいプレーをしてもらって、僕がいいプレーをする」の実現が求められる。フォワード陣が接点に相手を巻き込みつつテンポ良く球を出せば、別な箇所にできた穴を田村は堂々とえぐるだろう。

ベンチ入り選手を含めた他の22人の出来と田村のそれは、繊細かつ密接な糸で連なっている。海を愛する戦士はいまごろ、自分の体調と自分と周りとの繋がりを丹念に見つめ直していよう。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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