月80万も!K–POPファンによる「自腹」交通広告の不思議

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ソウル地下鉄駅構内にあるファンたちによるワイド広告(筆者撮影)

カフェや飛行機まで…過熱するファン広告

韓国・ソウルの駅構内を歩いていると、ふと見かける看板があります。それは、今をときめく人気K-POPアイドルたちが描かれた大きな広告です。一見オフィシャルのように思えますが、実はこれはファンたちが自主的に出している広告なのです。

広告の種類はさまざまですが、一番多いのが地下鉄のワイド広告と呼ばれるもの。弘大入口駅、明洞駅、三成駅、新沙駅など、人の集まる駅や繁華街に多く掲示されています。1ヵ月の広告費は安い場所なら17万円前後、高い場所では80万円ほど。弘大入口駅で最も人通りが多い9番出口の階段一面を使った広告なら、訴求効果はかなりのものなのです。

ポスター型は値段が安く人気

他にもバス停に出す広告もあり、こちらも値段はまちまちですが、平均して約20万円前後。一方で地下鉄構内のポスター広告は比較的安く、1ヵ月あたり約3万円で出すことが可能です。負担も軽く、気軽に出すことができるのでK-POPファンの間では人気の広告になっています。

最近ファンの中で流行っているのは「カフェ型」。アイドルの誕生日や周年記念のタイミングで、カフェの店内や入口にアイドルの写真を掲示したり、推しの写真を使ったデザインのカップスリーブでコーヒーを彩ったりするのです。もちろんカフェ自体は通常営業なので、一般のサラリーマンや学生も利用しますが、アイドル関係のイベント開催時には、多くのファンがカフェに集い、ちょっとしたオフ会の場になることも。K-POPファン以外にとっては、少し異様な光景に映るかもしれませんが、今の韓国では割と普通の光景になりつつあるのかもしれません。

最近ではカフェを使った広告も

きわめつけは、飛行機を使ったラッピング広告。今年の春、「EXO」のメンバーであるセフンの誕生日に、彼を応援する中国のファンサイトが、ある航空会社の飛行機をまるまる彼の写真でラッピングしたのです。この広告にいくらかかったのか…と、K-POPファンの間でも大きな話題となりました。

「自由すぎる」「やりすぎ」と思われる方もいるかもしれませんが、韓国ではこのような「自主広告」は当たり前の文化となっています。かくいう筆者も愛すべき推しのために広告を出したことのあるファンの一人。今回は、自身の経験をもとに、K-POPアイドルを巡るファンによる「自主広告」について、解説していきましょう。

実は誰でも今すぐに出せる「自主広告」

このファンによる自主広告、ハードルが高いように見えて、実は拍子抜けするほど簡単に出せてしまうのです。手順は以下の通り。

1.韓国の広告代理店にコンタクトを取る(希望する掲出期間のだいたい2ヵ月前がベスト)
2.掲出期間、広告のタイプ、希望する駅を代理店に伝える
3.代理店から、広告の掲出場所、掲出期間の候補とともに見積もりが届く
4.掲出場所と掲出期間を決定し、広告費を入金する
5.掲出10日前までに広告のデータを代理店に入稿する
6.掲出開始

ほとんどのことを代理店が行ってくれるため、枠さえ決まってしまえば、こちらは指示に従ってデザインデータを入稿するだけ。代理店によっては看板のデザインまでを請け負ってくれる場合も(デザイン料は別途かかる場合があります)。

デザインに制限はなく、掲示する際に必ず必要なのは出稿する団体の名称だけ。一個人だったり複数人によるファンクラブだったりと出稿主はさまざまですが、基本的には誰でもOK。日本など海外在住であっても広告費さえ出せれば掲出することができるのです。

アイドル写真の使用を事務所は黙認するケースがほとんど

広告にアイドルの写真を使いたい場合、「肖像権はどうなっているの?」という疑問も湧いてきますが、もちろん韓国にも著作権・肖像権は存在します。ただ、所属事務所にとってもこのような広告はアイドルたちの広報になるため、「規制がゆるい」というのが現状。事務所によっては、広告を出す際に申請が必要なこともありますが、ほとんどの事務所は申請なく、アイドルの写真を使用しても黙認されるケースが多いのです。

ただし、一部問題になった自主広告も。それはアイドルではなく、政治家の文在寅大統領の誕生日広告。誕生日である1月24日の前に、笑顔の文在寅大統領の写真と、それをお祝いするフレーズが書かれた大きな看板がソウル地下鉄駅構内に掲出されましたが、一政治家を祝福する広告の是非に関して、韓国内で様々な議論を呼びました。

ソウル交通公社はこの騒動に関連して、「将来的には個人の意見広告は出さないようにする」という基準を明らかにしましたが、これにK-POPファンたちが反応。個人や団体の主張や性・政治、宗教及び理念の関連した内容が入っている広報物をさす「意見広告」にK-POPアイドルの広告も含まれ、規制されてしまうのではないかとちょっとした騒ぎになったのです。

結局、ソウル交通公社は「ファンが自主的に出すアイドルの広告に関しては、『意見広告とはみなさない』」とし除外されることが発表されました。

自腹でも広告を出したいファン心理

なぜ彼女・彼らは、多額のお金を費やしてまで「推し」たちの広告を出すのでしょうか。簡単に言えば、

「好きなアイドルたちに花を咲かせたい」
「アイドル達が愛されていることを多くの人に知ってほしい」

という、純粋な「愛」によるものが多いようです。誰かのファンになった人なら分かるかもしれませんが、「推しの喜ぶ姿がみたい」、その気持ちだけでファンはなんでも出来てしまうものなのです。また、K-POPアイドル界では、ファンの広告の数がある種の「人気のバロメーター」的な意味合いがあり、ファンにとっては「負けられない戦い」なのです。広告の量や看板のクリエイティブは、人気のあるグループほど、より熾烈を極めて行くのです。

ファンの愛に溢れた自主広告たち(筆者撮影)

日本でアイドル広告は出せる?

では、日本の公共交通機関でも「推し」の広告が出せないものかと気になってしまいますね。筆者が東京限定で広告代理店に問い合わせたところ、「一部の交通広告なら出せる可能性がある」とのこと。

日本の場合、交通広告は「公共機関の広告として信頼性のある情報を提供する」という観点から、商業活動を伴わない個人が広告主には基本的になれませんが、ある代理店の回答によると、「ある一部の電鉄会社では、過去に日本のアイドルを応援する広告が出されたことがある」らしく、掲出できる可能性があるとのこと。

ただし、個人名での出稿は不可で、団体での申し込みという形が必要。また、広告に使うアイドル写真は事務所の許可が必要になるので、ハードルは少し高めかもしれません。広告費は駅によって異なりますが、B1サイズで1週間3万円からという駅も。

日本でファン広告を出すのはまだまだハードルが高いのが現実ですが、いつの日か渋谷駅がファンたちの愛に溢れたアイドル広告でジャックされる日がくるかもしれませんね。

  • 西門香央里

    東京在住のフォトライター。K-POP、韓国トレンド、旅行、グルメ、カルチャーなどを中心にWebメディアなどで活動中。推しには猪突猛進。年3~4回の渡韓でエネルギーを蓄えている。Real Sound、いまトピ、エキサイト、TABIZINE、SHELBEEなどに寄稿している。

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