佐々木、奥川だけじゃない! 大学生野手にドラフト候補がゴロゴロ | FRIDAYデジタル

佐々木、奥川だけじゃない! 大学生野手にドラフト候補がゴロゴロ

今年のドラフトは投手ばかりが騒がれているが、実は野手も粒ぞろいだった! 今からでも見に行ける大学生の逸材を小関順二氏が解説

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慶応大のヒットメーカー、柳町達。東京六大学で通算100本以上のヒットを放っている
慶応大のヒットメーカー、柳町達。東京六大学で通算100本以上のヒットを放っている

今年のドラフト候補は投手が主体だが、それは「上位に限って」という注釈がつく。中位・下位まで広げて見れば野手の候補は粒ぞろいで、とくに大学生は野手が頑張っている。9月22日現在、プロ野球志望届を最も多く提出しているのは東京六大学リーグで、この中にプロ注目の野手が多くいる。大学ごとに名前を挙げていこう。

法政大……安本竜二(三塁手)、宇草孔基(外野手)、福田光輝(遊撃手)
慶応大……郡司裕也(捕手)、柳町達(外野手)、中村健人(外野手)
早稲田大……加藤雅樹(外野手)、福岡高輝(三塁手)、檜村篤史(遊撃手)、小藤翼(捕手)

同リーグのドラフト候補で志望届を提出していないのは藤野隼太(立教大・捕手)、北本一樹(明治大・三塁手)くらいだから、今年の東京六大学リーグの主力はプロ野球に意欲的と言っていい。このうち、日米大学野球選手権の日本代表に選出されたのが安本、宇草、郡司、柳町の4人だ。

日米大学野球選手権で活躍が目立ったのは柳町。12打数6安打1打点、打率.500で首位打者に輝いている。この選手の大きな特徴は逆方向への打球が多いこと。この大会では6安打中4本がレフト方向に放ったもので、センター前、投手への内野安打が各1本で、引っ張った打球は1本もなかった。
3年春の大学選手権2回戦、苫小牧駒沢大戦では来年のドラフト1位候補、伊藤大海を相手に3本連続でセンター前に弾き返している。昨年秋のリーグ戦では3番を打っていたが今年は1番が定位置である。全打席全力疾走が持ち味。

宇草は日米大学野球選手権で柳町に次ぐ打率.333という好成績を残している。日米大学野球では1番を打つことが多かったが、7番に降格した第4戦で2安打を放ち、第5戦では1番に戻って2安打を記録し、日本代表の3大会ぶりの優勝に貢献した。
高校日本代表との壮行試合でも1番をまかされ西純矢(創志学園高)からライト前にヒットを放ち、このときの一塁到達タイムが俊足と認定できる4.15秒。このあと二盗にも成功して持ち味を十分に発揮している。

郡司は二塁送球のとき2秒を切る強肩で知られるが、投球練習最後の球を二塁に送球する「イニング間」で、毎回全力スローイングするわけではない。持ち味はここぞというときのスローイングである。最も記憶に残るのは3年春の大学野球選手権準々決勝、東日本国際大戦の2回裏の守り。
2死走者なしから6番がセンター前ヒットで出塁し、ピッチャーの一塁けん制悪送球で二進を許し、さらに7番打者の振り逃げで一、三塁のピンチを迎えた。ここで8番打者の二球目に一塁走者が二盗を試みるのだが、これを素早いスローイングでアウトにしている。スコアは3対0でリードしていたが、守りの破綻で失点を許せばズルズル崩れていく展開も考えられた。
バッティングでは4年夏の日米大学野球選手権の第4戦では6番・指名打者でスタメン出場し、4回と6回にいずれも先頭打者としてソロホームランを放っている。リーグ戦で打率3割以上記録したのが17年春、18年春の2度しかないのは不安要素だが(いずれもこのときベストナイン)通算9本塁打の長打力は魅力があり、2〜3位での指名は十分可能性がある。

他リーグに目を転じれば東都大学リーグの佐藤都志也(東洋大・捕手)がスカウトの注目を集めている。長打を秘めたバッティング、内野安打のときの一塁到達4.3秒台を切る俊足、さらにイニング間で安定して1.9秒台を記録する強肩など、見事に三拍子揃っているのだ。
持ち味を発揮したのが高校日本代表との壮行試合だ。1死二塁の4回裏、西純矢からライト前ヒットを放つと一塁ベースを4.31秒で通過し、二進を狙い憤死するのだが(打点1)、ひとつ先の塁を狙う積極的な走塁は春先に「ドラフト上位候補」と騒がれるだけのことはある。

東都大学リーグでは佐藤以外、山田知輝(東洋大・外野手)と2部リーグでプレーする高部瑛斗(国士舘大・外野手)がプロ志望届を提出している。2部と言っても実力校が揃う東都なので、ここで120安打を記録している高部は無視できない存在である。

172cmと小柄だが強肩、強打で大学生No1.の捕手と評価される東海大・海野隆司
172cmと小柄だが強肩、強打で大学生No1.の捕手と評価される東海大・海野隆司

同じキャッチャーとして、東洋大の佐藤や慶応大の郡司を上回る評価を与えられているのが東海大の海野隆司だ。4年夏の日米大学野球選手権では15打数3安打、打率2割と低調だったが、チームナンバーワンの5打点を挙げ、勝負強さを強烈にアピールした(打点2位は郡司の2)。高校日本代表との壮行試合では2回に左腕・宮城大弥(興南高)の145キロのストレートをセンター前に弾き返し、4回にはやはり宮城の高めストレートを強烈に押し込んでレフトスタンドにソロホームランを放り込んでいる。
この壮行試合ではイニング間の二塁送球が1.95秒を記録し、一塁走者へのけん制では私の計測で最速1.55秒を記録した。これはプロも含めてトップクラスのタイムである。プロ野球界の捕手不足を見れば外れ1位も十分に考えられる。捕手不足の中日、DeNA、オリックス、楽天などの指名が有力だ。

投手は広く全国から候補を集めよう。津森宥紀(東北福祉大)、髙橋佑樹、津留﨑大成(ともに慶応大)、森下暢仁、伊勢大夢(ともに明治大)、吉田大喜、北山比呂(ともに日本体育大)、山田綾人(玉川大)、杉山晃基、小孫竜二、望月大希(いずれも創価大)、大西広樹(大阪商業大)、浦本千広(九州産業大)、小川一平(東海大九州キャンパス)が注目の本格派である。

森下が入札1位候補、津森が上位候補、そのあとを伊勢、吉田、杉山、大西、浦本、小川が追う形になる。いずれも140キロ台後半から150キロを越えるストレートを備えているので評価を左右するのはコントロールと変化球の質。森下は別格として、ここでは杉山を紹介したい。
私が見た中で最もよかったのは今年夏の大学選手権1回戦、大阪工業大戦のピッチング。ストレートの最速は149キロ(自己最速は154キロ)を計測し、それ以上に縦・横2種類のスライダー、130キロ台前半のスプリットのキレがよかった。5回まで毎回の6三振を奪い、そのうちの5個はスプリットとスライダーで取っている。
高低、内外、緩急すべてを活用して、スプリットは見逃されてもストライクを取れる球。115キロ程度の大きい縦変化のカーブのコントロールもよく、私の中では森下に次ぐ大学生の投手である。

大学の秋季リーグはまだ中盤戦に差しかかったところなので、すぐ足を延ばせば有力候補を自分の目で見ることができる。秋の行楽気分で是非楽しんでいただきたい。

 

  • 小関順二

    1952年神奈川県で生まれる。日本大芸術学部文芸学科卒業。『プロ野球問題だらけの12球団』(草思社)は2000年以来20年に及ぶ年度版として現在も継続し、スカイAが中継するドラフト会議では1999年以来、今年で21年目となる指名選手の解説を担当している。主な著書は『「野球」の誕生』(草思社)、『ドラフト未来予想図』(文藝春秋)、『野球力 ストップウォッチで判る「伸びる人材」』(講談社α新書)など多数。

  • 写真時事通信社

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