ドラマ『全裸監督』で女優・森田望智が「黒木香を演じたワケ」
豪華セットでリアルな演技ができたのは、制作費が「1話1億円」のネットフリックスだから
「オーディション中、ほかの候補者の方の演技に感動して泣いてしまったんです。武正晴総監督をはじめ、監督たちにはそれが印象に残ったみたいです。実は、私が参加する前から何度かオーディションは行われていたらしいのですが、なかなかピッタリの女優さんが見つからなくて、『ヒロイン役は、オーディションで選ぶのではなくオファーにしようか』という話まで出ていたとも耳にしました。そんな状況のなか、監督たちが最後に私を選んでくれて、信じられないほど嬉しかったです」
そう話すのは、ネットフリックスのオリジナルドラマ『全裸監督』でヒロインを務めた、女優の森田望智(みさと)(23)である。
8月8日に世界190ヵ国に同時配信された『全裸監督』は、配信直後から話題を呼び、翌週にはシーズン2の制作も決定した。森田が演じたのは、往年のAV女優・黒木香(かおる)。高学歴でお嬢様風の美女でありながら、ワキ毛を生やしたり「ハメ撮り」に挑んだりしたことで、当時の人々を驚かせた伝説の女優だ。
「オーディションのお話をいただいたとき、迷わず『受けます』と答えました。以前から尊敬していた武監督がメガホンをとるドラマだったので、絶対に出たくて。黒木さんについては、『受けます』と答えた帰り道で詳しく調べて、あまりの個性の強さにビックリしました(笑)」
黒木が生きてきたAV業界は、森田にとって未知の世界。そこで、ストリップショーを観に行き”魅せ方”を勉強した。
「初めはストリップショーに出ている女性に対して、『なぜこの仕事をしているんだろう』と、一種の偏見のような感情も抱いていたんです。でも、真剣に踊りや盛り上げ方を追求する彼女たちを見ていると、『女優やほかの仕事と何も変わらないんだ』と思うようになりました。
黒木さんに対する考え方も、役作りをするなかで変わっていきました。私が考える黒木さんは、『人から愛されたいと願う純粋な女性』。彼女は厳格な母親のもとで本心を抑えながら育った。だから、どこかで『本当の自分を見てほしい』という気持ちがあったと思います。ワキ毛を生やしているのも、あえて自然体でいることで、『そんな自分も愛してほしい』と言いたかったのではないでしょうか」
テレビドラマでは無理だった
ネットフリックスで制作された『全裸監督』は、全世界1億人以上に同時配信されたため、注ぎ込まれた金額もケタ違いだった。日本のテレビドラマの平均的な制作費が1話あたり2000万円ほどのところ、本作には1億円ほどかけられていると言われている。
「驚いたのは、セットの豪華さと緻密さ。棚の中身まで再現されているし、『サファイア映像』(劇中で黒木が所属するAV制作会社)などの建物だけではなくて、街全体がセットとして作られている。だから、屋内から窓越しに街の様子を撮ることもできて、表現の幅が広がります。役者としても、屋内セットから出ても現実に引き戻されることがないので、常に役に入り込んでいられる。リアルな演技ができたおかげか、海外のファンの方も増えました。SNSでは英語、フランス語、中国語とさまざまな国の言葉で応援のメッセージをいただいています」
190ヵ国の視聴者から評価されたヒット女優・森田の次の夢は、「映画祭のレッドカーペットの上を歩くこと」だという。ネットフリックスで世界的に知名度が上がった森田にとって、それはもはや夢ではなくなったのだ。
「本当の自分を愛してほしい」
それが黒木さんの願いだった
『FRIDAY』2019年10月4日号より
- 撮影:會田 園