吉本興業「極秘コンプライアンス資料」で分かる”形だけ”反社対策

早朝6時からの研修で、ほとんどの芸人は居眠りで真剣に話を聞かず……

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6月27日、都内の劇場で「緊急コンプライアンス研修」が開催され、吉本芸人が招集された

吉本興業の”闇営業”騒動は現在、沈静化している。そんななか、本誌は’17年、’18年に吉本が若手芸人に向けて配布した、社外秘の『コンプライアンス研修資料』を入手した。

資料は全19ページの小冊子。表紙を開くと、中身は知的財産権、異性関係、飲酒トラブル、SNSを利用する際の注意点など多岐にわたり、意外にも充実している。24時間対応のホットラインの連絡先まで書かれているという親切ぶりだ。

だが、一見完璧にも見えるこの資料をよくよくひも解いてみると、吉本で”闇営業”が繰り返された理由が見えてくる。本誌に資料を提供した、吉本所属の若手芸人・Aはこう語る。

「僕は、吉本が本気で反社会的勢力を排除しようと努力してきたとは思えません。現に、ここ数年、コンプライアンス研修はどんどん”手抜き”な内容になってましたから。見てください。例えば、’17年版資料の『違法/誘惑的なアルバイト』の欄には、『おいしい話のウラには反社会的勢力が関わっている可能性がある』という旨が説明されてますが、’18年版の同じ箇所からは、反社に関する記述がそっくり削除されてるんです」

Aは大阪出身の若手芸人。自身も先輩芸人を通して暴力団関係者と思われる団体への”闇営業〟”に誘われた経験があり、以後、吉本興業と反社会的勢力との密接な関係に疑問を抱いてきたという。

「反社についての記述が削られてる理由は、その分、増えた内容があるからです。例えば、’17年版で触れられていなかった『SDGs』(環境問題などについての『持続可能な開発目標』。吉本は国連と組んで推進・普及活動を行っている)は、’18年版で1ページも割(さ)かれて説明されてる。もちろん、これも大事な内容やとは思います。でも、ウチの会社は、’11年に紳助さんの問題なんかもあったし、削るのは反社の部分じゃなかったはずです」

さらに、問題はそれだけではないとAは言う。

「僕が記憶してる限り、’09年に研修が始まって以来、この冊子は毎年配られてました。でも、”闇営業”報道が出る直前に開かれた今年春の研修では、冊子が配られなかったんです。唯一配られたのは、コンプライアンスとはまったく関係ないチラシのみ。なぜか、ハヤりの『バーチャルユーチューバー』を仕事に活用するよう勧める内容でした。そのチラシの裏に、研修の概要くらいは書かれてた気もしますが、そんなもの誰も見ませんよね」

Aによると、研修は集中して話を聞けるような環境でもなかったという。

「断言します。芸人はほとんど皆、研修の内容を聞いてません。でも、それももっともなことやと思います。だって、会場となっている吉本の劇場が空いてる時間ってゆうたら、だいたい夜の10時から朝の8時くらいまでです。前日、夜遅くまで営業活動やネタ作りをしてた芸人が、翌朝6時に『研修や』ゆうて呼び出されたら、そりゃあ、眠くもなりますわ。吉本の社員さんらも、寝てる芸人を注意したり、話の内容に興味を持ってもらおうと工夫したりしてるわけでもなかった。ただ、恒例行事として淡々とこなしてる印象でしたよ」

Aが語る実態のように、とりあえず冊子を作り、とりあえず研修を行うことで、「コンプライアンスに力を入れている」というポーズを取る企業は多い。だが、実際は中身が伴っていない場合も多いと、弁護士の若狭勝氏は言う。

「研修の目的が『コンプライアンスを社員に守らせること』ではなく、『コンプライアンスを大事にしている企業だと世間に思ってもらうこと』だから、研修に実効性が伴わないのでしょう。吉本興業は’09年に上場を廃止し、外部から反社との関係など面倒な話についてツッコまれにくくなった。だからこそ、いっそう自らを律して、コンプライアンスを徹底するべきだったのではないでしょうか」

形だけのコンプライアンス研修を続けていたら、吉本はまた同じような不祥事を起こすのではないか。

『FRIDAY』2019年10月4日号より

  • 撮影齋藤雅昭(コンプライアンス研修)

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