スマホを持たないアイルランド代表史上最高の主将、ベストが描く夢

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22日のスコットランド戦で4度目のW杯ピッチに立ったHOベスト(アフロ)

ラグビー日本代表(世界ランキング9位)は開幕戦でロシア代表を30―10で下して勝ち点5を得て好発進を見せた。「ブレイブブロッサムズ(=桜の戦士たち)」が28日(土)に対戦するのは、ワールドカップ(W杯)の開幕前は世界ランキング1位に立っていた、プールAの中で一番の強敵でアイルランド代表(同2位)である。

シャムロック(シロツメグサ)のエンブレムをつけた、緑のジャージーのアイルランド代表。サッカーも強豪として知られるが、実はラグビーはサッカーの代表とは違って、アイルランド共和国と、いわゆるイギリスの北アイルランドの両方の選手が混成されたチームである。

それは、アイルランドラグビー協会が、アイルランドが南北に分かれる以前から存在していたことによる。つまりアイルランド島のクラブでラグビーをしている選手たちの代表というわけだ。そのため、国歌斉唱の時は、1995年W杯を機に作られた、ラグビーの代表チーム専用のアンセムである「Ireland’s Call(アイルランズコール)」を歌う。

今大会に出場する、北アイルランド出身の選手は、31名中4人いる。LOイアン・ヘンダーソン、CTBクリス・ファレル、WTBジェイコブ・ストックデール、そして37歳のキャプテンのHO(フッカー)ローリー・ベストもそうだ。

2016年からはキャプテンも務めている身長180cm、体重110kgのベストは、スクラム、ラインアウトとセットプレーの要であり、ボールキャリアとしても確実に前に出て、モールからのトライもお手の物。すでにW杯は今大会で4度目だ。代表キャップは120を超え、アイルランド代表では5人目となる100キャップを達成した。

ベストは家族経営の農家の出身で、2008年に引退した、やはり元アイルランド代表PR(プロップ)の兄・サイモンの後を追うようにラグビーを始めた。イングランドのニューキャッスル大学に進学し農業を学び、あわせてニューキャッスルのアカデミーでもプレーした経験を持っている。

2004年に兄と同じ北アイルランドのクラブ、アルスターに入り、2011-12シーズンは欧州クラブ王者決定戦で優勝こそできなかったが、決勝進出の原動力のひとりとなった。

国際舞台でも2005年11月のニュージーランド戦で初キャップを獲得、2006年の南アフリカ代表戦で先発出場を果たした。その後は2007年、フランスW杯に初出場し、2009年にはシックス・ネーションズのグランドスラムも経験するなど、アイルランド代表のFWを引っ張り続け、同年の北米遠征では、主力選手たちがブリティッシュ&アイリッシュライオンズ遠征に参加していたため、キャプテンを務めた。

2011年のW杯にも出場し、2014年、2015年はシックス・ネーションズの連覇にも貢献し、2015年には3度目のW杯を経験した。2013年のブリティッシュ&アイリッシュライオンズのオーストラリア遠征では、レフリーに暴言を吐いたイングランドの代表HOディラン・ハートリーに替わり、スコッドに選出。同チームの2017年のニュージーランド遠征にも参加した。

ベストは2016年、2018年と「オールブラックス」ことニュージーランドを破り、アイルランド史上最も成功したキャプテンと言われる。所属クラブのアルスターではもう少しプレーを続けるかもしれないが、今回のW杯で代表引退を表明している。

寡黙だがチーム愛は人一倍

今大会が始まる前、イギリスのEU離脱問題、いわゆる「Brexit(ブレクジット)」が取りざたされ、そのことが南北の混成チームであるラグビーアイルランド代表に何かしらの影響を与えるのではと問われたベストは、「ブレグジットの問題は、誰もその問題が何であるかを実際には知らないということだ。しかし、アイルランドのラグビーの素晴らしいところは、二つのアイルランドが一緒にプレーしたり、高め合ったりするということが常に中心だったことだ。ワールドカップは、私たちが世界の舞台でそれを見せるための素晴らしい機会だ」と答えた。

寡黙な男だが誰よりもチームを愛し、アイルランド島のチームであるアイルランド代表のジャージーに誇りを感じている。

22日、横浜国際競技場で行われたプールAのビッグマッチで、アイルランド代表は難敵であるスコットランド代表をノートライに抑えて27-3で下し、ボーナスポイントも得て、勝ち点5を獲得した。

キャプテンのベストは「今までは数人の選手に頼るようなチームだったが、今のアイルランド代表は、BKもFWもワールドクラスのタレントが揃っていて、素晴らしいコンビネーションでチームとして戦える強さを持っている」と胸を張った。

もともと静かな暮らしを好み、インターネットもほとんど見ず、スマートフォンも使わないため、twitterもinstagramも開設していないという自他と共に認めるアナログ人間である。アイルランド代表は過去8大会で、準々決勝の壁を突破できていない。ベストは愛するチームを初のベスト4以上に導いて有終の美を飾り、家族とともに牛や鶏を育てながら田舎暮らしを楽しむつもりでいる。

  • 取材・文斉藤健仁

    1975年生まれ。ラグビー、サッカーを中心に、雑誌やWEBで取材、執筆するスポーツライター。「DAZN」のラグビー中継の解説も務める。W杯は2019年大会まで5大会連続現地で取材。エディ・ジョーンズ監督率いた前回の日本代表戦は全57試合を取材した。近著に『ラグビー語辞典』(誠文堂新光社)、『ラグビー観戦入門』(海竜社)がある。自身も高校時代、タックルが得意なFBとしてプレー

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