ラグビーNZ代表オールブラックス 新橋で味噌ラーメンを食す
ラーメン店に現れたのはラグビー界のスター、ボーデン・バレット。世界一の選手ながらファンとの記念撮影にも笑顔で応じる気さくぶりだった
9月22日午後7時すぎ。東京・新橋駅前にある庶民的なラーメン屋のカウンターに大柄な外国人男性たちが座っていた。写真入りのメニューをじっと見ると、各々この店の看板メニューである味噌ラーメン(750円)、餃子(280円)などを頼む。中央の白Tシャツ姿の男性は、笑顔でビールの大ジョッキ(420円)を空にした。箸を上手に使い、30分ほどして食べ終わった後も、仲間たちでゆったりと談笑している。外国人観光客も多い新橋では、珍しくもない光景なのだろう。だが白Tシャツの彼こそは、前夜、ラグビーワールドカップ南アフリカ戦で「マン・オブ・ザ・マッチ」に輝いたニュージーランド代表オールブラックスのボーデン・バレット(28)だ。’16年、’17年と2年連続で世界最優秀選手に選ばれ、’18年にはフランスのチームから3年1000万ドル(約10億7300万円)のオファーがあったと報じられたスーパースター。宿舎前では、群がるファンに対して笑顔で記念写真に収まりサインをし、ホテルへ戻っていった。
「ラグビー選手は、どんなスーパースターでも、日本に限らず、滞在先の街を普通に歩いています。前回のイングランド大会でも、試合前日にパブで飲んでいる姿を見かけました。激しい肉体競技であるからこそ、オンとオフを上手く切り替えられない選手は一流になれないのです」
と言うのは、長年ラグビーを取材してきたライター・宮崎俊哉氏だ。
「とりわけニュージーランドという国にとってラグビーはただのスポーツではありません。オールブラックスのジャージを着ることは、国そのもののヒーローになることを意味します。ボーデンは欧州でプレーすれば何億円も稼げるのに、それを断って6000万円程度しかもらえないまま、オールブラックスの一員であることを優先しているのです」
威張らず飾らず、ファンへの優しさも失わない――そんなラグビープレイヤーの神髄を体現したような男たちが、今大会の主役なのだ。
『FRIDAY』2019年10月11日号より
- 撮影:足立百合 渡部薫(3枚目)