元日本代表・大西将太郎が語るアイルランド戦3つのポイント | FRIDAYデジタル

元日本代表・大西将太郎が語るアイルランド戦3つのポイント

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(撮影・谷本結利)
(撮影・谷本結利)

ラグビー日本代表は28日、グループリーグ第2戦で世界ランク2位のアイルランド代表戦に挑む。2007年W杯の日本代表で『ラグビーは3つのルールで熱狂できる』(ワニブックス)を上梓した大西将太郎氏が、アイルランド戦で熱狂するための3つポイントを語った。

アイルランドに決して派手さはありません。でもラグビーに必要な、体を張る、タックルするといった献身的な面、ボールを持っている選手を絶対に孤立させないことを当たり前に徹底できるスキのなさが最大の強みです。今日の日本代表の立ち位置は、20日の開幕戦で日本代表に挑んだロシア代表の立場です。したがって、日本代表に求められるのは、積み上げてきたことをいかに100%近く遂行できるか。4年前に南アフリカ代表を倒した「ジャイアントキリング」の再現に必要な3つのポイントをお話します。

【1 規律、我慢】

アイルランドにスキを生み出すためには、彼らに焦らせないといけません。前半はリードして折り返せるのが理想ですが、リードを許したとしても2トライ2ゴール差以内に抑えたい。そのためには、簡単にトライをとられないこと、簡単にPGを与えないことがカギになります。

アイルランドは戦術的、精神的な部分な支柱のSOセクストンが欠場します。キックを軸に戦術を組み立てるセクストンと違い、今年に入って代表デビューした先発のカーティーはランで仕掛けるタイプ。国際試合の経験も浅いので、ディフェンスのラインスピードをあげて、彼にプレッシャーをかけたい。そして、ファーストタックルでいかに相手選手の体に食い込みたい。それができれば、ボールを奪うことができなくても、守備の「規律」を守り続けて、「我慢」することができます。ボールを持ったアイルランドの選手に対して、最初にタックルしにいく日本代表の選手に注目してください。

【2 キック処理】

ロシア戦でもポイントにあげましたが、FBトゥポウが相手に蹴られたボールを補球できず、先制トライを許しました。そのトゥポウが左WTBに回り、右WTBはロシア戦と変わらず松島幸太朗、FBに山中亮平を抜てきしました。相手がが蹴ってきたボールを日本が捕球したら、山中やSO田村優のキックで蹴り返して陣地をとりに行くでしょう。お互いがキックを蹴りあう「応酬」の後、アイルランドがボールを持って前進してきたときにいかに体に食い込むタックルで仕留められるか。そして2人目がいかにボールに速く寄ってボールに絡めるかが、アイルランドに勝つためのポイントです。

21日のスコットランドに完勝したアイルランドは、スクラムは10本中10本、ラインアウトも12本すべて確保しました。つまり、セットプレーで日本代表が相手ボールを奪うことは難しい。ですから、田村や山中がどれぐらい敵陣深くに蹴りこめるか。そして1にもつながりますが、アイルランドがボールを持って走り出したときの日本代表の最初のタックラーに注目してください。

【3 信じる】

この言葉は、試合の展望記事であまり使うべき言葉ではないかもしれませんが、4年前、日本代表は自分たちが積み上げてきたことを信じ切ったからこそ南アに勝った、という歴史があります。私の経験から言っても、W杯は技術を越えた部分が勝敗を左右します。周りの方から、「どの監督さんのやり方が一番いいか」とよく聞かれるんですが、戦い方や、どんな手法で選手を導くかはあまり重要ではない。むしろ、監督が「こう行く」と決めたプランに対して、選手が信じ切って遂行することがもっとも大事で、勝利に近づく条件だと思います。

そういう意味で、私が今回、気になっているのがリーチマイケルが先発から外れたことです。このビッグマッチでどうして主将を外すのか。リーチがかりに体調面で万全でなかったとしてもピッチにいない影響は少なからずあると思っています。

彼は非認知の部分、目には見えない部分でも役割を果たしています。ロシア戦で、本来の力を出せていなかった田村が後半、40mほどのPGを決めて吹っ切れたました。私も試合会場で2人のやり取りを見ていましたが、PGの権利を得たときに蹴りたくなさそうな様子だった田村に、リーチが「蹴れ」と言ったんだろうなと予想していました。私も日本代表のキッカーだったので、あまり調子がよくないときはゴールを狙わず、ちょっと逃げたくなる気持ちはよくわかります。でもそういう時に、主将から「外してもいいから思い切り蹴れ」と言われると、肩の荷が下りるんですよ。だから田村は思い切り足を振りぬいて決めることが出来たし、あの一言は大きかったと思います。リーチが、田村を生き返らせたんです。プレー以外の、目には見えない部分でもチームに力を与えられるからこそ主将なんです。

ただ、リーチがいないのと同じく、アイルランドも精神的支柱のセクストンがいないので、条件は同じです。ジェイミー(ジョセフ・ヘッドコーチ)が積み上げてきた「ONE TEAM」の真価が問われると思います。

<プロフィール>

大西将太郞(おおにし・しょうたろう)

1978年、大阪府生まれ。布施ラグビースクールでラグビーをはじめ、大阪・啓光学園(現・常翔啓光学園)で全国大会準優勝。高校日本代表では主将もつとめた。同志社大学を卒業後、ワールド、ヤマハ発動機、近鉄、豊田自動織機で活躍。トップリーグでは通算143試合に出場。日本代表は大学4年時から選ばれ、通算33試合に出場。W杯は2007年フランス大会に出場し、カナダ戦で終了直前に同点ゴールを決め、日本代表のW杯連敗記録を13で阻止した。

(写真:アフロ)
(写真:アフロ)

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