デマだらけの「薄毛」対策。だが、効果ある治療法はわかっていた!

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2015年11月、NHKのラジオ番組内で紹介された「抜け毛を科学する」が、今再びネットで話題になっている。内容は毛髪研究の第一人者、板見智医師が抜け毛や育毛について解説したもの。

きっかけは昨年末に、ある男性がアップしたtweetだった。この番組内容を紹介したところ、現時点で10.9万「いいね」を獲得! まずはtweet内にまとめられた板見先生の見解を見てほしい。

ラジオ番組での板見先生とアナウンサーのやり取りがtwitterで話題に。上記はそれをまとめたもの(@boooonsaiより)

これでは身も蓋もないではないか。いや、もしかするとその後の研究で新展開があったかもしれない。そこでささやかな希望を胸に、板見先生に一問一答を決行した。

男性型脱毛症のメカニズムは、ほぼ解明されている!

その後、何か効果があるとわかったものは…。

「ないです。残念ですが」(板見智先生 以下同) 

皮脂などの汚れで毛穴が詰まることも?

「毛の成長には影響なしです。接着剤などを詰めたらありえますが…」 

叩いて血流をよくするのも?

「365日、24時間叩き続ければ多少効果はあるかもしれないが、そんなことしたらバカにされます」 

ダメ押しですが、やはり海草類も?

「特定の食品や成分が有効なわけではありません。若い女の子が無理なダイエットなんかをするけど、2〜3ヵ月するとバサバサ抜けますよ。身体に悪いことをすると髪にもダメージが出る」 

ぐうの音も出ないとはまさにこのこと。ならばなぜ、今でもこれらの民間療法は有効だと信じられ続けているのだろうか。

「以前は男性型脱毛症になる理由がわからんかったからですよ。今でも提唱する人は何の根拠を持っているのか、逆に知りたい。多分、元は特定の商品を売るために、そんなキャッチコピーを使ったのでは? そんなのは五万とあります」

生き残る道はふた通り

男性型脱毛症のメカニズムは、今では9割方、明らかになった。まず遺伝があり、それに基づいて男性ホルモンが毛乳頭細胞に働くと、そこから毛髪を作る細胞の分裂を止める分子が出てくるという。

父親も祖父もフサフサだから大丈夫と言う人もいますが。

「それは単に家系をよう調べていないだけのこと。現在は網羅的遺伝子解析がされて、わかっているだけでも90個くらいの遺伝子との相関があると言われています。だから親がハゲでなくっても、家系を辿っていくと、そういう人がおる可能性がありますね」

つまり母親、父親どちらかの先祖や血のつながった親せきにハゲがいたら、それがいきなり自分にやってくる可能性があるのだ。なんという恐怖。

「遺伝は変えられない。でも治療は可能です。 

治療にはふたつの選択があって、ひとつは毛乳頭細胞が成長するものをたくさん出す方法。この治療に使用されるのが、リアップなどに配合されている『ミノキシジル』という成分。今から約30年前に米国で育毛剤として有効性が確認されました。国内では20年ほど前から発売されています。 

もうひとつは男性ホルモンが強力に働くための酵素を止める方法。そうすれば弱っちい男性ホルモンしかないわけだから、そんなに進行せえへんのちゃうかということで、その酵素を抑制する成分『フィナステリド』の有効性が米国で確認されたのが20年前。国内では15年前から商品名はプロペシア錠などで発売され、こちらは医療機関で処方箋をもらって購入する飲み薬です。 

このふたつの治療効果を上回るものは、世の中にはまだないです」 

えっ!?  あの水谷豊さんがCMに出ている!? いきなりなじみのある名前が出ましたが、リアップ(ミノキシジル)は効くかもしれないんですか?

「“かも”は要らない。効きます。 

ミノキシジルとフィナステリドは、日本皮膚科学会のガイドライン(※)でも推奨度はAで、ともに90%の人に現状維持効果があるというデータが出ています。その中で明らかに良くなる人は、3〜4割。爆発的に増える人も15%くらい。その後承認されたデュタステリドも推奨度はAで、フィナステリドより効果が出るのが早いと言われています。推奨度にはAからDまであって『こんなもん使たらあかん』いうのはDなんですよ。一般の人でも見ることはできますから、一度ご覧になったらいい」 

なんという力強いお言葉! ミノキシジルは、本来血圧を下げるための薬だが、服用した患者の多くに“多毛症”の副作用が認められたことから、発毛剤の成分として研究が進んだのだという。ミノキシジルの外用(身体の外側から効かせること)薬は、薬局での対面販売のほか、処方しているクリニックもあるという。 

信頼できるクリニックの見分け方とは

一般的な薄毛の治療は残念ながら保険適応外。それって、お高いんでしょうか?

「今はプロペシアもジェネリック医薬品が出てますから、薬剤の値段が場合によっちゃ通常の6割くらいですむこともあるやろうし、診察料もクリニックによって幅があると思います」 

では、どのようにクリニックを選べばいいでしょうか? 

「怪しいのはミノキシジルの飲み薬を出しているところ(上記ガイドラインで、内服はD)。非常に安全域が狭い薬なので、そういうクリニックは避けた方がいい。“日本臨床毛髪学会”で評議員などをしているクリニックなら信用できると思います」 

ちなみに、薄毛対策に予防は全く必要ない。「なぜなら、ある程度進行し出してからで充分間に合うからです」という板見先生の言葉には、思わず手を合わせたくなった。

トランプ米大統領は2018年2月23日の保守政治行動会議での演説中、自身の髪について珍しく公の場でコメント。「ハゲ」に悩んでいることを認めた(写真:アフロ)

薬以外には、自毛移植というテもありますね。

「後頭部の皮膚を切り出して毛包を株分けし、1本ずつ植えていく。後頭部には男性ホルモンの感受性のあるレセプターがないからハゲないんです。波平さんも後頭部の毛は残ってるでしょう?」 

植毛は外科治療になるが、最高で1万本くらい移植可能で、100〜150万円程度だという。

さらに最先端治療の分野では毛髪再生医療の研究も進行中で、今は臨床試験の結果待ち。かなりの確率で実現可能といわれている。ただし値段は植毛の10倍!?

やはり現実的なのはリアップか。鏡の前でつむじ周りを気にしているそこのアナタ、マッサージしてる場合じゃないですよ。今すぐ皮膚科か薬局にGOだ。

板見 智   大阪大学医学部医学科卒業。皮膚科医であり、日本の毛髪研究の第一人者。現在は大分大学医学部客員教授。大阪大学医学部附属病院で、水曜午後に外来を担当している。主な監修書、著書に『薄毛の科学』(日刊工業新聞社)、『専門医が語る 毛髪科学最前線』(集英社新書)などがある。

※公益社団法人日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」はコチラ

  • 取材・文井出千昌

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