準強制性交等で4度逮捕 ナンパアカデミー塾長・渡部被告の実像 | FRIDAYデジタル

準強制性交等で4度逮捕 ナンパアカデミー塾長・渡部被告の実像

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現在、東京地裁にて公判が続いているナンパ塾『リアルナンパアカデミー』(以下RNA)の塾長・渡部泰介被告(43)は、いまだ否認を続けている。

すでに数名の塾生に対しては実刑判決が言い渡されている
すでに数名の塾生に対しては実刑判決が言い渡されている

彼は2017年11月に塾生の大瀧とともに起こした『Aさん事件』、そして2018年3月に塾生の根津、吉岡とともに起こした『Bさん事件』、同年同月、歯科医師の塾生らと起こした『Cさん事件』で、いずれも準強制性交等の罪に問われている。

逮捕された共犯の塾生に対しても「認めることないのにバカだ」と見下していたという渡部被告は、留置場では『先生』と呼ばれていた。

「頭も良く、断定的に話すのでカリスマ性があるなと感じてました。大学を出てますし、一言一言から頭の良さを感じ、僕らも一目置く形でした。先生は一緒に暮らしていたお母さんだけが面会を許されていたんですけど、だいぶ母親思いのようでした。見た目の割には年だからお母さんも高齢でしたね。お母さんの世話は先生がしてる感じでした、お金の面でも」

こう話すのは、渡部被告が逮捕された当初、新宿署の留置場で同房だった時期があるという男性X氏だ。

女性に酒を飲ませ、酩酊状態にさせたうえ性交したとして、RNAの元塾生や塾長らが相次いで逮捕されているこの事件。

すでに数名の塾生に対しては実刑判決が言い渡されているが、そこで明かされたRNAの手口は共通していた。繁華街で女性をナンパし、店で飲んだのち、近隣のホテルや、RNA所有の通称“ハウス”と呼ばれる部屋に女性を連れ込む。ダーツゲームやカードゲームを持ちかけ、負けるとウオツカやテキーラなど度数の高い酒を飲むルールで女性を酩酊させたのち、性行為に及ぶのである。ハウスは東京・新宿区だけでなく大阪にもあった。

さらに、性行為を動画などで記録し、その後それをRNAのグループラインに送信していたことも明らかになっている。これは『和姦の証拠を残す』という塾長の教えによるものである。

Aさん事件について渡部被告は初公判で「大瀧と共謀した事実はありません。女性と飲酒はしたが、女性が抗拒不能になった事実はありません。また、抗拒不能であったという認識もありませんでした」と否認。今年3月の第四回公判でもBさん事件について「共謀した事実はなく、抗拒不能な状況にあったという事実もなく、その認識もない」と、Aさん事件と同じように否認した。公判回数は優に10回を超え、現在まで、共犯となった塾生たち、そして被害者のAさんやBさん、被害者の友人らに対する証人尋問が行われてきた。

共犯の塾生らが罪を認めており、すでに実刑判決も下されているなか、ひとり否認を続ける渡部被告。しかしその胸中は穏やかではなさそうだ。

「去年の9月、夜に留置され、次の日の朝に話したんですけど、最初は何で捕まったのか理解できないって感じでした。僕を始め同じ部屋にいた奴らにも、一貫してずっと無罪を主張してました。動画で証拠を残していたし、酩酊状態ではなかったと。お酒の量もそこまで飲ませてないって感じで。僕らもそれを信じてたので、外に出て結構な事件になってるなって分かった感じです」(X氏)

留置場では否認を続けながらも、捜査が続き再逮捕されることに動揺を見せていたという。

「先生は、自分が無罪だという話を何回も何回もしていたので、逆に、内心不安なのかな? とは感じてました。2回目の再逮捕の件では、さすがにショック受けてるみたいでしたね。今までの塾の性交動画データを大阪の家に移してたみたいなんですが、そこに家宅捜索が入ったことは想定外だったようで。データがめくられて、過去のやつがどんどん事件化されるのをだいぶ恐れてました」(X氏)

RNAではナンパした女性と性交することを「ゲット」と称し、その数を競い合っていた。塾生のなかには、月間の「ゲット数」を競い合うその最終日に事件を起こしたものもいる。こうしたナンパメソッドを大々的に打ち出し、ビジネスとして運営していた渡部被告だが、彼もこうしたカリスマ性を帯びる前は、一介の「ナンパ師」だった。

当時から現在までの渡部被告を知る、男性Y氏がこう語る。

「2000年初頭から『ナンパ研究会』という組織がありました。ナンパが趣味の人間が、そのサイトに集まって、議論するようなものです。そのつながりで交流したり、会のようなものも開催したりしていました。組織と言っても、初心者から上級者までが縦の繋がりなく、ネットを介してナンパの仲間をみつけるというサロンとでもいうべき場所でした。

そこにはナンパ理論等がまとめられており、当時ナンパ師を志した人間ならば、ほぼ皆が立ち寄るような場所です。ブログはランキング形式で運営されており、上位層は凄腕と評されて憧れの的でもありました。渡部被告もその中のひとりでした」(Y氏 以下同)

『ナンパ研究会』で頭角を現した渡部被告はやがて、同会の買収を試みるが失敗。そこで会を脱退し、RNAという新組織を立ち上げるに至った。これが2005年前後のことだ。ナンパ実践実演をし、それを後に有料講習化、また同時期にナンパCDをリリースして、ナンパをビジネス化していく。その一方、『ナンパ研究会』は衰退の一途を辿り、現在は閉鎖されている。

またこの当時、ナンパ界に衝撃をもたらしたのが『即系物件』という書籍だった。ナンパしてその日に性交する、いわゆる「即」と呼ばれる言葉が浸透し「即」を狙う行為が賞賛されるようになった。現在のRNAが「即」を重視する背景はここにある。そして「即」を狙うがゆえに、女性に無理やり酒を飲ませ酩酊させるという“メソッド”が構築されていったのである。

とはいえ、ナンパして「即」に至るためには、性交する“場所”が必要だ。かつてはカラオケルームやレンタルルーム、漫画喫茶などが主流だったが、2015年、RNAは「ハウス」と呼ばれる部屋を持つこととなる。ここからRNAの酩酊メソッドが加速し、現在の塾生や塾長の大量逮捕劇へとつながっていった。

加えて、もう一つのキーワードが『正3』

「事件を通して、男2、女1という組み合わせが多いことにも気がつかれたかと思いますが、これはナンパ業界で『正3』と呼ばれるものです。この『正3』を通して、技術の伝承が行われることが多かったのもRNAの特徴です。

2015年以前は、ハウスがなかったので、女性を泥酔させる手法は少なく、カラオケや漫画喫茶でトーク、いちゃつきから、セックスに持ち込むという流れが主流でした。『正3』は、それを真横でみながら実地体験として学ぶ場所でもあったので、RNAでは大流行していました。この『正3』の開祖こそが渡部被告です」

渡部被告は『正3』によって塾生らにそのナンパ技術を見せつけ「即」に持ち込むことで、RNAにおける不動のカリスマとして君臨するようになる。だがそれがまた弊害を生んだ。

「渡部被告は昔は、失敗も話していましたが、いつしか、万能の人間という空気感を醸し出すようになりました。失敗を話さなくなったというのか。それが故に、失敗できなくなってきたというのがあります。あの塾長が、女の子に断られたなんていうことはあってはいけないという状況になってきたわけです。

年齢を重ねれば、ルックスも落ちるわけですから、断られる回数も増えていったんだと思います。そのような状況もあり、塾長もウメリタスの回数が増えていったように思います」

ウメリタスとは渡部被告が用いていた秘伝のドリンクだ。スピリタスと梅酒を混ぜたもので、女性に飲ませ、泥酔させていた。組織におけるカリスマ性を維持するためには「ゲット数」をあげなければならない。なりふり構わぬ手法を用いたことで、何人もの女性が被害に遭い、そしてRNAにも警察の捜査が及ぶこととなった。

塾長の被告人質問はそう遠くないうちに開かれる予定だ。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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