ラグビーW杯 世界も注目する松島幸太朗の「プロ意識」

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スコットランド戦で今大会5つ目となるトライを決めた松島幸太朗/撮影:茂木あきら(JMPA)

海外選手にも引けを取らない“世界のマツシマ”

スコットランドとの“死闘”を制し、悲願の決勝トーナメント進出を勝ち取った日本代表。ジャパン快進撃の原動力となった選手は間違いなく松島幸太朗だろう。

3トライを挙げる衝撃的な活躍を見せたロシア戦に続き、アイルランド戦でも攻守にわたる出色のパフォーマンスで歴史的勝利に貢献。サモア戦では試合終了直前にボーナスポイント獲得となる日本代表4トライ目を決めた。

そして、昨夜のスコットランド戦では前半17分にトライを決め、チーム初得点を挙げた。試合のスタッツ(プレー成績)を見ると、前進した距離は福岡堅樹に次ぐチーム2番目の79m。タックラーに触れられずに防御を突破するクリーンブレイクも3回成功し、福岡と並んでチームトップ。プレイヤー・オブ・ザ・マッチの福岡に負けず劣らずの活躍だった。

そのスピードは海外勢と比べても引けを取らない。40試合全てのプール戦を終えた10月13日時点での個人成績を見ると、トライ数(5)はウェールズのWTBジョシュ・アダムスと並ぶ1位(ちなみに福岡堅樹は4トライで3位タイ)で、25得点は8位タイクリーンブレイクも9回で全体4位タイにつけている。

ボールを持って前進した距離はトータル350mで、姫野(203m)や福岡(197m)など他の日本選手を大きく突き放している。海外選手と比べても、オーストラリアのマリカ・コロイベティ(314m)やイングランドのエリオット・デイリー(237m)、ウェールズのジョージ・ノース(109m)ら、そうそうたるランナーを上回る数字だ。

100%の状態でプレーする「プロ意識」

ここという大一番で、決定的な仕事をやってのける。それが松島幸太朗の真骨頂といえるかもしれない。桐蔭学園高校で、サントリーで、そして日本代表で、大事な試合の大事な場面になるほど、松島のパフォーマンスは輝きを増す。

ラグビーは激しい身体接触をともなうスポーツだ。特に松島のようにスペースがあるところでボールを持たせると危険な選手は、相手のマークが集中するためダメージを受けやすく、ケガのリスクも高い。そうした厳しいプレッシャーの中でも、ひるまず強みを発揮でき、強烈なコンタクトプレーに堂々と渡り合えるたくましさこそが、松島が大舞台で活躍できる理由といえる。

ユース時代から突出した身体能力を発揮していた松島だが、そのポテンシャルが完全に開花したのは、高校卒業後に南アフリカの強豪クラブ、シャークスのアカデミー(若手育成期間)に加わってからだ。

南アフリカは、世界的に見ても体格の大きさと強烈なパワーでならすラグビー大国。自分よりはるかに大きくパワフルな選手たちの中でもまれ、トレーニングを重ねたことで、フィジカルレベルは飛躍的に向上した。

桐蔭学園高校の藤原秀之監督は、シーズンオフで母校の練習に顔を出した松島の姿を見て驚いたという。

「シャークスに行って1年くらい経った頃だと思いますが、首や腰回りが別人みたいに太くなっていた。相当トレーニングを積んだんだなと感じましたね。練習に入ってもらったら、ウチの選手たちが3人がかりでタックルに行っても倒せなかったですから」(藤原監督)

群を抜く勝負強さのもうひとつの理由は、並外れたプロ意識の強さだ。自分が最高のパフォーマンスを発揮するために確固たる信念を持ち、特に身体のコンディショニングには細心の注意を払う。以前、所属チームの関係者にこんな話を聞いたことがある。

「アピールしたいという思いからケガを抱えた状態で無理をして悪化させる選手が少なくないのですが、松島は万全の状態になるまで我慢できる。100%のプレーをすることがチームにもっとも貢献できるということを、とことん理解しているんです」(チーム関係者)

こんなに凄いのに、選手としてのピークはこれから

「自分の名前を世界に広めたい」という大会前の意気込み通り、ここまでの試合で世界中に鮮烈なインパクトを与えた松島。開幕戦の前に「3トライ取る」と宣言していた有言実行の男は、「しっかりチームを優先させた上で」と前置きしつつ、「チャンスがあればトライ王も」と意欲をのぞかせる。現在のジャパンと本人の勢いを考えれば、決して夢物語ではない。

シャークスアカデミーで3年間を過ごし、2015年にオーストラリアのワラターズ、翌年は同じオーストラリアのレベルズでプレーするなど、海外経験は豊富。将来的にはヨーロッパの強豪クラブでプレーすることも思い描いている。オファーの準備を進めているクラブは、きっと一つや二つではないだろう。

まだ26歳。現時点でこんなにすごいのに、ピークを迎えるのはこれからだ。戦いのステージが上がるほど、松島は強い光を放つ。決勝トーナメント初戦、南アフリカを前に躍動する姿を見てみたい。

  • 取材・文直江光信

    1975年熊本市生まれ。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)

  • 撮影茂木あきら/JMPA

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